コンビニ行ってくるけど

美里

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 凌とは、まあまあ古い知り合いだ。高校のクラスが一緒だった。その頃の俺は、とにかく苛々していて、今よりかなりアホだったし、煙草も馬鹿みたいに吸って、今思うと恥ずかしいけれど、派手な金髪をしていた。
 あの頃なににイラついていたのか。今考えても、明確に言葉にできない。親や学校の締め付けから来る多少の不自由はあったけれど、それはまだガキだったのだから当たり前のことだ。でも、そう、俺はその、自分がガキだということを、認めたくなかったのかもしれない。
 凌はクラスの中で、珍しく髪も染めていないし、煙草も吸わないし、真面目にノートを取り、課題をこなすレアな生徒だった。だから、あのアホ校に、素行が悪いとか不真面目だとか、そういう理由なしに単に成績が悪すぎて落っこちてきたのだろう。凌の頭が悪かったとは思わない。ただ、あいつの家は勉強をする環境ではなかった。俺はそのことを、たまたま知った。
 校舎裏に、じめじめした小さな中庭があった。校舎と隣に立つ家との影になって日差しがまるで入らない陰気な場所で、更にそこに生えている柿の木で女生徒が首を吊ったとかいう噂もあって、ひとが近づかないところだった。俺は、それを幸いなことにして、そこでよく煙草を吸いながら授業をさぼっていた。
 あれは、高1の終わり、まだ寒い春休み前の午後だった。校庭からは、まるでやる気のない体育の掛け声が聞こえ、俺はぼんやりと座り込んで、煙草を吸いながら、確かなにか食っていた。魚肉ソーセージだったか、昼飯の代わりだ。そうやってじっとしていると、指がかじかむくらいの陽気だった。
 俺が何本目かの煙草に火をつけたとき、誰かが中庭に入ってきた。俺は、特に理由もないのだけれど、その人影から見つからないように校舎の壁に背中を押し付け、校舎の影に入った。その人影が、ひとりでなにやら喋り出して、俺はその声でそれが凌だと気が付いた。クラスは同じでも、そもそも俺がろくに教室にいなかったこともあって、凌との関係はほぼないと言ってもよかった。声も、辛うじて覚えていたくらいだ。
 「俺はいいよ。中退しても。でも、あかりの制服くらい買ってやれよ。中学生だぞ。どうするんだよ。」
 凌は、確かにそう言った。俺は凌がひとりで喋っているのではなく、電話をしているのだと気が付いた。はじめから隠れたりしなければよかったものを、うっかり身を隠してしまったせいで、俺は出ていくに行けず、その場で小さくなっているしかなかった。
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