昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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月下凌辱図 六

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「牛雄、こっちへ来て手伝ってくれ」
 触れている仁の肌の熱が、一瞬、引いた気がした。 
「い、いやだ!」
 つい先ほど、その名を脅しにつかって仁を従わせておきながら、あっさりと彼を呼ぶ残酷さと狡猾さ。月夜に微笑む望は幼い悪魔そのものだった。
 呼ばれた牛雄は犬のようにすぐさま来る。
 知能は低いが、望が屋敷で一番の力を持つようになり、望の言うとおりにすれば、時折こうやっておこぼれに授かれると悟っているようだ。そういう浅ましさも仁をおぞけさせるのだろう。
「見てみろ牛雄、仁さんの身体はきれいだろう?」
「あう……」
 言われたことは理解しているようで、幾度もうなずく。
「道具をよこせ」
 牛雄は線香を入れていたずだ袋から、ふるえるような手つきで何やら取り出した。
 見せつけられた仁は、薄闇に顔をいっそう白くした。
 それは黒光りする張型だった。
 香寺につかったものとは違って、こちらは黒檀でつくられたもので漆黒の色をしていた。大きさは手のひらにおさまる程度でさほど大きくはないが、仁を怯えさせるには充分だった。
 仁は、こういったものを使われることをひどく嫌悪する。一度使おうとしたとき、はげしく抵抗され、泣かれ、そのときは断念した。だが、今夜はゆるさない。
「面白そうなおもちゃでしょう? これで仁さんをぞんぶんに喜ばせてあげますよ」
「や、やめてくれ!」
 泣きそうな表情で首を横に振る仁を、望がゆるすわけはない。
「やっぱりあなたは素直になれないのですね。しょうがないな、牛雄、仁さんを押さえつけてくれ」
「い、いやだ!」
 勇よりも牛雄にさせる方が、いっそう仁にとっては辛いことを知りながら、敢えて望は彼にさせようとする。
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