66 / 84
第6章 問題解決に向けて
3 作戦
しおりを挟む「エリー、声が響いてるわよ」
「……ごめんなさい」
そんなエリーの様子にエマが軽い溜息を吐いた。
「エリーが、ルーちゃんを大切に思う気持ちは分かるわ。でも、エリーのそんな態度を望んでいないと思うわよ。周りは、本当に助けを必要としている時だけ、手を貸してあげればいいと思うのよね。社交界に出れば、姑息な手を使ってくる女性だって多いのよ。あんな光景を見たからって、一喜一憂していたら身が持たないわ」
エマの言葉を聞いても納得のできないエリーはぼそっと呟いた。
「それでも、リオンさんの言葉を聞いて嬉しかったのに……」
「確かに。僕もがっかりしました」
「まあね~」
エマの発言の一つ一つが気になるリオンは、眉間に皺を寄せて話を聞いている。自分の名前が出てきたことで気づいたようだ。
「その話は、自分のことだろうか」
そんな会話を背中越しで聞いていたルイーズは、ドアから離れて作業場所に戻っていった。
(私は、何を言おうとしたんだろう)
ルイーズは、エマの言葉を聞いて冷静になった。ちりりと感じた胸の痛みも落ち着いた。自身の気持ちや今すべきことは何か、様々なことを心に問いかけながらも、目の前の作業に集中することにしたようだ。
ドアの隙間から入ってくる声も、今のルイーズには聞こえていない。
一方、ドアの前で繰り広げられていた言い合いも決着がついたようだ。エリーがキッチンに入ってくると、何事もなかったかのように、ルイーズの傍に歩み寄った。
「任せちゃってごめんなさい。私も手伝うわ」
「……エリー、ありがとう」
「……うん」
エリーはルイーズにお礼を言われると、少しだけ涙ぐんだ。そんなエリーを見つめながら、ルイーズは何かを思い出しているようだ。
「……エリーは…いつも言い返してくれていたわ。優しくて、熱いところがあって……」
エリーは顔を上げ目を見開くと、ルイーズの表情を伺っている。その直後、顔をくしゃくしゃにさせて泣き出した。涙腺が決壊したようだ。その様子を見たルイーズもまた、顔をくしゃくしゃにして、笑うように泣いた。
涙も止んだ頃、エリーが何かを思い出したような表情でルイーズと目を合わせた。
「......忘れてたわ。さっき、リオンさんとキースさんとクロードさんが部屋に来たの。手が空いたら、隣の部屋に来るようにって言っていたわ」
「そう。それなら、折角だからマドレーヌを持っていきましょうか」
「……そうね、さっき睨んじゃったし......」
「ふふっ……じゃあ、用意しましょう」
二人は急いで、お茶の用意を始めたようだ。
♢
ルイーズとエリーが皆の待つ部屋に入ると、良い香りに釣られたエマが、二人のところに飛んできた。
「わあ~ 良いにおい。焼きたてね、お茶にしましょう」
テーブルに全員分の紅茶とマドレーヌを置くと、ルイーズとエリーもソファーに腰掛けた。
「姉上、エリーさん……泣いていたんですか? 二人とも目が赤いです」
「リアム君、心配かけてごめんね。さっき、ルイーズが昔の記憶を少しだけど思い出したみたいで……嬉しくて」
「本当ですか!? 姉上、エリーさん良かったですね」
「「うん」」
「良かったわね! 後でゆっくり話しを聞かせて」
リオンが笑顔で頷くルイーズをもの言いたげな様子でじっと見つめている。しかし、表情を引き締めると前を向いた。
「——こんな時間に訪ねてきてすまない。実は、皆に話があってきたんだ。五日後に、この屋敷で遠征帰還パーティーが行われる。そのパーティーに、隣国に住む叔母と、その娘が出席することになっているんだが、おそらくその叔母が、リリーのぬいぐるみに宝石を仕込んだのではないかと我々は睨んでる。当日は何があるかわからない。皆は部屋からでずに待機してほしい」
エマは頷きつつも鋭い眼差しをリオンに向けた。
「分かりました。そういう事情なら、当日は大人しくしています。ところでリオンさん、そのパーティーに来る娘さんというのは、縁談を持ち掛けられている従妹のことですか?」
「ああ、そうだ」
エマは、「もしかして」と呟くと探るような表情でリオンを見た。
「今日騎士団の練習場で、リオンさんが女性に囲まれていたのは、何か理由があるんですか?」
20
あなたにおすすめの小説
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
突然、婚約解消を告げられたリューディア・コンラット。
彼女はこのリンゼイ国三大魔法公爵家のご令嬢。
彼女の婚約者はリンゼイ国第一王子のモーゼフ・デル・リンゼイ。
彼は眼鏡をかけているリューディアは不細工、という理由で彼女との婚約解消を口にした。
リューディアはそれを受け入れることしかできない。
それに眼鏡をかけているのだって、幼い頃に言われた言葉が原因だ。
余計に素顔を晒すことに恐怖を覚えたリューディアは、絶対に人前で眼鏡を外さないようにと心に決める。
モーゼフとの婚約解消をしたリューディアは、兄たちに背中を押され、今、新しい世界へと飛び出す。
だけど、眼鏡はけして外さない――。
【完結】婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。
青波鳩子
恋愛
ヴェルーデ王国の第一王子アルフレッドと婚約していている公爵令嬢のアリシアは、お妃教育の最中にアルフレッドから婚約破棄を告げられた。
その僅か三時間後に失意のアリシアの元を訪れたアルフレッドから、婚約破棄は冗談だったと謝罪を受ける。
あの時のアルフレッドの目は冗談などではなかったと思いながら、アリシアは婚約破棄を撤回したいアルフレッドにとりあえず流されておくことにした。
一方のアルフレッドは、誰にも何にも特に興味がなく王に決められた婚約者という存在を自分の足枷と思っていた。
婚約破棄をして自由を得たと思った直後に父である王からの命を受け、婚約破棄を撤回する必要に迫られる。
婚約破棄の撤回からの公爵令嬢アリシアと第一王子アルフレッドの不器用な恋。
アリシアとアルフレッドのハッピーエンドです。
「小説家になろう」でも連載中です。
修正が入っている箇所もあります。
タグはこの先ふえる場合があります。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる