サファヴィア秘話 ー闇に咲く花ー

文月 沙織

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魔女神の采配 五

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「やめろぉ……! ああ……」
 赤いひるのような舌が、ラオシンの蕾を蹂躙する。
「うわああああ!」
 ラオシンは絨毯のうえでにぎりしめた両拳をふるわせ、恥もわすれて幼児のように泣きじゃくっている。だが、マーメイはラオシンの前方のふくらみがさらに大きくなっていることに気づいた。うっすらと、影のような染みも見える。
「そろそろ、本番に入るか」
 口まわりを唾液でべとべとに汚しながらジャハンが生成り色の衣の懐からつかみだしたのは、象牙の張型だった。
 大きさは中ぐらいで、今のラオシンならそれほど苦痛を感じずに受け入れられる程度のものだが、おもしろいのは、その張型のの部分に革の紐がつなげられていることだ。 
 マーメイはその道具の用途がすぐにわかった。物好きな客が女同士の遊戯を見たがるときに使うこともあり、娼館の棚にもいくつか常備している。マーメイは、リリに目配せをし、ドドにややきつい目を向けた。
(ぜったいに笑っては駄目よ)
 リリもドドもかすかに頷いてみせる。
「ぐひひひひ、儂の〝男〟で泣かしてやるからのぅ」
 背後でなにが行われているか理解できないラオシンは、それでも本能的な恐怖に駆られたのか、どうにかして逃れようとするが、男たちの手はゆるまず、それどころか、ドドとディリオスの手によってそれぞれの太腿をひっぱられ、受け身の姿勢をよりつよく取らされてしまう。
「あっ……ああ!」
 男たちの視線に蕾を焼かれ、ラオシンは羞恥に嗚咽した。
 ジャハンは革紐を衣のうえから自らの腰に巻きつけると、小さな身体をそらすようにする。せむしなので、胸をそらすと不安定になるのだが、それでも腰をまえに突き出すようにして、その道具をラオシンの蕾に押し付ける。
「うう……」
 淫具によって犯されかけているラオシンも哀れだが……マーメイは眉を寄せた。
(なんだか……不憫だわね)
 今のジャハンの姿ほど惨めで哀れなものはないのではないだろうか、とすら思えるほどジャハンは醜怪かつ不様だった。
 前かがみの身体――男の象徴の欠落した腰に、偽の男根をつなぎ、欲望に息をきらしながら麗人にいどみがかる姿は、人とはもう呼べない生き物にまで堕ちていた。
「おおー、いい、いいぞぉ」
 はたしてどういう身体の摂理がはたらいているのか、それでも疑似性器をラオシンのほぐれた秘部に侵入させた彼は快楽を感じているようだ。
 すぐそばのドドは、世にもまれな珍獣でも見るような目でジャハンを見、ディリオスは唇をひきしめ、顔をうつむけている。どこかその表情は暗い。すこしさがった所に立っているリリの頬が赤らんでいるのは、笑い出したいのをこらえているせいだろう。無理もない。
「ああっ、やめっ、やめろ!」
 不倶戴天ふぐたいてんの仇のような男に攻められ、ラオシンは悔し気に泣き啜りながら、それでも高められた若い身体ははけ口をもとめて、いつしか腰の動きは憎いはずの相手に合わせるようになっていっていた。
「おお、殿下、やっといい子になられたなぁ。躾けた甲斐があったというものじゃ」
 その言葉に怒りと憎しみと、そして官能を煽られたのか、またラオシンの身体がうねる。先ほどは怒声をはなった口が、今は女のような嬌声をこぼす。
「あ……ああ、いや……いや……。も、もうよせぇ……」
 今までにも幾度がマーメイは見たが、心が感極まると、ラオシンの淡い鳶色の肌は琥珀のようにかがやきだす。 さらにどこからか忍び寄ってきた淫魔がいたずらして金剛石ダイヤモンドをけずった粉を彼の汗にまみれた身体のうえにまきちらしたかのように、全身をきらきらと光らせだす。柘榴色ざくろいろの胸の突起の先にしたたる真珠のような汗粒を、マーメイは口で吸ってやりたいような情をおぼえた。
 そんなマーメイの気持ちを代行するようにラオシンの左肩をおさえつけているドドが、その毛深い手を彼の胸にのばし、乳首の先の汗粒を、まるで貴いもののようにそっと指ですくうと、自分の口にはこぶ。彼は極上の蜂蜜を舐めたように満足の吐息をこぼしている。

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