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玻璃の夢 五
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彼らもまた、妖しの眷属として、強力な生命力を得ているはずだ。永遠に不死ではないにしても、普通の人よりは寿命が長いはずだ。 仁さんもまたどこかで別の人間として生きているはずだ。
僕は最後に、屋敷を振り返った。
ぼんやりと水に溶けた墨のようなものが見える。
芸者だった。一瞬、玉琴かと疑ったが、都だった。
この屋敷から出ることのない幽霊となって、彼女はここにとどまりつづけるだろう。
こういう存在は、たしかに幽霊なのだろう。
心なしか、幽霊となった都は悲しそうだ。
行ってはいけない……。
そう訴えているように、思えた。
僕は数秒、逡巡した。かつては、もう一人の母のようにも思っていた人だ。だが、それはすべてまやかしで、本当は恐ろしい狐の化け物で、僕をこうして妖しい世界に引き入れた人でもある。
僕は迷ったが、首を横に振っていた。
おまえはそこで幽霊としているがいい。僕は、新たな人生を生きるのだ。章一の身体をつかって。
永訣の想いをこめて、もう一度だけ振りかえり、そして、門外へ足を踏みだしたその刹那、世界はまた暗転した。
僕は最後に、屋敷を振り返った。
ぼんやりと水に溶けた墨のようなものが見える。
芸者だった。一瞬、玉琴かと疑ったが、都だった。
この屋敷から出ることのない幽霊となって、彼女はここにとどまりつづけるだろう。
こういう存在は、たしかに幽霊なのだろう。
心なしか、幽霊となった都は悲しそうだ。
行ってはいけない……。
そう訴えているように、思えた。
僕は数秒、逡巡した。かつては、もう一人の母のようにも思っていた人だ。だが、それはすべてまやかしで、本当は恐ろしい狐の化け物で、僕をこうして妖しい世界に引き入れた人でもある。
僕は迷ったが、首を横に振っていた。
おまえはそこで幽霊としているがいい。僕は、新たな人生を生きるのだ。章一の身体をつかって。
永訣の想いをこめて、もう一度だけ振りかえり、そして、門外へ足を踏みだしたその刹那、世界はまた暗転した。
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