昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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時分の花 十

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「先生……、感じているんですね?」
 香寺の象徴は、持ち主に似て細身で繊細そうだ。色も初々しい。背後から見ても、いまや反応を隠せないところまで変化してきている。
 死ぬほどの恥辱にまみれても、若い肉体の摂理にしたがって、彼の分身は燃えたっている。
「可愛い……」
 教え子に可愛いと言われる屈辱にも、香寺は耐えねばなかなかった。
「うう……」
 望は香寺の反応をうかがいながら、手を休めることなく道具を動かしつづける。
 香寺は畳に両手をつくようにして、必死に耐えているようだ。逃れようがなくとも、崩壊のときを少しでも引き延ばそうと、哀れな抵抗をしているのだ。
「ううっ、ううっ」
 畳のうえで両手を握りしめている様子は、不憫であるが、望は攻撃を止める気は毛頭ない。
 そろそろ手がだるくなってきたとき、とうとう、香寺は切なげに断末魔のような声をはなった。
「も、もう無理だ! ああっ、やめっ、やめっ……」
「いいんですよ、先生、さぁ、遂ってください」
 望は自分の声が嘲笑をふくんでいることに気づいた。自分は今、完全に有利な立場となり、師をもてあそんでいるのだ。
 なんという痛快なことだろう。
「ああっ、やめ、やめてくれ!」
 首をはげしく左右に振ると、香寺はつらそうに、小さな声でつぶやくように告げる。
「た、たのむ……か、紙を……、」
 望は笑いそうになった。
 またも香寺は奥ゆかしくも可愛いことを言って、望を嬉しがらせてくれるのだ。
「かまわん。そのままやれ」
 勇もまた嘲りをふくんだ声で命じる。
「可愛い教え子のまえで、ぞんぶんに漏らすといい」
「い、いや……! そんな、そんなこと……」
 泣き声がひどく健気に思えて、望の欲望はたかまる一方だ。
「望君、お願いだから」
 勇は無理でも望なら許してくれるのでは、と思ったようだが、望の口からもれた言葉も残酷だった。
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