偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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15☆換金ボックス

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「おかえり、お疲れ!大丈夫?キルヤ様に虐められなかった?変なこと言われなかった?!」

ベッドをずりずりと引きずらんばかりの勢いで、サフラがたたみ掛ける。
絶対、布団の中にいなかったよな。

「暗殺者が危ないから、囲われるのが嫌なら、不妊手術をしろ、だそうです」

腹は立っても伝言は伝言だから、そのまま伝える。

「わ、あの人、ほんと言うことがあからさま・・」

「あのね、赤ちゃんって壮絶に可愛いのよ。あって間もない私ですら、サフラの赤ちゃん見たいわよ?手術なんて考えないでよ?」

「意外。危ないから、さっさと手術受けろと言うかと」

「私が?!」

私は、恋愛脳が将来の幸せな核家族幻想に繋がっていく程度には子どもなのですが?!

「損得で考えると・・」

「考えるまでもなく損!ってか、損得ではかれることじゃないから!」

私が畳みかけると、サフラは、むん、と、かわいらしい力こぶを作ってみせ、その手で首のネックレスを、ぶちっとちぎった。

「なんで壊しちゃうの?!」

サフラの行動の意味が理解できなくて、私が数秒固まっている間に、彼は買ったばかりのアイテムボックスにネックレスを入れようとしていた。

「ん?手術受けないでがんばってみようかな、って。そうすると、僕も武器がいるから」

話が飛んでいるのか、私の常識が飛んでいるのか。

「私が馬鹿なだけだったら申し訳ないけど、説明して?武器とネックレス壊すのがどう関係するの?」

「んーと、魔物の骨とか角とか、1体から1個しかとれない不可食パーツは、アイテムボックスに入れられます。で、運よくそのパーツが初登録の個体のものだと、換金できる」

「すぐに?」

「うん。大物以外は微々たる金額だし、可食部はノーカウントだし、おまけにアイテムボックス自体が高額だから庶民知識じゃないよ。国境で魔物狩る人以外知らなくて普通」

「んで、そのネックレスは、魔物由来?」

「・・・うん。友達の、形見の角笛で・・」

人格障害だから、友達いなくてねー!と豪語する、サフラが、身に着けている、友達の形見?
大事なものに決まっている。
フラッシュバックする、キルヤの言葉。
『サフラには、子どもの頃、仲良しのピクシーがいて』

「まった!!」

アイテムボックスとネックレスの間に慌てて自分の手のひらを差し込む。
慌てすぎてアイテムボックスのおいてある机に膝が激突した。

いてて

「だ、大丈夫?」

「魔物の、不可食部、で、1体から1個しか取れなくて、他の人が先にアイテムボックスにつっこんだ個体の物でなければ、OK?他に条件は?時間とか場所とか大きさとか?」

「説明書には、書いてなかったから、ないと、おもうけど」

「じゃ、いくつか先に試したいものがあるからっ、まって?あと、形見とか大事なもの、ぽんぽん壊さないで、相談しよう?!」

干しダコの残りとサバイバルグッズが詰まったカバンを引きずって来る。

えーと、釣り針は、マンティコアの尻尾の毒針だから、1体から1個だよな。
タコのトンビは?嘴部分、干す前にはずして刃物がわりに研いじゃったけど、壊しちゃダメってルールはないし。
あと、火打石に使っていたチャートとか。普通はただの放散虫の化石だけど、いくつか魔物が逃げていく匂いのやつがあったから、なんか混ざっているかもしれない。どうせいらないし、試そう。
あとは、えーと・・

見かけはミニなクーラーボックスサイズなのに、はじっこさえつっこめれば、いくらでも吸い込まれるもので。
面倒になって、自力で作った狩猟道具とか、疑似餌とか、片っ端から投げ込む。

私が食用奴隷として放たれた、格付け試験のフィールドとやらにいた時は、細々した道具がすごく貴重だったのだが。
装備のスケールから言って、この先の国境とやらでは、どう考えても原始人並みの手製道具が通用するとは思えない。

もうカバンごとつっこんでもいい気がして来た。

なぜって、カバンの過半を占めているのは、モンスターワームの一部なのだ。
大事な宝箱扱いで、捨てられずに持って来た、未選別品の袋。
なぜいまだに未選別かというと、運が悪いと、強烈な悪臭がするから。綺麗な家の室内ではちょっとね。

モンスターワームの中には、私がアジトにしていた風の洞窟を、死に場所に選ぶ個体がたまにいた。
巨大ではあるけれど、腐肉食なのか、生きている人間は襲ってこない。
新参者を自覚する私は遠巻きだったし、洞窟は広かったしで、何日か一緒に過ごした。

その個体は、数日で静かに息を引き取って、風に干からびて散っていく。
4~5日経つと、乾いて半透明に固まった袋が見えてきて、中に鮮やかな赤とか光沢色が透けて見えた。

興味本位に割いてみると、どう考えても消化しにくそうな、羽根やら骨やら鱗やら金属片やらがごろごろ出てきた。場所的には胃袋の隣。多分消化できなかった殻入れみたいな袋なのだと思う。

食用奴隷には、餌以外供給されないから、私は、硬い物とか、色付きで獲物の興味を引くものとか、要するに、道具の材料に飢えていた。
だから、これにはものすごく助かった。

おかげで生きていくのがとても楽になって、美味しいものがたくさん食べられるようになって、毎日が楽しくなった。あの洞窟を死に場所に選んでくれたモンスターワームには感謝しきれない。

で、サフラと出会う少し前に、2頭目のモンスターワームがやってきて、同じ場所で亡くなった。
サフラについて行くことにして、本拠地に戻らない覚悟をしても、前回の成功体験が忘れられなかった私は、半透明の胃袋‥の隣の、殻入れ?の口を縛って、そのままカバンにつっこんできたわけだ。毛布がわりの毛皮すら最低限にして、最優先で。

いや、重かったのなんの。
でも、それまでの私にとっては一番のお宝だったから、幸せな重さだった。

ちょっとしみじみして、なんか充分満足した。
よし、干しダコだけ出して。あとはカバンごといれちゃおう。福袋万歳。
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