昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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牡丹の闇 六

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 腰から前にまわした手で、無理やり仁の下半身を引きずり上げるようにする。どこかふざけた態度なのが、いっそう仁を侮蔑しているように見え、仁もそれを感じて、布団に押し付けている横顔に苦悶と屈辱をにじませている。
「この道具は気に入らんのか? いやなら自力で出してみろ」
「ああっ……」
 自力で出すということがどういうことのなのか望にはよくわからないが、それは仁にとってかなり辛いことのようだ。
 勇は両手で仁の臀部をつかみ、さらに引き上げるようにすると、どかっと胡坐あぐらをかいた。
 仁の後ろ園と、それを犯している道具を間近で見つめ、むごい言葉をはなつ。
「ほら、力を入れろ。なにをしている? 下腹に力をこめろ。俺が見ていてやるから、おまえが嫌いだというこの道具を自分で出せ」
「で、できない……」
 仁はかぼそい声でつぶやくように言うと、首を左右に振る。
 白い項がほのかに闇をはじき、匂いたつような色気がほとぼしる。
「駄目だ! 出せといったら出せ」
 勇は執拗だ。
「ああっ! い、いっそ、殺してくれ!」
 布団につっぷして叫ぶ仁を見て、勇は鼻で笑った。  
 望は本当に胸がつぶれそうだ。
「ふん。そうまで言うなら、自分で死んでみろ。貴様も軍人の端くれ、日本男児の端くれだろうが。まぁ、どうせ貴様にはそんな勇気はないだろう。死にきれず不様ぶざまを晒すのがおちだ。相馬家の男が、こともあろうと異国の商売女と心中とはな。いい恥さらしだ」
 心中、商売女という言葉が望の耳をひっかく。
「ち、ちがう! ちがう! あれは心中ではない」
「男と女がいっしょに死のうとしたのだから、立派な心中だろう?」
 仁は外国にいたとき、外国の女と死のうとしたというのだろうか。望は驚いた。
 仁が死のうとしたことより、それほどに異性を想ったという事実に驚き、不愉快なものを感じた。
 そう思うと同時に、勇の仁への怒りと残酷な仕打ちが理解できそうな気がした。
「帝国軍人ともあろうものが、支那しな女なぞにうつつを抜かしおって。しかもあの女は……」
「ち、ちがう……」
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