【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第6章 問題解決に向けて

3 作戦

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「エリー、声が響いてるわよ」
「……ごめんなさい」

 そんなエリーの様子にエマが軽い溜息を吐いた。

「エリーが、ルーちゃんを大切に思う気持ちは分かるわ。でも、エリーのそんな態度を望んでいないと思うわよ。周りは、本当に助けを必要としている時だけ、手を貸してあげればいいと思うのよね。社交界に出れば、姑息な手を使ってくる女性だって多いのよ。あんな光景を見たからって、一喜一憂していたら身が持たないわ」

 エマの言葉を聞いても納得のできないエリーはぼそっと呟いた。

「それでも、リオンさんの言葉を聞いて嬉しかったのに……」
「確かに。僕もがっかりしました」
「まあね~」

 エマの発言の一つ一つが気になるリオンは、眉間に皺を寄せて話を聞いている。自分の名前が出てきたことで気づいたようだ。

「その話は、自分のことだろうか」

 そんな会話を背中越しで聞いていたルイーズは、ドアから離れて作業場所に戻っていった。

(私は、何を言おうとしたんだろう)

 ルイーズは、エマの言葉を聞いて冷静になった。ちりりと感じた胸の痛みも落ち着いた。自身の気持ちや今すべきことは何か、様々なことを心に問いかけながらも、目の前の作業に集中することにしたようだ。

 ドアの隙間から入ってくる声も、今のルイーズには聞こえていない。

 一方、ドアの前で繰り広げられていた言い合いも決着がついたようだ。エリーがキッチンに入ってくると、何事もなかったかのように、ルイーズの傍に歩み寄った。

「任せちゃってごめんなさい。私も手伝うわ」
「……エリー、ありがとう」
「……うん」

 エリーはルイーズにお礼を言われると、少しだけ涙ぐんだ。そんなエリーを見つめながら、ルイーズは何かを思い出しているようだ。

「……エリーは…いつも言い返してくれていたわ。優しくて、熱いところがあって……」

 エリーは顔を上げ目を見開くと、ルイーズの表情を伺っている。その直後、顔をくしゃくしゃにさせて泣き出した。涙腺が決壊したようだ。その様子を見たルイーズもまた、顔をくしゃくしゃにして、笑うように泣いた。

 涙も止んだ頃、エリーが何かを思い出したような表情でルイーズと目を合わせた。

「......忘れてたわ。さっき、リオンさんとキースさんとクロードさんが部屋に来たの。手が空いたら、隣の部屋に来るようにって言っていたわ」

「そう。それなら、折角だからマドレーヌを持っていきましょうか」

「……そうね、さっき睨んじゃったし......」

「ふふっ……じゃあ、用意しましょう」

 二人は急いで、お茶の用意を始めたようだ。


 ♢


 ルイーズとエリーが皆の待つ部屋に入ると、良い香りに釣られたエマが、二人のところに飛んできた。

「わあ~ 良いにおい。焼きたてね、お茶にしましょう」

 テーブルに全員分の紅茶とマドレーヌを置くと、ルイーズとエリーもソファーに腰掛けた。

「姉上、エリーさん……泣いていたんですか? 二人とも目が赤いです」
「リアム君、心配かけてごめんね。さっき、ルイーズが昔の記憶を少しだけど思い出したみたいで……嬉しくて」
「本当ですか!? 姉上、エリーさん良かったですね」
「「うん」」
「良かったわね! 後でゆっくり話しを聞かせて」

 リオンが笑顔で頷くルイーズをもの言いたげな様子でじっと見つめている。しかし、表情を引き締めると前を向いた。

「——こんな時間に訪ねてきてすまない。実は、皆に話があってきたんだ。五日後に、この屋敷で遠征帰還パーティーが行われる。そのパーティーに、隣国に住む叔母と、その娘が出席することになっているんだが、おそらくその叔母が、リリーのぬいぐるみに宝石を仕込んだのではないかと我々は睨んでる。当日は何があるかわからない。皆は部屋からでずに待機してほしい」

 エマは頷きつつも鋭い眼差しをリオンに向けた。

「分かりました。そういう事情なら、当日は大人しくしています。ところでリオンさん、そのパーティーに来る娘さんというのは、縁談を持ち掛けられている従妹のことですか?」

「ああ、そうだ」
 
 エマは、「もしかして」と呟くと探るような表情でリオンを見た。

「今日騎士団の練習場で、リオンさんが女性に囲まれていたのは、何か理由があるんですか?」



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