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25. B・フロライン
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「ちょっとぉ!いつから王家は、おばかさん祭りになったの?200年来の緩衝地である、このありがたーい魔の森に向かって、大砲ぶちかましてきたわよ!」
シェド達がこの森にすみ着いて1年。
はじめは儚げだった精霊は、ミケの魔素を吸ってどんどん元気になり、いまや、図太いといって過言でない。
「あったまきた!耳から手突っ込んで奥歯ガタガタいわせちゃる!」
そしてもう、言うことに至っては、どこのオバサンデスカと突っ込みたくなるほど、可憐でない。
「そんなおこらないで。ほら、鉄だよー。炉を補強して、焼き芋つくろ?」
「おい、ミケ、エプロンに大砲の玉をのせて歩くな」
のんきなミケと、オバサン化した精霊と、すっかり健康になったチャドと。
危機感の欠片もなく、今が幸せでたまらないと言う顔をする彼女らを、シェドは守りたいと思う。
今はまだ、貧民街の住民を牽制したくてたまに鉄の玉を飛ばしてくるくらいだけれど、エスカレートしないとも限らないし。
力が、欲しい。いや、ないと絶望的なのに。
シェドは、自分の力が落ちていくのを感じていた。
理由は、わかっているのだ。
魔素を取り込まないといけない年代になった。ただそれだけ。
「ミケちゃんと、いちゃいちゃすればぁ?ほら、ちょっとチューってしただけで、元気もりもりよぉ?」
びくっ。
ババァ・フロラインとでも呼びたくなる面構えの精霊が、耳元でささやく。
「12になったばかりのあの残念幼児と何しろって?」
シェドは、赤い顔で精霊をにらみつける。
「だってさぁ。200年前のご先祖たちも大失敗したのよ。フロラインが殺されて、すっごく後悔して。別にそこらのカブトムシみたく所かまわずエッチしろと言ってる訳じゃなし、いいじゃない、チューでも、ギューでも」
「うるせーよ」
狂妃と呼ばれるフロラインは、もとは南の出身だったらしい。
王国では敵将としか呼ばれず、フロラインと情をかわしたとして悪役固定のフィールも南の人間で、フロラインの弟だったそうだ。
ふたりとも精霊のいとし子で、よく魔の山で遊んでいた。
やがて、フロラインはフェルニアに捕獲される。
能天気だった南の国に比べると、そのころのフェルニア王国はぎすぎすしていた。
王の魔力の劣化が始まったころで、王国の系統の違う魔素体質の女をもとめて「狩り」にきていたわけだ。
ただまぁ、フェルニアで王子をしていたルードが、そこそこ気の利く男だったこともあり、フロラインをかろうじて慰み者にならないように守ったし、彼女に恋すらした。
だがやがて、冥界と人間界のバランスがかしいで天災が起こり、それはフロラインのせいにされてしまう。
フィールは苦労してフロラインを取り戻そうとしたけれど、その時にはもう遅かった。
ルードはフロラインを守り切れなかったし、フィールは間に合わなかった。
フロラインはフェルニアに殺され、灰は念入りに地下牢に封印された。
怒り狂って攻めあがったフィールは、封印された墓を解放し、灰をまいてフロラインを弔ったのだ。
ここ魔の森は、フロラインが良く遊び、殺され、灰がまかれた場所。
精霊はフロラインの魔素に惹かれてこの地に根付いたから、断固フロラインびいきだったし、思いやら灰やら願やらを吸収しまくった結果、フロラインに似てきてしまった。
南出身のチャドもどこかでフロラインの血を引いているらしく、8年前も、シェドがへたくそな転移で飛ばしたチャドを、フロライン化した精霊が辛くもキャッチして、かくまってくれたのだ。
チャドが悪く言わないフロラインを、ミケも絶対悪く言わないから、俺らがこの森に受け入れられるのは早かった。
そして今、精霊は、フロラインを見るような目で、ミケを見ていたし、自分自身がフロラインと呼ばれるのも喜んでいる。
シェド達がこの森にすみ着いて1年。
はじめは儚げだった精霊は、ミケの魔素を吸ってどんどん元気になり、いまや、図太いといって過言でない。
「あったまきた!耳から手突っ込んで奥歯ガタガタいわせちゃる!」
そしてもう、言うことに至っては、どこのオバサンデスカと突っ込みたくなるほど、可憐でない。
「そんなおこらないで。ほら、鉄だよー。炉を補強して、焼き芋つくろ?」
「おい、ミケ、エプロンに大砲の玉をのせて歩くな」
のんきなミケと、オバサン化した精霊と、すっかり健康になったチャドと。
危機感の欠片もなく、今が幸せでたまらないと言う顔をする彼女らを、シェドは守りたいと思う。
今はまだ、貧民街の住民を牽制したくてたまに鉄の玉を飛ばしてくるくらいだけれど、エスカレートしないとも限らないし。
力が、欲しい。いや、ないと絶望的なのに。
シェドは、自分の力が落ちていくのを感じていた。
理由は、わかっているのだ。
魔素を取り込まないといけない年代になった。ただそれだけ。
「ミケちゃんと、いちゃいちゃすればぁ?ほら、ちょっとチューってしただけで、元気もりもりよぉ?」
びくっ。
ババァ・フロラインとでも呼びたくなる面構えの精霊が、耳元でささやく。
「12になったばかりのあの残念幼児と何しろって?」
シェドは、赤い顔で精霊をにらみつける。
「だってさぁ。200年前のご先祖たちも大失敗したのよ。フロラインが殺されて、すっごく後悔して。別にそこらのカブトムシみたく所かまわずエッチしろと言ってる訳じゃなし、いいじゃない、チューでも、ギューでも」
「うるせーよ」
狂妃と呼ばれるフロラインは、もとは南の出身だったらしい。
王国では敵将としか呼ばれず、フロラインと情をかわしたとして悪役固定のフィールも南の人間で、フロラインの弟だったそうだ。
ふたりとも精霊のいとし子で、よく魔の山で遊んでいた。
やがて、フロラインはフェルニアに捕獲される。
能天気だった南の国に比べると、そのころのフェルニア王国はぎすぎすしていた。
王の魔力の劣化が始まったころで、王国の系統の違う魔素体質の女をもとめて「狩り」にきていたわけだ。
ただまぁ、フェルニアで王子をしていたルードが、そこそこ気の利く男だったこともあり、フロラインをかろうじて慰み者にならないように守ったし、彼女に恋すらした。
だがやがて、冥界と人間界のバランスがかしいで天災が起こり、それはフロラインのせいにされてしまう。
フィールは苦労してフロラインを取り戻そうとしたけれど、その時にはもう遅かった。
ルードはフロラインを守り切れなかったし、フィールは間に合わなかった。
フロラインはフェルニアに殺され、灰は念入りに地下牢に封印された。
怒り狂って攻めあがったフィールは、封印された墓を解放し、灰をまいてフロラインを弔ったのだ。
ここ魔の森は、フロラインが良く遊び、殺され、灰がまかれた場所。
精霊はフロラインの魔素に惹かれてこの地に根付いたから、断固フロラインびいきだったし、思いやら灰やら願やらを吸収しまくった結果、フロラインに似てきてしまった。
南出身のチャドもどこかでフロラインの血を引いているらしく、8年前も、シェドがへたくそな転移で飛ばしたチャドを、フロライン化した精霊が辛くもキャッチして、かくまってくれたのだ。
チャドが悪く言わないフロラインを、ミケも絶対悪く言わないから、俺らがこの森に受け入れられるのは早かった。
そして今、精霊は、フロラインを見るような目で、ミケを見ていたし、自分自身がフロラインと呼ばれるのも喜んでいる。
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