昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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時分の花 九

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 尻を高々とあげられ、教え子のつたない手管によって身体を火照らせられている香寺の姿は悲痛であり、淫らである。
「ああっ……、や、やめてくれ、望、やめて!」
 名を呼び捨てにされて、いっそう望の興奮はたかまる。
「感じているのですね。先生……可愛い」
 苦しむ香寺がいじらしく、愛しい。
 愛しいのに、傷つけたい。自分はどこかおかしいのだと望は熱くなる身体をもてあましながら、頭のなかで少し冷めて考えていた。
「内側を擦るようにしてみろ」
 勇の指示にしたがって、ゆっくりと柄先を動かす。
「ああっ! いっ、いや! やめ、やめて」
「続けて上下にしてみろ」
 そのあとも、勇の命令どおりに自由自在に道具を動かしてみる。
「ああっ、あっ、ああっ、だ、駄目だ! やめ、やめてくれ!」
 面白いぐらい香寺は素直に反応してくる。不自由な体勢で手足をばたつかせてもがきつづける様子は、亀をつかまえて甲羅を上から押さえつけていたときのようで、なんとなく面白い。
「ううっ……、うっ、や、やめ! もう、やめ……」
 香寺がのけぞった瞬間、彼の黒絹のようなつややかな黒髪が汗をふくんで、いっそうしっとりとして額にはりついているのが目に入り、望は内心、ため息をついた。
 最初は聞いていて辛く感じた香寺の悲鳴も、いつしか耳に心地良い。それは声自体も艶をふくんできたせいだろう。
「そうだ、うまいぞ。ひねるようにしてみろ」
 勇の指示どおり、やってみる。すると、香寺の身体も揺れる。
「はぁっ……! も、もぉ、動かすな」
 畳の上に伏せた横顔は屈辱と絶望に満ちながらも、甘美なものを含んで、望の胸をまた焦がす。
(それにしても……)
 望は唇を噛んだ。
(こんなに他愛もないなんて……)
 おかしくなってくる。
 男は、いや、人というものは、こうして身体をいじられると、こんなにも脆いものなのか。知ってはいけないことを知って、また望は自分が少し大人になった気がしてくる。
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