昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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時分の花 四

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「大好きな家庭教師の先生が心配でのぞきに来たのですよ。俺たちのようなけだものにひどい真似をされているのではないかと。そうだな、望?」
 それはたしかにある。だが、この夜、望を突き動かした一番の理由は、身体のうちに燃える欲望だ。
 望もまた小さな獣だったのだ。
「なぁ、先生、可愛い教え子が心配して来ているぞ。こんな格好を見られて、どんな気持ちだ?」
 パシン、と勇が香寺の左尻を平手で打った。
 香寺の嗚咽の声が大きくなる。
 望は、胸に痛みを感じつつ、それでも横目で香寺の白い肌を見ずにいられない。きっと今の自分はひどく卑しい目つきをしているのだろうと羞恥に身がすくむ。
(でも……)
 望は唾をのむ。
 男にしては、なだらかな曲線を描く香寺の肉体は、照明のこぼす明かりのもと、優れた芸術作品のように強烈な存在感をはなっている。
 ふだんは大人しく物静かな香寺だが、裸の身体は見る者の心をはげしく刺激する。白霞につつまれたような全身がなにかを訴えているようだ。
(先生……、やっぱり綺麗だ)
 こんなときだが、望は見惚れてしまっていた。
 さらに望の目を強烈に刺激するのは、香寺の形の良いひきしまった尻に突き刺さっている道具である。香寺の尻を犯している紅鬱金色をした淫らな玩具は、望の目をも犯す。
 泣きじゃくっている香寺が、年上なのにひどくいじらしく可愛く思え、ふるえるその白い肩や背を、抱きしめてやりたくなる。
 抱きしめて、その背に接吻してやりたい。本能的な衝動を望はおさえた。
 だが勇は望の願望を読みとったようだ。
「望、どうだ、先生の身体は? 美しいだろう?」
「えっ、ええ……」
 そうとしか答えようがない。
「触ってみたくないか?」
「……」
 香寺の身体の震えが激しくなった。
「だ、だめだ、望君、いけない!」
 今まで伏せていた顔をあげ、涙に濡れた顔で香寺は悲鳴のような声を発した。
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