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悠ちゃんは、やさしい。いつだって、誰にだって、やさしい。そしてその中でも特に、私にやさしい。それはつきつめると、本当の兄妹じゃないからだろう、と思うことがある。本当の兄妹だったら全然気を使わないようなところまで気を使っているからだと。そうでないと、兄妹ではいられないのだと。私には、本当の兄弟というものがいたことがないから、断言はできないけれど。でも、私と悠ちゃんには、つながっているためになにかが必要なのだとも思う。本当の兄妹だったら、必要がないなにかが。
家につくと、悠ちゃんはもう先に帰っていて、リビングのテーブルで小難しい顔をして、数学の参考書を広げていた。
「悠ちゃん。」
声をかけると悠ちゃんは、ちょっと笑って顔を上げ、お帰り、と言った。そしてすぐに参考書にまた視線を戻す。
「手、洗ってこいよ。それから、ちょっと問題作ってみたから、解いてみて。」
「作ったって、悠ちゃんが?」
「うん。」
「悠ちゃんが作ったの?」
「中学の単元のだぞ。俺、塾講。多分明日美は、これくらい遡って一回見てみた方がいいから。」
「はぁい。」
軽く答えた私は、洗面所に手を洗いに行った。洗面台の鏡に映る私は、口元が緩んでいた。いろいろこちゃこちゃ考えてみても、結局私は嬉しいのだ。悠ちゃんが、特に私に優しいことが。この立場に永遠にいられるとは限らないと、分かってはいても。
手を洗い終わって、悠ちゃんに勉強を見てもらってしばらくすると、お母さんが起きてきた。
「また悠一に勉強見てもらってるの?」
「うん。中学の単元らしいけど、私、こんなのやった覚えない。」
「ほんとに明日美は数学がだめねー。」
まだ髪もぼさぼさで、素顔のままのお母さんは、私たちの食事を作りに台所に入って行く。
「ねえ、今日はもう少し寝てたら? 早く帰ってきたし、悠ちゃんもいるし、なんか適当に作って食べとくから。」
声を大きくして台所に呼びかけると、お母さんは台所のドアから顔だけ覗かせて、からかうみたいにちょっと唇を笑わせる。
「いいのよ。明日美は勉強してなさい。それが明日美の仕事で、ご飯作るのはお母さんの仕事。」
そして、なにか言いかけた悠ちゃんのことも、お母さんは視線だけで軽く黙らせてしまう。
「悠一も、明日美教えたってバイト代は出ないんだから、ご飯くらい作ってもらっとけばいいのよ。」
はぁい、と、そろって返事をした私と悠ちゃんは、顔を見合わせて肩をすくめあった後、勉強の続きを始めた。
家につくと、悠ちゃんはもう先に帰っていて、リビングのテーブルで小難しい顔をして、数学の参考書を広げていた。
「悠ちゃん。」
声をかけると悠ちゃんは、ちょっと笑って顔を上げ、お帰り、と言った。そしてすぐに参考書にまた視線を戻す。
「手、洗ってこいよ。それから、ちょっと問題作ってみたから、解いてみて。」
「作ったって、悠ちゃんが?」
「うん。」
「悠ちゃんが作ったの?」
「中学の単元のだぞ。俺、塾講。多分明日美は、これくらい遡って一回見てみた方がいいから。」
「はぁい。」
軽く答えた私は、洗面所に手を洗いに行った。洗面台の鏡に映る私は、口元が緩んでいた。いろいろこちゃこちゃ考えてみても、結局私は嬉しいのだ。悠ちゃんが、特に私に優しいことが。この立場に永遠にいられるとは限らないと、分かってはいても。
手を洗い終わって、悠ちゃんに勉強を見てもらってしばらくすると、お母さんが起きてきた。
「また悠一に勉強見てもらってるの?」
「うん。中学の単元らしいけど、私、こんなのやった覚えない。」
「ほんとに明日美は数学がだめねー。」
まだ髪もぼさぼさで、素顔のままのお母さんは、私たちの食事を作りに台所に入って行く。
「ねえ、今日はもう少し寝てたら? 早く帰ってきたし、悠ちゃんもいるし、なんか適当に作って食べとくから。」
声を大きくして台所に呼びかけると、お母さんは台所のドアから顔だけ覗かせて、からかうみたいにちょっと唇を笑わせる。
「いいのよ。明日美は勉強してなさい。それが明日美の仕事で、ご飯作るのはお母さんの仕事。」
そして、なにか言いかけた悠ちゃんのことも、お母さんは視線だけで軽く黙らせてしまう。
「悠一も、明日美教えたってバイト代は出ないんだから、ご飯くらい作ってもらっとけばいいのよ。」
はぁい、と、そろって返事をした私と悠ちゃんは、顔を見合わせて肩をすくめあった後、勉強の続きを始めた。
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