18 / 54
第17話 厩舎で、白翼に再会する理由
しおりを挟む
イザーク団長が案内してくれたのは、王立魔法師団の施設の奥にある、特設の厩舎だった。そこには、ホワイトグリフォンが他の魔獣や馬と離して静かに隔離されているという。
廊下を進みながら、クラリスは緊張で胸を押さえていた。これから会うのは、ただの魔獣とは違うホワイトグリフォン──しかも、契約関係にある相手である。
ところが、向かう途中で突如大きな鳴き声が響き渡る。
その音に嫌な予感を感じたクラリスは咄嗟に一歩後退りした。
目の前に現れたのは、翼を大きく広げたホワイトグリフォンだった。魔法師団の団員の静止を振り切り、全身で迫りくる白翼の影――。
イザーク団長でさえ驚きの顔を隠せなかったが、すぐさまクラリスの前に出る。
「クラリス嬢、後ろに!」という声に、クラリスは弾かれたようにイザーク団長の後ろに隠れた。
グリフォンはクラリスとの間合いを保ち、しばらくの間……そして、ゆっくりと身体を折り、頭を地面へと下げた。異様なほど落ち着いた礼を示して見せたのだった。
クラリスはイザーク団長の後ろの制服を握りしめ暫く目を瞑り襲われる衝撃を待ったが、しかし襲われないという空気を感じ取り、そのまま恐る恐る、イザークの影から顔を出す。そして──
藍色の瞳と真っ白い羽毛を持つその姿を見た瞬間、胸の奥で何かが弾けた記憶が蘇った。
――前世で飼っていた白いラブラドール「ポンちゃん」だ。
つい、心の声が漏れてしまう。
「ポ、ポンちゃん……?」
その瞬間、グリフォンは尻尾(とは言えない翼の根元)を大きく振り、小さく鼻を鳴らして甘えるような仕草を見せた。
「えっ、本当に……ポンちゃんなの?」
クラリスは思わず近づき、迷わずにその頭を撫でた。
グリフォンは嬉しそうに目を細め、すり寄るように甘えてきた。あまりの似た仕種にクラリスの目から涙が溢れだした──。
その時、後ろから低く響く声が響いた。
「……クラリス嬢、これは一体……どういうことだ?」
イザーク団長だった。クラリスはハッとして、どう答えるべきか一瞬凍ったが、素直に言ってしまった。
「昔、飼っていた犬の名前がポンちゃんで……」
自分で言っておいて焦る。これはどこかで拙かったかもしれない、と一人で冷や汗がにじんだ。
クラリスはグリフォンを安心させるため、優しく声をかけて促す。
「ポンちゃん、お利口さんしててね。ハウス、お帰り」
するとグリフォンは雰囲気を察して、ゆっくりと厩舎へと戻って歩き出した。歩き去るまで、何度も振り返り、小さく寂しげな鳴き声を上げながら……。
クラリスはポンちゃんに約束を交わした。
「また……会いにくるからね、ポンちゃん」
その言葉をグリフォンは、目で返すように後ろを見せ特設の厩舎に戻って行った。
イザークは厩舎の外で、彼女の横顔を静かに見つめていた。その目には、クラリスと魔獣との不思議なつながりを感じていた。
「……なぜ、ポンちゃんと呼んだんだ?」
団長の問いに、クラリスは少し恥ずかしそうに俯いたが、すぐに澄んだ声で答える。
「ただの思い出……なんですけれど。昔飼っていた犬がポンちゃんで、彼のしぐさが、懐かしくて……思わず呼んでしまったんです。」
二人で厩舎を出る道すがら、クラリスは誤魔化せたかな?と淡い期待を込めて歩いていた。
クラリスと大空の白い精霊の再会は、彼女にとっても、団長にとっても、そしてホワイトグリフォンにとっても──唯一無二の出会いであった。
廊下を進みながら、クラリスは緊張で胸を押さえていた。これから会うのは、ただの魔獣とは違うホワイトグリフォン──しかも、契約関係にある相手である。
ところが、向かう途中で突如大きな鳴き声が響き渡る。
その音に嫌な予感を感じたクラリスは咄嗟に一歩後退りした。
目の前に現れたのは、翼を大きく広げたホワイトグリフォンだった。魔法師団の団員の静止を振り切り、全身で迫りくる白翼の影――。
イザーク団長でさえ驚きの顔を隠せなかったが、すぐさまクラリスの前に出る。
「クラリス嬢、後ろに!」という声に、クラリスは弾かれたようにイザーク団長の後ろに隠れた。
グリフォンはクラリスとの間合いを保ち、しばらくの間……そして、ゆっくりと身体を折り、頭を地面へと下げた。異様なほど落ち着いた礼を示して見せたのだった。
クラリスはイザーク団長の後ろの制服を握りしめ暫く目を瞑り襲われる衝撃を待ったが、しかし襲われないという空気を感じ取り、そのまま恐る恐る、イザークの影から顔を出す。そして──
藍色の瞳と真っ白い羽毛を持つその姿を見た瞬間、胸の奥で何かが弾けた記憶が蘇った。
――前世で飼っていた白いラブラドール「ポンちゃん」だ。
つい、心の声が漏れてしまう。
「ポ、ポンちゃん……?」
その瞬間、グリフォンは尻尾(とは言えない翼の根元)を大きく振り、小さく鼻を鳴らして甘えるような仕草を見せた。
「えっ、本当に……ポンちゃんなの?」
クラリスは思わず近づき、迷わずにその頭を撫でた。
グリフォンは嬉しそうに目を細め、すり寄るように甘えてきた。あまりの似た仕種にクラリスの目から涙が溢れだした──。
その時、後ろから低く響く声が響いた。
「……クラリス嬢、これは一体……どういうことだ?」
イザーク団長だった。クラリスはハッとして、どう答えるべきか一瞬凍ったが、素直に言ってしまった。
「昔、飼っていた犬の名前がポンちゃんで……」
自分で言っておいて焦る。これはどこかで拙かったかもしれない、と一人で冷や汗がにじんだ。
クラリスはグリフォンを安心させるため、優しく声をかけて促す。
「ポンちゃん、お利口さんしててね。ハウス、お帰り」
するとグリフォンは雰囲気を察して、ゆっくりと厩舎へと戻って歩き出した。歩き去るまで、何度も振り返り、小さく寂しげな鳴き声を上げながら……。
クラリスはポンちゃんに約束を交わした。
「また……会いにくるからね、ポンちゃん」
その言葉をグリフォンは、目で返すように後ろを見せ特設の厩舎に戻って行った。
イザークは厩舎の外で、彼女の横顔を静かに見つめていた。その目には、クラリスと魔獣との不思議なつながりを感じていた。
「……なぜ、ポンちゃんと呼んだんだ?」
団長の問いに、クラリスは少し恥ずかしそうに俯いたが、すぐに澄んだ声で答える。
「ただの思い出……なんですけれど。昔飼っていた犬がポンちゃんで、彼のしぐさが、懐かしくて……思わず呼んでしまったんです。」
二人で厩舎を出る道すがら、クラリスは誤魔化せたかな?と淡い期待を込めて歩いていた。
クラリスと大空の白い精霊の再会は、彼女にとっても、団長にとっても、そしてホワイトグリフォンにとっても──唯一無二の出会いであった。
1,310
あなたにおすすめの小説
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる