今度は、私の番です。

宵森みなと

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第三話 知られざる力の目覚め

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手をかざすと、空気がふわりと動いた。

何の呪文もいらない。意識を軽く集中させるだけで、風が流れ、部屋のカーテンが微かに揺れる。

まだ誰にも話していない。けれど、私は知っていた。前世の記憶が戻ったあの日から、身体のどこかにある「力」が、静かに目を覚ましていることを。

それが単なる気のせいではないと知ったのは、王立学園の飛び級試験――その前段階、「魔力量と属性資質の公式検査」が行われた日だった。

* * *

検査は、王都にある中央魔導院の別棟で行われた。入学希望者の中でも、特別科志望かつ飛び級希望者のみが対象となる厳正な試験の一環だ。

年齢や身分ではなく、力そのものを測られる場。言い換えれば、貴族の子息であろうと「資質がなければ門前払い」されることもある。

母が付き添ってくれたが、院の中に入ると付き添いは不可。私は一人、純白の魔法石が埋め込まれた円形の部屋に通された。

「緊張しなくて大丈夫ですよ。では、両手をかざしてください」

無機質な声で促した係官に従い、私は手を掲げた。

すると、魔石が淡く光り始めた。最初は薄い水色、次いで緑……さらに、まばゆい金の光が瞬き、最後に、誰も予期しなかった“色”が現れた。

――紫銀。

それは、どの既知の属性にも属さない、異質な輝きだった。

係官の手が止まり、隣にいた魔導院の判定官が眉を寄せた。

「……三属性、かつ“創造”の反応……? 記録上、現代で“創造”は……」

呟くような声が耳に届く。私はただ、黙ってその場に立っていた。

何が起きているのか、全てを理解していたわけではない。けれど、この力が、どこか普通ではないという直感だけはあった。

検査が終わると、私は別室に通され、しばらくそこで待つように言われた。まるで“特別な来客”でも扱うかのように、部屋には温かな紅茶と焼き菓子が用意されていた。

十分後、再び現れたのは、先ほどの判定官だった。品のある白髪の男性で、眼差しだけがやけに真剣だった。

「セレスティア=サフィール嬢。検査の結果、貴女には水・風・光の三属性すべての適性が認められました。これは、王国全体でも片手で数えるほどの稀少性です。そしてもうひとつ……“創造魔法”と分類される反応が出ました。これは……現代には存在しないはずの資質です」

私は黙って聞いていた。

「この結果がどう扱われるか……正直、我々にも前例がありません。ただ、魔導院と王立学園、王国側の一部機関で、一定の連携と管理が行われる可能性があります」

要するに――

「目をつけられた」ということだ。

「ご家族には、正式な報告と共に書面が届きます。なお、入学審査においては大きな加点要素となるでしょうが……同時に、少々“監視”のような扱いがついて回る可能性もあります」

その言葉に、私はうなずいた。

逃げるつもりはなかった。むしろ、この力を使って何かを成し遂げられるのなら、それは私の武器になる。

ようやく手に入れた、自由への足がかりなのだ。
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