【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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最終章 旅立ち

3 ルイーズの願い

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 今日は侍女科の試験の最終日ということもあって、帰りが早いようだ。

 ルイーズとエリー、そしてクレアとミアの四人は、昼過ぎには女学院を出て修道院へと向かった。

 修道院に向かう間、ルイーズが三人にリオンのことを打ち明けた。父親と彼の会話を聞いたこと。今度彼に会うときは、成長した自分でいたいこと。珍しく赤裸々に語るルイーズが、最後は大切な人だと告げると、三人は嬉しさで顔が綻んだ。

「ルイーズ、応援するわ」

「会えないのは辛いけど、今は頑張り時ね」

 クレアとミアの言葉を聞きながら、何度も頷くエリー。

「話を聞いてくれてありがとう」

 四人は、その後も花畑を眺めながら会話を楽しんだ。修道院に着くまでの馬車内は、穏やかな雰囲気に包まれていた。



 ルイーズとエリーが初めて修道院を訪れた日、二人は、医務室の周りに日常生活で役立つ薬草を植えたいと話し合った。

 後日、修道院長と女学院長の二人に話を通した二人は、月に1、2回こうして修道院を訪れている。

 いつの頃からか、そこへミアとクレアが加わった。今日は、医務室前に植えたローズマリーの収穫と、ラベンダーの手入れをするようだ。四人は医務室前に着くと、エプロンをして作業に取り掛かった。

「ローズマリー、すごいことになっているわね」

「そうね。今日は、多めに刈り取っても大丈夫ね」

 ローズマリーの繁殖力に驚きを見せるルイーズと、周囲を冷静に見渡すエリー。

「籠、足りないかな。私、調理場に行ってくる!」

 籠を取りに行ったはずのミアがすぐに引き返してきた。そしてクレアに何かを囁いた。

「ねえ、あそこにいた男性が、ずっとこちらの様子を見てたんだけど帰ってしまったの。もしかして、ルイーズのお相手だったんじゃない?」



 ミアとクレアの話が聞こえてきたが、ルイーズはすでに気づいていたようだ。
 途中、空気の変化を感じたルイーズは、顔を上げて周りを見渡すも、すでにリオンの姿は見当たらなかった。

 ルイーズ自身、彼の姿を見かけたら駆け寄っていたかもしれない。しかし、その姿を目にした時、気持ちが揺らぐであろうことも分かっていた。応接室での会話を聞かなかったら、思うままに行動していただろう。


「クレア、ミア、作業を続けましょう」

 エリーの呼びかけに、二人は持ち場に戻ったようだ。それから四人は、作業が終わるまで夢中で手を動かした。

 ルイーズは、帰り際に修道院長から呼び止められ、植木鉢を渡された。

「今日、訪問された方からルイーズちゃんに。初めて見るけど、綺麗なお花ね」
「……ありがとうございます」

 ルイーズは、植木鉢を受け取りながら、ほのかに笑った。辺境の花畑で見たあのピンクの花だ。

 屋敷に戻ると、部屋の窓台に置いた薄紅色のその花をしばらく眺めていた。


 
 ♢



 長期休暇も返上で過ごした最終学年。 

 気がつけば、卒業を目前に控えていたある日、教員のマノン先生から事務室に来るようにと声を掛けられた。授業が終わると、ルイーズとクレアは、急いで事務室へと向かった。

「「申し訳ございません。遅くなりました」」

「大丈夫ですよ。二人ともこちらに来てください」

「「はい」」

 マノン先生は、二人が目の前に来ると、押さえていた感情を露わにするかのように、笑顔になった。

「二人とも、おめでとうございます。ルイーズさん、クレアさん、本当に頑張りましたね。あなたたちの努力が実を結び……」

 涙をたたえたマノン先生は、言葉を詰まらせた。
 クレアに背中を擦られ、落ち着いた先生から告げられらた言葉は、ルイーズとクレアの首席・次席での卒業が確定したというものだった。

「上位の成績を修めた卒業生には、王宮への推薦状が渡されるの。二人とも、良く考えた上で、後日お返事をください」

「「はい」」


 二人は事務室を退出した後、思いつめたような顔で廊下を歩いていた。

「ねえ、ルイーズ。私、前に王宮で働きたいと言ったことがあったでしょう?」

「ええ、クレアはだいぶ前から、王宮で働くことを目指していたわよね」

「うん。姉に憧れて侍女科に進んで、目指すなら最高の場所で仕事をしてみたいと思っていたの」

「うん」

「でも、王宮と聞いても……今はしっくりこないというか、私の目標はやっぱり姉なのよね。でも、姉には言いづらいし。こんな時期に悩むことではないんだけどね」

「クレア、マノン先生に今の気持ちを伝えたほうが良いわ。先生なら、クレアと一緒に最良の答えを見つけてくれると思うの」

「——そうよね。姉に相談してみるわ」

 ルイーズに後押しされ、クレアの表情は和らいだ。

「ルイーズは、王宮で働く?」

「王宮で働けたら、侍女としては成長できると思うの。でも、私はお仕えしたいと思う方の下で働きたい。それは……王宮ではないわ」

「ルイーズには、もう答えが見つかっているみたいね」

「そうね。私も両親と話してみるわ」

 さっきとは一変して、二人の表情には笑顔が広がっていた。


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