昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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秘密 五

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 望は絶句していた。
 思い当たることもある。
 あの若さで旅した国が多すぎる。海外を放浪していたのは数年のことではない。五年、十年に及ぶ月日なのだろう。
「ふふふふふ……。坊ちゃん、仰天するのは、まだ早いよ。とっておきの秘密を教えてあげましょう。旦那さん……御前のことだけれど……、あんたのお祖父さんを生んだのは、あたしなのさ」

 望はしばし――といってもほんの数秒のことだったろうが――、玉琴の顔を見ていた。
 この女はいったい何を言っているのだろう……。
 いくらなんでも……、そんな馬鹿げたことがあるわけがない。
 事実、祖父崇を生んだのが玉琴なら、いつの日にか屋敷の閨で見た、あの、ありうべからざる光景は、いったいなんなのだ。
 いくら人ならざる一族とはいえ、そこまでひどい、そこまで醜悪なことがあってよいのだろうか。望には受け入れられなかった。
 だが、祖父が自分にしたことを思い出し、まったくありえなくもない事実なのだと気づいてしまう。
 それでも唇は、望の思っていることとは反対の言葉をつむごうとした。
「そ……そんなこと」
 あるわけがない、と言おうとしたが、言葉は喉にひりついて、口から出ることはないまま消えてしまう。
「ほほほほほ……。事実よ。あたしが、旦那さんの実の父親の相手をして儲けた子よ。もうすっかりあんな爺だけれど、あれでも幼い頃は可愛かったもんよ」
「ち、父は、父は本当に祖父の子なのか?」
 よもや、父までもが、この女妖の腹から生まれたというわけではないだろう。望は不安に泣きたくなった。
「ほほほほほ。忠様はねぇ……坊ちゃんの旦那さんが芸者とのあいだに儲けた子よ」
「げ、芸者……?」
 では、遺影でしか見たことのない祖母の子ではなかったのか。
「ほほほほほ。その芸者とは、都姐さんのことよ」
 またも望は絶句した。
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