艶夢百景

文月 沙織

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闇夜の夢 七

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「こいつはどれぐらいで売れますかね、お頭?」
 その問いに答えたのは別の声だ。 
「色子にしては歳がいっているから、そう高くはつかないのではないか?」
 男たちは恐ろしい会話をつづけた。
「いいや、それも仕込み具合で変わるぞ。これから儂たちでみっちり鍛えあげて、芸のひとつでも仕込めば、高く売れるかもしれん」
「くくくく。お頭のいう芸ときた日には」
「しかし大丈夫ですかね? 貴族のお殿様ですから、あんまりやり過ぎると、前のどこかの屋敷の女房みたいに気が狂っちまうかもしれませんぜ」
「今回はそうならないように気をつけないとな。じっくり、ゆっくりと仕込んでいくとするか。くくくく。おい、おまえは馬を曳いてこい。それも売ればちょっとは金になるだろう」
 光経は気が遠くなりかけていた。
 その光景は、三匹の鬼にさらわれる姫君のように、無残で恐ろしく、妖しく、どこか美しくもあった。

 連れていかれたのは、古びた社のような建物であった。かつてこの辺りには小さな集落があり、そこに住む人々が信仰していた神をまつっていたようだが、今はさびれてほぼ廃墟と化している。
 彼らはここを仮の宿としているようだ。
 光経の意識がはっきりしたとき、最初に感じたのはかび臭さであった。
 目が慣れてくると、己があばら家に連れこまれたことがわかった。 
「どれ、まずは商品となるかどうか、じっくり拝ませてもらうとするか。おい、明かりをつけろ」
「へい」
 カチ、カチと音がするや、ぼんやりと辺りが明るくなった。だが、それは光経の恐怖を倍増させることになる。
 完全に意識が覚醒した光経は、跳ね起き、咄嗟に、床のうえをあとずさっていた。
 おぞましい鬼たちが、今まさに自分に向かってきているのだ。
「な、なにをする? はなせ!」
「へへへへ。おまえはたいした金はもってないようだから、おまえ自身で稼いでもらおうと決めたのだ。さ、もう逃げることはできぬぞ。大人しく儂たちの言うことを聞け」
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