コンビニ行ってくるけど

美里

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コンビニ行って来るけど、なにかいる?

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 コンビ二行って来るけど、なにかいる?
 夜中だった。俺はベランダで煙草を吸っていて、その背中に凌の声を聞いた。
 「べつに。」
 いつも通り返すと、そっか、と凌もいつも通りの返事をして、部屋を出て行った。そして、それっきりだ。凌は朝になっても、次の夜になっても、その次の朝がきても、帰っては来なかった。男二人の同居生活は、そうやって終わったのだ。
 ずっと、不自然だとは思っていた。俺は別に、ゲイではない。それでも凌と寝たし凌と暮らした。それを、不自然だとは思っていた。だから、いきなりその生活が途切れたところで、驚くことはなかったのだ。それなのに、そのはずなのに、俺は驚いた。かなり。この上なく。
 コンビニ行って来るけど、なにかいる?
 その台詞の前に、喧嘩をしただとか、険悪な雰囲気があったとか、そんなこともない。ごく普通に、俺は凌と飯を食って、セックスをして、寝る前の一本をベランダでふかしていた。それなのに、凌はそのまま帰らなかった。
 いなくなった凌を捜す手段は、あった。いくらでも。まずはラインをしてみて、返事がなければ電話をかけて、この部屋に転がり込んでくる前に凌が住んでいた家を訪ねてみてもいいし、俺は凌の実家も知っていた。けれど、俺はそのどれにも手を付けず、普段通り暮らした。朝起きて、仕事に行って、帰ってきて、飯を食って、風呂に入って、寝る。その繰り返し。その繰り返しの中に、ただ凌がいない。
 凌の荷物は、そのまま部屋に残されていた。この部屋にやってきたときから荷物が少ない男で、ボストンバッグ一つにもあまるわずかな衣類だけで暮らしていたのだけれど、そのボストンバッグすら残して、凌は出て行った。
 ここへ住みつくことになったはじめの夜も、凌はふざけたみたいに笑って、身一つ、なんて言っていたけれど、その冗談すら及ばないような、本当の身一つになってここから出て行ってしまった。
 多分……、と、副流煙を気にするやつがいなくなったので、部屋の中で煙草を吸いながら、俺はぼんやり考える。
 多分、友達のところかなにかに転がり込んだのだろう。それなら荷物だってなくてもなんとかなる。
 そろそろ本格的に寒くなるから、外で煙草を吸うのはきついと思っていたところだった。
 俺は、そう自分に言い聞かせた。そう、だから、凌がこのタイミングでいなくなったのは、俺にとって都合のいいことなのだと。
  
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