艶夢百景

文月 沙織

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花の宿 五

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 とにかく光則ははげしい衝撃を受けていた。
 その絵は……、光則が今までに見た絵とはまるで違っていた。
 それは表題どおり、若衆、つまり、若者と表現される男子を描いた絵だった。
 時代背景はそれぞれ異なっており、春画などで見慣れた江戸時代の風俗のものもあれば、平安時代らしい水干姿のものや、奈良飛鳥時代らしき貫頭衣姿のものもある。
 色彩はあざやかで、現代に描かれたものであることは確かだ。絵の技術はかなり高度でたしかなものだと光則は感じた。
 描かれたものは、そんな若い男性が睦みあう、いわゆるみだら絵のようなものだが、内容はかなり過激である。
 たとえば平安時代の貴公子らしき青年が、二人の賊らしき男にからまれている絵がまず光則の興味を強烈にひいた。
 貴公子は、賊の男二人に襲われ、背後では彼の従者らしき男が貴公子を助けようとして刀を抜こうとしている。
 項をめくると、従者の必死に抵抗もかなわず、貴公子は賊にあばら屋のような住居へさらわれてしまう。
 そこでほぼ全裸に剥かれ、あらんかぎりの凌辱を受ける。
 項をめくるたびに、物語のように絵は展開を見せてくれる。春画によくあるように絵に文章の添え書きはないが、その分見る者は想像力を刺激される。
 刀や烏帽子はもちろん、水干も表袴うえのはかままでうばわれ、無残な姿にされた貴公子。縄でしばられ、白い肌を凌辱され、あられもない姿をさらされ……。
 煽情的な現代のポルノのようであるが、匂いたつような色気と、官能美、被虐美は、芸術性を否めない。
 週刊誌の猥褻な記事や成人漫画などとはまったく違う妖美感に圧倒される。春画などで描かれる女たちは、表情がほとんどなく、人形のようだが、この絵の人物には感情がしのばれる。
 怯えた顔、屈辱と羞恥に泣く顔、そして、最後にはあきらかに快感を得ていることが知れる。
 光則は見ているうちに恐ろしくなってきた。 
 絵が怖いのではない。その絵を見ているうちに、自分のなかにある種の熱が生じてきたことが怖いのだ。
 光則は目を伏せた。
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