昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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時分の花 八

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 美しいものに惹かれ、それを傷つけたいという異様な欲望が、自分のなかにあったことを望は自覚した。
(先生、ご免……でも、欲しい……)
「それを動かしてみろ」
「うん」
「や、やめてくれ!」
 三人が三つ巴のようになって淫蕩で残酷な遊戯にひたっている様子を、相変わらず雨沼は面白そうに見ている。時折、手酌で酒を飲みながら、美しい若者と少年のからみを見物しているのだ。
 望はおそるおそる柄の先に触れてみる。
 この異形の道具で香寺を支配できるのだ。
 この道具をあやつる望が香寺を支配できるのだ。少し前までは自分の上にいた男を、今は見下ろし、支配できるという喜びに望は酔った。
 柄の先を、指でゆっくりと押してみる。
「あっ、ああっ……!」
 道具が狭い器官を押し広げて、香寺の心身を圧迫するのだろう。
 白い背中が震え、よじれる。全身で、やめてくれ! と叫んでいるようだ。
 ますます望の欲望は燃えたつ。
 もう一度、人差し指で、ゆっくりと柄先を押す。今度は自分でも押したかどうかわからないほどの力だったが、なまじ微細なだけにその加力は香寺をはげしく揺さぶる。
「はぁっ……、ああっ、やめ、やめ……、もう、やめてくれ……」 
 勉強を教えてくれたときの真摯な顔、読書に耽る知的な横顔しか見てこなかった望には、今の香寺の姿は想像もできなかった。表情がよく見えないのが不満だが、細くしなやかな背中が苦悶と羞恥をつたえてやや満足させてくれる。
(次は、向きあう形でしてみたいな)
 そんなことを思ってしまう。
「いいぞ。もう少し押してみろ。ゆっくりとだぞ」
「や、やめて! もう、やめてくれ!」
 香寺の悲鳴を無視して、勇の指示にしたがって、望は慎重に押す。
 香寺を侵略しつつある道具は、望の分身となる。
「はぁっ! ああっ、あああっ……!」
 苦痛の叫びには、かすかにだが甘いものが感じられた。
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