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第14話『指先はミツの味』

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 エルフ少女の秘密基地をあとにしてから、およそ1時間。

 ボクたちは地面に降りていた。
 そして、巨大樹の森を歩いて――いなかった。

「あんた、驚くほどなっさけないわね」

 先を歩いていたエルフ少女が、振り返って言う。
 苛立ちを通り越したのか、もはやその視線には呆れが混ざっていた。

(うっせぇえええ! 体力がないのも、裸なのもボクのせいじゃないねぇっつーの!)

 テオにおんぶされた状態で反論するのもなんだが……。
 運動不足ももちろんあるが、ボクが本当にへばっている原因は『状態:水分不足』だ。


 もし、これが進行したら『状態:脱水症状』にでもなるのだろうか?
 そうなったら……。

(もう、死ぬのはもうゴメンだぞ!?)

 コーラじゃなくてもいいから、なにか水分を取らないと。
 ボクは掠れた声でエルフ少女に訴えた。

「み、ず……、こほっ……」

「なにあんた、のど乾いて動けなかったの? そういう言い訳、いらないんだけど?」

(……! やった、伝わった!)

 ボクもそろそろコミュニケーション能力が上がってきたようだ。
 返って来たのは相変わらずの辛辣な言葉だったが、これで解決……。

「ガマンしなさい。このあたりに飲み水はないから」

「!?」

 そんな無情な!?
 それに、ないなら出せばいいだろ? こういうときのための魔法じゃないのか!?

「あーはいはい。なにが言いたいのかはわかるけど、意味ないわよ。だって魔法で出した水は飲めないから」

「……」

 いや、結論だけ述べられても困る。
 きちんと理由を説明しろ理由を。

 正直、納得できない。
 コイツ絶対、ボクに対して魔法を使いたくないだけだろ。

「はぁ、信じてないって顔ね。フンっ。だったら口を開けなさい」

 ボクの無言の返答を受け取り、エルフ少女は嘆息した。
 ちょっとずつ、彼女のボクに対する読解力が上がってきている気がする。

 ボクは言われたとおりに口を開けた。
 彼女は人差し指を立てて、唱える。

「マジック<ウォーター>」

 エルフ少女の伸ばした指先から、ちょろちょろと水が溢れはじめた。
 彼女はニヤニヤと笑っていた。

「あんた、口に入った分は全部、1滴残さず飲み干しなさいよ」

 指先がボクの口元に差し出された。
 え? 本当にいいのか?

「ちょっと、早くしなさいよ。魔力がムダになるでしょ」

 ボクは急かされ、意を決する。
 相手が許可してるんだから、いいんだよな?

「きひっ。い、……いただき、ます……ぱくっ!」

 そして、ボクはエルフ少女の指先にしゃぶりついた。
 咥えた彼女の指先は、ものすごく……柔らかかった。

「~~~~!?!?!?」

 エルフ少女がガキンと硬直していた。
 髪がぞわっと逆立っていた。

 なにを驚いているんだろう?
 けど、そんなことどうでもいいか。

(き、気持ちいいぃいいいっ!)

 なんだこのすべすべとした触感は!? ぷにぷにとした感は!?
 あぁっ、一生このままでいたい!

 魔法で作られた水が口内に溜まっていくが、構うものか。
 ボクはぶちゅぶちゅと指先を堪能する。

 口で息を出来ない分は、フゴフゴと鼻を動かして呼吸した。
 1秒でも長くエルフ少女の指を味わうのだ。

「べろんべろん、ちゅぱちゅぱ、じゅるるるぅっ……!」

 エルフ少女の指の形を覚えるかのごとく、舐めまくる。吸いまくる。
 興奮し過ぎて、味なんてわからない。

 けれど、舌に触れるきめ細やかな肌はボクに『美味』という感情を抱かせる。
 それを甘噛みすることで、さらに堪能する。

 簡単に噛み切れそうな、柔らかくてほっそりとした指先。
 歯茎がムズムズしてしまう。

「じゅぶっ、はぁっ……!」

 あぁっ、なんでこのエルフ少女の指は、こんなにもおいしいんだろう!
 もっと強く噛み締めたら、いったいどれほどよいだろう!?

 彼女が痛みに悲鳴を上げる瞬間を見たかった。
 同時に、永遠にこの歯がゆさを感じ続けたいという思いもあった。

 そんな二律背反の思いは、しかしどちらも叶うことなく終わりが来る。
 口中が、水でいっぱいになってしまったのだ。

「ひっ、ひぃいいいイヤぁああああああッ!?」

 同時に、ほとんど白目を向いていたエルフ少女が我に返った。

 指を引き抜き、ボクを蹴り飛ばした。

 ボクは最後の一瞬まで、彼女の指を堪能した。
 人生一の肺活量を発揮して「ちゅぽんっ」と吸い尽くした。

「……んむっ、ふんむぅぅっ」

 ボクのチンポは完全に勃起していた。
 それに、まだ最後の楽しみが残っている。

 口中に溜まったエルフ少女が出した水。
 それを彼女のエキスとかき混ぜるように口内でしっかりと味わい……。

「ブフゥウウウウウウ!?」

 ボクは顔を背け、勢いよく吹き出した。
 真横に立っていたテオがそれを頭から浴びて、ビショビショになった。

「ごはっごはっごはっ!? んだ、コレぇ!? にっがぁっ!?」

 まだしも小便のほうがマシでは? と思えるほどにヒドい味だった。
 そもそも、これは本当に水なのか?

「ぺっ、ぺっ!」

 口内に一滴も残すまい、と執拗にツバを吐く。
 後味も最悪だ。まだマズさが舌にこびりついている気がする。

「あっ」

 そこで我に返った。
 エルフ少女が静かに肩を震わせていた。

「だ……だれがっ! 直接っ! 口をつけていいなんて言ったぁあああっ!?」

 これ、やばいかも……!?
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