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魔神の使者 四
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ラオシンは玉綱のゆるす範囲で必死に脚をうごかす。追い詰められて半狂乱になってきているようで、ディリオスはしかたなくドドに命じた。
「おさえていろ」
「は!」
ドドは餌を投げられた野良犬のようにラオシンのそばに行くと、夢中になってにゆらしている彼の脚をおさえこもうとする。
「わ、わたくしもお手伝いを」
雑兵のひとりが餌をうばいあう犬のようにラオシンのもう片方の足にとりすがる。
「は、はなせ!」
ラオシンは両太腿をふたりの男におさえこまれてしまい、身動きできないまま、憎いジャハンのされるがままになった。
「くーっ!」
ラオシンは無念そうに天井に顔をむけ、胸をそらせるしか他になく、ただひたすら憎悪すべき男に肉体の中心をあずけるしかない。
「おお、よしよし。今の殿下は赤子のようじゃなぁ……良い子じゃ、良い子」
ふざけたようなことを言いながら、ジャハンはゆっくりと、焦らすように時間をかけてラオシンの雄芯そのものを拭き清め、無毛の股間、内股にかけて布をこすりつける。意外にも手つきは丁寧だ。
だがいくら優しくされているといっても、まだ少年らしさをのこしているラオシンの象徴は、男の狼藉におびえているようで、必死に目を閉じている顔も痛々しさがただよい、さすがにディリオスはあるかなしかの良心がきしんでくる。顔には出さないようにつとめ、いつものように両手をくんで石のように立っていることに努めたが、それは今回はなかなか難しいものだった。
「うう! うー……。は、はなせぇ」
おだやかだったジャハンの手が淫靡にうごめきだす。
わざとらしく若い芽をつまんでみたり、双果をくすぐってみたりする。
「はぁっ……」
眉を寄せて、いや、いや、と首を横に振るラオシンの苦しげな表情は、生きていることを恨んでいるかのようでさえある。どれほど呪ってはみても、彼の瑞々しい五体と初々しい感性はジャハンの手に素直になってしまう。
「ああ……」
ふーっと、干からびた掌のなかの雄々しい生命に息を吹きかけるジャハンの横顔は、醜い蛙のようだとディリオスは内心嘲笑したが、当のラオシンはもはやジャハンを睨むこともできず、顔をさらに激しく左右にふり、激しく息を切らすのみだ。
「あ……うう、そ、そこ……触るな!」
ラオシンを追い立てるのはジャハンの手だけではない。
ジャハンに与して左右で自分をおさえこむ男たちの、皮膚に触れてくる四つの手も、ラオシンの弾力のある肉をたのしむように、味わうように、微妙にうごめき、ラオシンを苦しめる。
「あ、ああ……はなせぇ、無礼者ども……」
ぴちゃ、ぴちゃ、と時折ジャハンが布を洗う音やしぼる音がたち、やがてまたラオシンの苦し気な呼吸の音がひびき、見ている者のほうがいたたまれない疼きに悩まされる狂おしい時間がのろのろと過ぎさっていくと、ようやくジャハンはラオシンから離れた。
「あーっ」
咄嗟にラオシンがあげた声は、まるで離れていくジハャンの手を惜しむような悲痛なひびきを秘めていた。
ラオシン自身もそれを自覚したのだろう、声をあげてしまってから、驚いたような顔を見せ、口をもどかしげに動かして、顔を伏せてしまう。
その顔がふたたび持ち上げられたとき、ラオシンの涙に濡れた双眼にはありったけの憎悪がこもっていたが、下肢の萌しはおとろえることなく、ジャハンを面白がらせるだけだった。
(しかしここで、この状況で止めれることは、彼が宦官であることと関係しているのだろう)
ディリオスは熱っぽくなった身体とはぎゃくに冷めている頭のなかで、そんなことを考えていた。
普通の男なら、ここでラオシンから離れることなどとうていできないはずだ。ディリオスは、こんなときだが奇妙にジャハンの笑みに痛みを感じてしまった。
そんなディリオスの想いなど知るわけもないジャハンが、つい先ほどまでの執着ぶりが嘘のようにそっけなくラオシンから遠ざかると、傍観者たちの目に、若き王子の身体に起こった変化があきらかになり、その場の空気がまた熱くなった。
皆に知られたことを悟って、ラオシンの秀麗な顔はまた恥辱にゆがみ、頬が赤く燃えている。その苦悶と恥じらいが、またいっそう壮絶な色香となってその場にいた者たちを感動させる。
「まぁ、殿下ったら」
マーメイは目を見張り、蒔いた種がやっと萌芽しだしたのを見つけたかのように、満足そうに微笑んで、ディリオスに囁く。
「三日目でここまでいくのは、たいしたものだわ。素質はおおいにありね」
ディリオスは無言でうなずいた。
魂を切りきざむ侮辱をあたえられながらも肉体が素直に反応しはじめるのは、調教三日目にしてラオシンに被虐の嗜好が芽生えはじめたことを充分にしめしている。
意外と貴顕の身にはおおいと言われるが、たしかにマーメイたちが思っていた以上にラオシンは被虐を受けいれる素質があったのかもしれない。
「おやおや、殿下はさすがにお若い。ひひひひひ」
「……」
ジャハンの嘲笑に眩暈を感じながらも、ラオシンは伏せていた顔を毅然とあげて、彼めがけて唾棄したが、しずくは憎い男にとどくことはなく石床にむなしく落ちただけだった。
「ふははははは」
身体をゆらしてまたひとしきり笑うと、ジャハンはさも嬉しそうに告げた。
「殿下、殿下のことをいろいろ主と相談したのですが、ただ性奴隷にするだけでは物足りないので、殿下にはもうひとつお勤めをしてもらうことになりましたぞ」
「つ、勤めだと?」
「おさえていろ」
「は!」
ドドは餌を投げられた野良犬のようにラオシンのそばに行くと、夢中になってにゆらしている彼の脚をおさえこもうとする。
「わ、わたくしもお手伝いを」
雑兵のひとりが餌をうばいあう犬のようにラオシンのもう片方の足にとりすがる。
「は、はなせ!」
ラオシンは両太腿をふたりの男におさえこまれてしまい、身動きできないまま、憎いジャハンのされるがままになった。
「くーっ!」
ラオシンは無念そうに天井に顔をむけ、胸をそらせるしか他になく、ただひたすら憎悪すべき男に肉体の中心をあずけるしかない。
「おお、よしよし。今の殿下は赤子のようじゃなぁ……良い子じゃ、良い子」
ふざけたようなことを言いながら、ジャハンはゆっくりと、焦らすように時間をかけてラオシンの雄芯そのものを拭き清め、無毛の股間、内股にかけて布をこすりつける。意外にも手つきは丁寧だ。
だがいくら優しくされているといっても、まだ少年らしさをのこしているラオシンの象徴は、男の狼藉におびえているようで、必死に目を閉じている顔も痛々しさがただよい、さすがにディリオスはあるかなしかの良心がきしんでくる。顔には出さないようにつとめ、いつものように両手をくんで石のように立っていることに努めたが、それは今回はなかなか難しいものだった。
「うう! うー……。は、はなせぇ」
おだやかだったジャハンの手が淫靡にうごめきだす。
わざとらしく若い芽をつまんでみたり、双果をくすぐってみたりする。
「はぁっ……」
眉を寄せて、いや、いや、と首を横に振るラオシンの苦しげな表情は、生きていることを恨んでいるかのようでさえある。どれほど呪ってはみても、彼の瑞々しい五体と初々しい感性はジャハンの手に素直になってしまう。
「ああ……」
ふーっと、干からびた掌のなかの雄々しい生命に息を吹きかけるジャハンの横顔は、醜い蛙のようだとディリオスは内心嘲笑したが、当のラオシンはもはやジャハンを睨むこともできず、顔をさらに激しく左右にふり、激しく息を切らすのみだ。
「あ……うう、そ、そこ……触るな!」
ラオシンを追い立てるのはジャハンの手だけではない。
ジャハンに与して左右で自分をおさえこむ男たちの、皮膚に触れてくる四つの手も、ラオシンの弾力のある肉をたのしむように、味わうように、微妙にうごめき、ラオシンを苦しめる。
「あ、ああ……はなせぇ、無礼者ども……」
ぴちゃ、ぴちゃ、と時折ジャハンが布を洗う音やしぼる音がたち、やがてまたラオシンの苦し気な呼吸の音がひびき、見ている者のほうがいたたまれない疼きに悩まされる狂おしい時間がのろのろと過ぎさっていくと、ようやくジャハンはラオシンから離れた。
「あーっ」
咄嗟にラオシンがあげた声は、まるで離れていくジハャンの手を惜しむような悲痛なひびきを秘めていた。
ラオシン自身もそれを自覚したのだろう、声をあげてしまってから、驚いたような顔を見せ、口をもどかしげに動かして、顔を伏せてしまう。
その顔がふたたび持ち上げられたとき、ラオシンの涙に濡れた双眼にはありったけの憎悪がこもっていたが、下肢の萌しはおとろえることなく、ジャハンを面白がらせるだけだった。
(しかしここで、この状況で止めれることは、彼が宦官であることと関係しているのだろう)
ディリオスは熱っぽくなった身体とはぎゃくに冷めている頭のなかで、そんなことを考えていた。
普通の男なら、ここでラオシンから離れることなどとうていできないはずだ。ディリオスは、こんなときだが奇妙にジャハンの笑みに痛みを感じてしまった。
そんなディリオスの想いなど知るわけもないジャハンが、つい先ほどまでの執着ぶりが嘘のようにそっけなくラオシンから遠ざかると、傍観者たちの目に、若き王子の身体に起こった変化があきらかになり、その場の空気がまた熱くなった。
皆に知られたことを悟って、ラオシンの秀麗な顔はまた恥辱にゆがみ、頬が赤く燃えている。その苦悶と恥じらいが、またいっそう壮絶な色香となってその場にいた者たちを感動させる。
「まぁ、殿下ったら」
マーメイは目を見張り、蒔いた種がやっと萌芽しだしたのを見つけたかのように、満足そうに微笑んで、ディリオスに囁く。
「三日目でここまでいくのは、たいしたものだわ。素質はおおいにありね」
ディリオスは無言でうなずいた。
魂を切りきざむ侮辱をあたえられながらも肉体が素直に反応しはじめるのは、調教三日目にしてラオシンに被虐の嗜好が芽生えはじめたことを充分にしめしている。
意外と貴顕の身にはおおいと言われるが、たしかにマーメイたちが思っていた以上にラオシンは被虐を受けいれる素質があったのかもしれない。
「おやおや、殿下はさすがにお若い。ひひひひひ」
「……」
ジャハンの嘲笑に眩暈を感じながらも、ラオシンは伏せていた顔を毅然とあげて、彼めがけて唾棄したが、しずくは憎い男にとどくことはなく石床にむなしく落ちただけだった。
「ふははははは」
身体をゆらしてまたひとしきり笑うと、ジャハンはさも嬉しそうに告げた。
「殿下、殿下のことをいろいろ主と相談したのですが、ただ性奴隷にするだけでは物足りないので、殿下にはもうひとつお勤めをしてもらうことになりましたぞ」
「つ、勤めだと?」
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