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9.神崎家の救急箱はでかい
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メイの右手は、手の甲の小指側と、掌の母指球側の肉が派手にもっていかれていた。
メイは、自分で手当てしようとしたが、なぜか歩くのすら止められて、おぶわれる。
出血が結構あったのでふらついただけで、怪我したのは、手なのですがと、主張してみたが、すっかり無視された。
引き上手なくせに割と強引だな、この人。
ソファーに腰かけさせられて、下に洗面器を置いて手を洗われた。
その間に持ち込まれた救急セットが巨大なのに驚く。
現金輸送用のジュラルミンケースかとおもった。
もともと優さんの救急箱も大き目だったし、さとるさんの部屋の救急箱も同じくらいだったとサシャから聞いた。
でもさとるさんの部屋のこれは、ちょっと、民家に常備するのがはばかられるくらいの大きさ。
創傷被覆材だけで、何種類入っているんだ?
そこから迷うでもなく、サクサク必要なものを取り出してくるあたり、この人相当ケガ慣れしている?日本も大して平和じゃないって事だろうか。
あまり見慣れない、透明なジッパーがついた粘着テープで、手の甲側も掌側も傷を閉じられて、薬を塗られ、巨大な粘着包帯でおおわれた。
すごいことになったな、と思いながら派手な包帯を見ていると、
「交換するときが心配か?粘着部は24時間後にはゲル化して剥げやすくなるから痛くないぞ。大丈夫だからな」
って。・・・そこまで考えませんでした。
砂も埃も入っていないので、それほど心配することもないと思うのだが、ものすごく痛そうな顔しながら治療してくれるので、心配になる。
ひょっとして、さとるさん、自律神経弱かったりします?
「大丈夫ですよ。痛みを、感じにくい体質らしいので、気にしないで下さい」
メイがそういうと、さとるの目が険しくなった。
「・・・だれがそんな診断しやがった?」
どこに怒るような要素があったかわからなくて、メイがしどろもどろになる。
「診断、はないですが、家とか婚家でよく言われて・・・」
向かい側に座っていたさとるが、ソファーの隣に移動してきて、至近距離から覗き込まれる。
「まさか、信じてないだろうな?」
近い、のですが。
「よ、世の中には、痛みを感じる遺伝子が欠損している人もいると聞いたことが」
「見つかった途端SF映画ができた程びっくりな疾患引っ張り出してくるんじゃねーよ。どう考えたって、他人の痛覚ごと無視した攻撃してくるクズが勝手に言ってる可能性のほうが高いだろうが」
ああ、なるほど。
自律神経の問題じゃなくて、やさしいのか。
そう思ってみていると、さとるさんの頭が下がった。
で、私の首筋に彼の唇があたっている、と思う。
やわらかさと、温かさで、じ、じわじわする!
「ふゅ」
情けない声が出て、反射的に口を抑えようと右手を動かすと、ひじの上をおさえられた。
「右手はケガだからお休みな。殴りたければ左手使って」
く、唇くっつけたまましゃべらないでほしい。
「な、殴ろうとしたわけでは」
だめだ、声が裏返った。
「じゃぁ、質問の続き。痛み感じにくいとか、信じてないよな?」
何と答えてよいかわからなくて、
「打たれても、泣かない子どもだったので」
と続けると、首筋にあたるやわらかくて温かい範囲が少し広がって、それから、ちりっとしたごく軽い痛み。
「みゃぁ」
じわじわとどきどきが広がって、目がじんじんする。
「痛がり」
「へ?」
「どっちかっていうと、痛がりだろ。ちょっとキスマークつけただけなのに泣きそうだぞ」
き、きすまーく?!
「ぴぎゃぁ」
確かに痛い、心臓がですけどね!
メイは、自分で手当てしようとしたが、なぜか歩くのすら止められて、おぶわれる。
出血が結構あったのでふらついただけで、怪我したのは、手なのですがと、主張してみたが、すっかり無視された。
引き上手なくせに割と強引だな、この人。
ソファーに腰かけさせられて、下に洗面器を置いて手を洗われた。
その間に持ち込まれた救急セットが巨大なのに驚く。
現金輸送用のジュラルミンケースかとおもった。
もともと優さんの救急箱も大き目だったし、さとるさんの部屋の救急箱も同じくらいだったとサシャから聞いた。
でもさとるさんの部屋のこれは、ちょっと、民家に常備するのがはばかられるくらいの大きさ。
創傷被覆材だけで、何種類入っているんだ?
そこから迷うでもなく、サクサク必要なものを取り出してくるあたり、この人相当ケガ慣れしている?日本も大して平和じゃないって事だろうか。
あまり見慣れない、透明なジッパーがついた粘着テープで、手の甲側も掌側も傷を閉じられて、薬を塗られ、巨大な粘着包帯でおおわれた。
すごいことになったな、と思いながら派手な包帯を見ていると、
「交換するときが心配か?粘着部は24時間後にはゲル化して剥げやすくなるから痛くないぞ。大丈夫だからな」
って。・・・そこまで考えませんでした。
砂も埃も入っていないので、それほど心配することもないと思うのだが、ものすごく痛そうな顔しながら治療してくれるので、心配になる。
ひょっとして、さとるさん、自律神経弱かったりします?
「大丈夫ですよ。痛みを、感じにくい体質らしいので、気にしないで下さい」
メイがそういうと、さとるの目が険しくなった。
「・・・だれがそんな診断しやがった?」
どこに怒るような要素があったかわからなくて、メイがしどろもどろになる。
「診断、はないですが、家とか婚家でよく言われて・・・」
向かい側に座っていたさとるが、ソファーの隣に移動してきて、至近距離から覗き込まれる。
「まさか、信じてないだろうな?」
近い、のですが。
「よ、世の中には、痛みを感じる遺伝子が欠損している人もいると聞いたことが」
「見つかった途端SF映画ができた程びっくりな疾患引っ張り出してくるんじゃねーよ。どう考えたって、他人の痛覚ごと無視した攻撃してくるクズが勝手に言ってる可能性のほうが高いだろうが」
ああ、なるほど。
自律神経の問題じゃなくて、やさしいのか。
そう思ってみていると、さとるさんの頭が下がった。
で、私の首筋に彼の唇があたっている、と思う。
やわらかさと、温かさで、じ、じわじわする!
「ふゅ」
情けない声が出て、反射的に口を抑えようと右手を動かすと、ひじの上をおさえられた。
「右手はケガだからお休みな。殴りたければ左手使って」
く、唇くっつけたまましゃべらないでほしい。
「な、殴ろうとしたわけでは」
だめだ、声が裏返った。
「じゃぁ、質問の続き。痛み感じにくいとか、信じてないよな?」
何と答えてよいかわからなくて、
「打たれても、泣かない子どもだったので」
と続けると、首筋にあたるやわらかくて温かい範囲が少し広がって、それから、ちりっとしたごく軽い痛み。
「みゃぁ」
じわじわとどきどきが広がって、目がじんじんする。
「痛がり」
「へ?」
「どっちかっていうと、痛がりだろ。ちょっとキスマークつけただけなのに泣きそうだぞ」
き、きすまーく?!
「ぴぎゃぁ」
確かに痛い、心臓がですけどね!
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