昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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秘密 八

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「義務?」
「一族のかなめとなって、一族をたばね、まとめ、保護する義務です。一族繁栄のためならば、これからは、かなり危ないことを経験なさるかもしれませんし、汚れ仕事をせねばならなくなるかもしれません」
 望は都の顔を凝視した。
 忠実な女中頭の表情はなく、厳しく冷たい目が望を射抜く。
「相馬家のためなら、これからは……雨沼様のような後ろ暗い仕事をしていらっしゃる方とも付き合わねばなりませんし、血を見ることも多くなるかもしれません。……いえ、相馬の家にかぎらず、権門の家に生まれ育ったものは、多かれ少なかれ、ときに冷酷にならねばならぬものでございます。そのお覚悟はありますか?」
「な、ないといったらどうなるんだ? おまえたちは、僕を追い出すのか?」
「追い出したりはしやしないさ。贄の相手をして相馬家に逆らうというのなら、こんどはあんたが食われるのさ」
 平然とそんなことを言って玉琴はけらけらと笑う。
「ねぇ、坊ちゃん、迷うことなど何もないだろう? 相馬の当主となってあたしたちと永遠に生きるのか、それとも相馬家やあたしらに逆らって、食われて終わるのか、もしくは一文なしで家を出るのか。どう考えたって、あたしらとともに生きることの方が幸せじゃないか」
 そのためには、このおぞましい妖怪たちの眷属になれというのだ。
 いや、そもそも、自分はこの化け物たちと血がつながった、生まれながらに彼女らの眷属だったのだ。そう思うと望は絶望的な気持ちになった。
 望に逃げ道はない。
 坊ちゃま育ちの望は、相馬の家を出ては生きていけない。なにより、食われてしまうという言葉が、空恐ろしい響きをもって迫ってくる。
「さぁ、今この場で選ぶがいいさ」
 玉琴の目は爛々と光って、望を追い詰めてくる。
 望には、他に選ぶ道はなかった。

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