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砂鐘調教 二
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「ほほほほ。そんな怖いお顔をなされないで。大丈夫でございますよ。そのときにはきっと気持ち良く感じられるようになっておりますわ」
マーメイが差し出した道具は黒色で、鶉の卵をいくつもつらねたような形をしており、石を削って艶を出したものなのか、薄闇にも妖しいぬめりを帯びて黒光りしている。特大の黒真珠をつなげたもののようにも見える。
「これを、どうするか、もうお解りでございましょう?」
ラオシンは全身に力を入れて己を戒める玉綱をひきちぎろうとしたが、特殊な仕掛けがしてあるのか、どうふんばってみても戒めは切れず、それどころか、なまじ身体に力を入れたため、背後の肉を穿つリリの指の感触をいっそう生々しく感じてしまった。
「ほほほほ。お解りでございましょう。そう、殿下のなかへ、入れてさしあげますわ」
「や……やめろぉ……。はなせ! 今すぐ私を解放しろ!」
「大丈夫でございますよ。ほら、これはこんなに細いのですもの。殿下のために一番細いものを選んできましたのよ。痛くありませんわ」
鼻先にその怪しい道具を突きつけられて、不覚にもラオシンは涙ぐみそうになった。
サファヴィア帝国の男は人前で泣いてはならないことになっている。泣いていいのは主を亡くしたときだけだ。
ラオシンは苦しい息を吐き、必死にこみあげてくる感情を抑えた。その間も背後の、ラオシンを犯す小さな指はたえまなく動き、ラオシンの身体に火をつけようとする。
「あ……ああ」
マーメイはほくそ笑んだ。
リリの顔は真剣そのものだ。どうやってラオシンに官能のうずきをあたえられか、真面目にやっているのだ。
(この娘も、よく仕込んだものだわ)
マーメイがリリと出会ったのは五年まえの奴隷市場だった。首に縄をつけられて売り出されていたリリは、当時まだ十一歳。異国の血が混じっているらしく、亜麻色の髪に菫色の目が印象的な子どもだった。マーメイがこの館の女主になったばかりの頃のことである。
十一とあればもうかなり自我がかたまっているころなので、こういう職業を教えこむのは骨が折れるものだが、案に反してリリは砂地に水がしみこむように館にも仕事にも慣れた。天性、娼婦の素質があったらしい。
マーメイがそんなことを思っていると、砂鐘のなかの貝砂が落ち切った。
「リリ、どう?」
「はい。もう、二本目、大丈夫です」
「やっぱり砂鐘のくれる時間は合っているわね、この調教には。二本目を入れておやり」
「はい」
「よ、よせ!」
ラオシンは魔女と小鬼の会話に怖気立った。一本入れられただけでもこれだけ苦しいのに、二本など耐えられない。
「よせ、よせ、やめろ! はなせ!」
ギシギシ、と玉綱がゆれる。
だがラオシンの必死の抵抗もむなしく少女の指がさらに増やされる。
「ああ……」
「まぁ、殿下、どうなされたの? お顔が赤くなっております。ああ、額にも首にも汗がびっしょり。拭いてさしあげますわね」
マーメイが笑いながら己の衣の懐からとりだした布でていねいにラオシンの身体を拭いてやる。
「ああ……こうして見ると、殿下のお身体は本当にご立派でございますわね。どこもかしこも引き締まって、お肌もすべすべで。ちょっとまだ少年ぽいところもあるけれど、それが初々しくて。残念だわぁ……女と交わってはならないなんて……」
最高級の象牙の飾りものや毛皮の敷物などの高価な調度品を眺めるような目で、マーメイがその黒い目に貪欲な光をたぎらせ、舐めつくすようにラオシンを目で嬲る。
「くぅ……」
マーメイの指が、ラオシンの腰をまもる布のうえをなぞるようにして触れる。
「あら……まぁ。やっぱり殿下は素質があったのね」
マーメイの口調は下町の娘のようになっていた。
「ち、ちがう!」
真っ赤になって首をふって否定しても、もはやラオシンは隠せないでいる。
ラオシンの十九の早春の芽はマーメイだけではなく、リリの指戯にも応えはじめていた。
「ああ……! さわるなぁ……無礼も、のぉ」
「ほほほほほ。そんな生意気なことをおっしゃるなら、ここを、ほら、」
「あっ! ああ!」
布越しにつままれ、撫でらえ、ラオシンは息もたえだえになった。だが、決定的な刺激がもたらされない。そのことに死ぬほどの焦燥感を呼びさまされてしまっている。
マーメイが差し出した道具は黒色で、鶉の卵をいくつもつらねたような形をしており、石を削って艶を出したものなのか、薄闇にも妖しいぬめりを帯びて黒光りしている。特大の黒真珠をつなげたもののようにも見える。
「これを、どうするか、もうお解りでございましょう?」
ラオシンは全身に力を入れて己を戒める玉綱をひきちぎろうとしたが、特殊な仕掛けがしてあるのか、どうふんばってみても戒めは切れず、それどころか、なまじ身体に力を入れたため、背後の肉を穿つリリの指の感触をいっそう生々しく感じてしまった。
「ほほほほ。お解りでございましょう。そう、殿下のなかへ、入れてさしあげますわ」
「や……やめろぉ……。はなせ! 今すぐ私を解放しろ!」
「大丈夫でございますよ。ほら、これはこんなに細いのですもの。殿下のために一番細いものを選んできましたのよ。痛くありませんわ」
鼻先にその怪しい道具を突きつけられて、不覚にもラオシンは涙ぐみそうになった。
サファヴィア帝国の男は人前で泣いてはならないことになっている。泣いていいのは主を亡くしたときだけだ。
ラオシンは苦しい息を吐き、必死にこみあげてくる感情を抑えた。その間も背後の、ラオシンを犯す小さな指はたえまなく動き、ラオシンの身体に火をつけようとする。
「あ……ああ」
マーメイはほくそ笑んだ。
リリの顔は真剣そのものだ。どうやってラオシンに官能のうずきをあたえられか、真面目にやっているのだ。
(この娘も、よく仕込んだものだわ)
マーメイがリリと出会ったのは五年まえの奴隷市場だった。首に縄をつけられて売り出されていたリリは、当時まだ十一歳。異国の血が混じっているらしく、亜麻色の髪に菫色の目が印象的な子どもだった。マーメイがこの館の女主になったばかりの頃のことである。
十一とあればもうかなり自我がかたまっているころなので、こういう職業を教えこむのは骨が折れるものだが、案に反してリリは砂地に水がしみこむように館にも仕事にも慣れた。天性、娼婦の素質があったらしい。
マーメイがそんなことを思っていると、砂鐘のなかの貝砂が落ち切った。
「リリ、どう?」
「はい。もう、二本目、大丈夫です」
「やっぱり砂鐘のくれる時間は合っているわね、この調教には。二本目を入れておやり」
「はい」
「よ、よせ!」
ラオシンは魔女と小鬼の会話に怖気立った。一本入れられただけでもこれだけ苦しいのに、二本など耐えられない。
「よせ、よせ、やめろ! はなせ!」
ギシギシ、と玉綱がゆれる。
だがラオシンの必死の抵抗もむなしく少女の指がさらに増やされる。
「ああ……」
「まぁ、殿下、どうなされたの? お顔が赤くなっております。ああ、額にも首にも汗がびっしょり。拭いてさしあげますわね」
マーメイが笑いながら己の衣の懐からとりだした布でていねいにラオシンの身体を拭いてやる。
「ああ……こうして見ると、殿下のお身体は本当にご立派でございますわね。どこもかしこも引き締まって、お肌もすべすべで。ちょっとまだ少年ぽいところもあるけれど、それが初々しくて。残念だわぁ……女と交わってはならないなんて……」
最高級の象牙の飾りものや毛皮の敷物などの高価な調度品を眺めるような目で、マーメイがその黒い目に貪欲な光をたぎらせ、舐めつくすようにラオシンを目で嬲る。
「くぅ……」
マーメイの指が、ラオシンの腰をまもる布のうえをなぞるようにして触れる。
「あら……まぁ。やっぱり殿下は素質があったのね」
マーメイの口調は下町の娘のようになっていた。
「ち、ちがう!」
真っ赤になって首をふって否定しても、もはやラオシンは隠せないでいる。
ラオシンの十九の早春の芽はマーメイだけではなく、リリの指戯にも応えはじめていた。
「ああ……! さわるなぁ……無礼も、のぉ」
「ほほほほほ。そんな生意気なことをおっしゃるなら、ここを、ほら、」
「あっ! ああ!」
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