女神のため息 ~異世界転生管理課の繁忙期~

佐崎なつ

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4.ぐるぐる巻き戻る

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「ねえ。キリがなくない?」

「そうでしょうか?」

「無間地獄じゃない」

「はあ、まあ」

 頬杖をつき、やる気もなさそうに話す彼女に、何故付き合わねばならないのか。
 クリスタラーゼが飛ばされた先は、断頭台にのぼり処刑される度に幼い頃へと巻き戻る少女の自室だった。

「小説ではさ、何度も巻き戻ってたけど主人公にとっての大団円を迎えたら巻き戻らずに、話が進むじゃない?」

「へえ、そうなんですね」

「けどさ、その後また巻き戻らないって保証はないじゃない。私はいつまで怯えて過ごせばいいわけ? そう思ったらやる気をなくしたのよね」

 未来は変わらず、巻き戻ってもずっと同じ時間を過ごしている。
 そしてまた彼女は断頭台に立たされることになり、現在は九十九回目の巻き戻り人生の終わりに近づいているところらしい。

「まあ、九十九回目とか、百回目とか、意味ありげな数字の時に変化が訪れるっていうパターンはありますから。とりあえず七転八倒しつつ新たな道を模索してみては?」

「七回も転んで八回も倒れるとか誰だって嫌じゃない? 私に至ってはそんな時期はとうに通り過ぎて九十九回目だし」

 ごもっともではあるが、彼女はその域に達する前に努力することをやめている。

「いえ、あの、言葉のあやでして。もう少しあがいてみたらいいのではと思った次第なんですが」

「幸せになる保証もないのに? 抜け出せる保証もないのに? だったらもう慣れてるしこのままでいいかなって。だけどさすがに長すぎじゃない? 九十九回とかしつこすぎると思うんだけど」

 ごもっともではあるが、だからこそ抜け出そうと試行錯誤してほしいのが神の望みだと思うのだが。

「とにかく持ち帰り検討はいたしますが、ひとまずご自分で同じ未来を迎えないようにと努力してみることをオススメいたします」

「よろしくね。気が向いたら頑張るわ」

     ……□……□……

 後日、彼女は九十九回目の断頭台を迎えた。
 幼い頃に巻き戻ることはなく、彼女はやっとループから解き放たれた。

 クリスタラーゼは彼女がいなくなった後も進むその世界を眺めながら、女神など因果な仕事だと思った。

 一人の人間に、運命を切り開くまで足掻き、努力し続けろというのは酷な話だと思う。
 創作の世界ではそれを成し遂げることもできるかもしれない。
 だが現実に自分がその立場になったとして、前向きに努力し続けられる人がどれくらいいるだろうか。
 彼女のように何度か生き直すことを試みたところで巻き戻ってしまい、心が折れてしまうのではないだろうか。

 現実に生きている人間を言葉で操ることはできない。
 言葉で縛ることはできない。

 彼女が穏やかな今を迎えられているようにと、クリスタラーゼは心から祈った。
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