【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
64 / 84
第6章 問題解決に向けて

1 メアリーの正体

しおりを挟む
 
 ルイーズは、目覚めた翌日にはリオンの部屋からブラン家に用意された客室へと戻っていた。
 エリーとリアムに付き添われて部屋に入ったルイーズは、ほっと一息つくとソファーに腰を下ろした。

「ルイーズ、何か飲む? ハーブティーが良いかしら?」
「姉上、何か食べますか? 僕、メアリーさんにお願いして用意してもらいます」

 甲斐甲斐しく世話をする二人をルイーズが引き留めた。

「二人ともありがとう。私はもう大丈夫よ。できれば、三人でゆっくりお茶を飲みたいかな」
「分かったわ。今、用意するわね」

 何故だかずっと機嫌のいいエリーが、簡易キッチンでハーブティーを淹れていると、新たな訪問者がやってきた。

 エリーが慌ててドアに向かうと、そこからエマが入ってきた。

「皆いるかしら。ちょっとお邪魔するわね」
「エマちゃんどうしたの? レアさんと一緒に、妹さんのところに行ったのよね?」
「うん、そうよ。……良い香りだわ。エリー、私にもハーブティー淹れてくれる?」
「もう……、分かったわ。向こうの部屋に二人がいるから、大人しくしていてね」
「大丈夫よ、わかってるわ」

 エマが部屋に入ると、続いてエリーも急いでお茶セットを持って入ってきた。

「ルーちゃん、体調はどう?」
「もう大丈夫です。エマさんにもご心配をおかけしました」
「私は何もしてないのよ。身体の洗浄や着替えはエリーがしていたし、その他は全て、リアム君とリオンさんがしていたから、何もさせてもらえなかったわ」
「そうでしたか……」

 ルイーズは、エマからリオンの様子を聞いて、驚きながらも照れくさそうな表情だ。エリーとリアムにも微笑みながらお礼を伝えている。

「ところで、この部屋に侍女はついてるかしら?」

 エマはリアムに尋ねるが、首を傾げている。ルイーズが見かねて答えようとするも、寝込んでいたために思い出せないようだ。

「寝込んでいる間のことは分かりませんが、初日に部屋へ案内してくれた方しか、記憶にありません。その時も、あまり言葉は交わしませんでした。メイドのメアリーさんと制服が違うので、多分侍女だとは思いますが……」

「そう。私たちのところも、そんな感じよ。侍女の態度が余りにもよそよそしいから、レアに確認したの。そうしたら、以前からいた侍女が数名辞めて、新顔が増えていたらしいわ。おかしいわよね」

「エマちゃん、情報は大切だけど、他家のことを嗅ぎ回るのは良くないわ」

「エリー……何言ってるのよ。隣国に接しているこんな危険なところに、『ルイーズとリアム君を二人で行かせられない』って言ってたのはエリーでしょう。それに、人聞きが悪いわ。嗅ぎ回ってるのではなく、情報収集よ。こういうことは、遅れをとると命取りなんだから。リアム君も将来はブラン家の当主になるのだから、覚えておいてね」

「……はい」

 リアムはエマの勢いについて行くのがやっとのようだ。その隣では、ルイーズがエマの話を聞いて何かを考えている。

「エマさん、私も気になったことがあるんです。他の侍女よりも、接触することの多かったメアリーさんは、本当にメイドなのでしょうか。話す言葉や所作も、お手本にしたいと思えるくらいに綺麗でした」

「……盲点だったわ……ねえ、私たちの母親って、昔から仲が良いのは知ってるでしょう? 実は、二人とも王妃様と親交があるのよ。女学院時代の先輩、後輩だったらしいわ。だから、話しが筒抜けなのよね。お母様もレアのことを気にかけていたし……一瞬、隣国のスパイかと思ったけど……もしかして、王妃様がクレメント家に潜ませたのかもしれないわね」

 エマは頬に手を添えながら何度も頷いている。

「エマちゃん、後半の部分は憶測よね。誰が聞いているかわからないから、口にはしない方がいいわ」

「もう、エリーは心配性ね。でもまあ、確かにそうね。気をつけるわ」

 エリーに諭され、反省した様子のエマだが、尚も言葉を続けた。

「そうだわ。今から皆でリリーちゃんの部屋に行ってみない? ルーちゃんもその後が気になるだろうし、紹介もまだよね。それに、メアリーさんもいると思うわ」

「確かに気になります。ご迷惑でなければご一緒させてください」

「僕は姉上が良ければ」

 
 部屋を出て、廊下をしばらく歩くと、何やら賑やかな声が聞こえてきた。四人は廊下の窓から外を眺めた。その声は、騎士団の練習場から聞こえてくるようだ。

「すごい人ね。練習風景はたまに見かけたけど、こんなに大勢いたかしら?」

 エマは、騎士の人数に驚いているようだ。エマの後ろから、その光景を見ていたエリーが、今まで見たこともない怖い顔つきになっている。隣で見ていたリアムが、そんなエリーに目を見張った。

「エリーさん、どうしたんですか?」

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。

専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。 ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。 クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は 否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは 困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。

妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?

ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。 イケメン達を翻弄するも無自覚。 ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。 そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ… 剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。 御脱字、申し訳ございません。 1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。 楽しんでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

処理中です...