ひどくされても好きでした

白い靴下の猫

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102. フレンチトースト

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うん、なんだかな。
ことが済んだベッドの中で、ソナはちょっと、混乱気味だ。
手加減、されたのだろうか。

何ともお行儀のよい、ベッドタイムだった。
決しておざなりだったわけではない。むしろ丁寧。ブランク明けのソナが気持ちよくなるまで、気長に待ってくれた。お休みの日に陽だまりで、花冠でも作っているようなのんびりさで。

おかしな格好をさせられることも、痛みを与えられることも一切なく、ゆるゆると気持ちよくされて、気遣われながら挿れられて。
途中でなんどもキスをされて、何度も顔を覗き込まれた。
彼がイクときは、男根を外に出して、ソナにかけることすらなく、紙でふき取ってしまう念の入れ様。

それをいちいち思い出して赤面する自分もどうなのだと、ソナは思う。
で、今は。ソナがかぶっている布団の端をちょこっとあけて。タイキが声をかけてくる。

「ソナ?湯船にお湯がたまったたから、先にはいってきて。めまいやふらつきがあったら、恥ずかしいとか言ってないでちゃんと俺を呼べよ?」

あ、うん、先にね。お湯、とってくれたんだ。ど、どうもありがとう?
おまけに、抱き起されて、肩にかけてもらっているのは、ローブかな?重ね重ね、お気遣いに感謝、って、なんかおかしくないか?!

いや、もちろん、お金や利害が介在するセックスがすべて、傲慢だったり、乱暴だったり、汚いものだったりするわけではないとは思う。でも、これは変だと思うのだ。

ゆ、夢かな。
ソナは、よれよれと向かった浴室の鏡を見てそう思う。
顔からも腹からも、内出血の跡はなくなっていて、健康そのものの肌の色。わずかに残ったドーランが不自然に浮いている。肩を回しても全然痛く無い。

何者だよ、あの男。御典医よりも治癒の腕が良いのでは? 
ルカの副官がここまでの実力者で、パチドは生き延びられるの?

シャワーを浴びて、湯船につかって。
ソナが戻るまでにそれほど時間はかかっていないはずだけれど、タイキは部屋に軽食をとったらしい。

「これから、戻って作戦に参加すると、晩めし夜中になるよ。なるべく消化によさそうなもの見繕ったから、少しでも食べて。あと、水分は少々無理してもとるように。トイレが近くなるとか言わずにね」

そういって、自分は浴室に歩いて行ってしまう。
ワゴンには色々のっていた。お肉とか、果物とか、得体のしれないドロドロしたものとか。

いくつか蓋をあけて覗いていたソナの目は、一点に釘付けになった。
フレンチトーストだ。甘い卵液が浸みた柔らかくて温かい厚切りパン。
ソナの母親がまだ健在で、国全体が今よりも裕福だった子どもの頃。ソナが体調を崩すと作ってくれた。

冷たいフレンチトーストは嫌だったから店で買ったことはなかったし、ソナは作ったことがなかったから、口にするのは20年位ぶりだ。
美味しいけれど、甘いけれど、嬉しいけれど。ちょっと、しんみり弱気になる味。

フレンチトーストをちまちまかじっていると、タイキがあっという間に戻って来た。
もとの服をかっちりと着込んで。

食べるものはいっぱいあるのに、わざわざソナがかじっているフレンチトーストを一口かじって笑う。
赤面禁止、と、ソナは自分に向かって唱えた。

ソナが紅茶を飲み終えるのを待って、タイキは立ち上がり、ソナの横に立つ。

「さて、仕事にもどりますか」

コクコクコク

ソナがなんども頷くと、肩を抱いてソナを立たせながら椅子をどかしてくれる。
そのまま出て行こうとするので、ソナの方が慌てた。

「ちょっと、お金!」
タイキが初めに出した財布の中のお札全部が、小さな机に置かれたままなのだ。

「ああ、しまってなかったのな」
そう言って、ソナのポケットに押し込もうとする。

「もらえるわけがないでしょうが。むしろ治癒代払います!」
抵抗すると、タイキは面白そうにソナを見た。

「そうすると、俺が売春したことに?心配しなくても、ここの部屋代と食事代はカフスでいいと言うので済んでいるよ」

「カフス?あれルビーだったわよ?!」
ソナがタイキの袖をまくると、確かにシャツについていたカフスが消えている。

「け、経理は?新生フェルニアの金庫番、まさかあんたがやってないでしょうねぇ?!とりあえず、このお札、財布に戻してちょうだい!普通に支払いしてカフス取り戻しに行くわよ!」

金銭勘定で強気に戻ったソナは、ずるずるとタイキを引きずって部屋を出て行ったのだった。
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