昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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時分の花 二

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 仁の名が出たことが原因なのか、香寺の横顔は苦悶を増す。望の身体もまた熱をつよくはらむ。
 そこでのたうっているのが、仁のような、香寺のような、二人が一人になったような、奇妙な夢を見ている心持ちにだんだんなってきた。
 そしてまた、自分が勇になったような、いや、やはり自分はここで中の様子を盗み見ているだけであるような、自分自身が分裂しているような摩訶不思議な心境にもなる。
 まだ飲んだことはないが、酒を飲んで酔っ払っているような感覚なのか、大陸ではやっているという阿片を吸引すれば、こういう幻を見るのか。もしそうなら、酒や麻薬をもとめる者の心理がわかってくる。
「どれ」
 見ていると、勇は手をのばし、抜こうとしているが、それが本気ではないことは明らかだった。
「あっ、ああっ」
 わずかな動きでも今の香寺には辛いらしい。
「ううっ、ううっ……」
「尻を落とすな。ほら、」
「ああっ」
 どうかすると崩れてしまう態勢を、勇に尻を打たれる屈辱によって立て直し、さらなる責めを甘受する香寺は哀れな殉教者のようである。
 勇は調べるように香寺の臀部に顔を寄せる。
「も、もう……」
 視姦の痛みはいっそ甘美であったかもしれない。香寺の伏せがちな横顔は恍惚としてきている。
「おや、抜けんな。かなりきつく咥えこんでいるようだな。クククク」
 勇は抜こうとしているようで、道具をもてあそび、香寺に悲鳴をあげさせた。
「も、もぉ、もぉ、やめ……」
 香寺の細い指が畳をつかむような動きをする。
「いつまでもこうして遊んでいたいが、そろそろ一回楽にしてやろう。いいですね、雨沼さん?」
「ああ、いいぞ」
 そこで勇はかがめていた上半身を起こして、望が仰天するようなことを言った。
「おい、そこにいる奴、そろそろ入ってきたらどうだ?」
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