15 / 25
15
しおりを挟む
散々飲んで、ルルちゃんの部屋を出たのはもう夜が明けてからだった。私の始発の時間に合わせて、ミシマも部屋を出た。私は、それがちょっと意外だった。だって、ミシマはルルちゃんと二人きりになりたいだろうから。
「駅?」
ルルちゃんに見送られて部屋を出、アパートの前の道に降りると、ミシマがそう端的に首を傾げた。
「うん。」
頷いた私の前に立って、ミシマが歩き出す。送ってくれるらしい。
「酒、強いのな。」
ぼそりとミシマが言った。
「そうかな?」
「強い。結構。」
バーテンのミシマが言うんだから、そうなんだろう、私はなんとなく誇らしい気分になって、まあね、と返した。ミシマは肩越しに振りかえって、微かに苦笑した。
「あんた、変わってる。」
「どこが?」
「なんとなく、全体。子供みたいなのに、酒強いし、ルルのことも全然平気だし。」
「平気って、なにが?」
「レズ。大抵は、だめだぞ。」
「だめって?」
「気味悪がって、逃げる。」
「……そんなこと、」
「あるよ。」
ずっとルルちゃんを見て来たミシマが言うんだから、そうなのかもしれない。私は、曖昧に頷いた。
「こども、だからかな。」
「ん?」
「私、こどもだからかも。ひとを好きになったこととか全然なくて、気味悪がるとか、そういうのもよく分かんないのかも。」
ミシマを見ていると思う。私は本当は、ひとを好きになったことなんか全然なくて、この前の失恋だって、大した痛手ではなくて、ミシマが傷ついたり苦しんだりした分の、傷も苦しみも知らない私は、全くのこどもなのではないかと。
ミシマの大きな手が、不意に私の頭の上に乗っかり、くしゃりと髪を撫でた。それは、本物のこどもにするみたいな仕草だった。でも、私がちっと嫌な気分にならなかったのは、それが親しみの表れみたいな感じがしたからかもしれない。
「いいことだよ。ずっと、子供でいろよ。」
見上げたきれいな横顔は、静かに微笑んでいた。
私とミシマの間には、やっぱり目に見えないルルちゃんがいて、その分だけ会話が円滑みたいだった。
ルルちゃんの部屋から駅までは、5分くらいしかかからない。ミシマは駅までつくと、じゃあ、と、軽く片手を上げた。そして、そのまま帰ってしまうのかと思っていると、律儀に私が改札をくぐり、見えなくなるまで見送ってくれた。私は時々振り返って手を振った。ミシマも振り返してくれた。私は、やっぱりこのひとのことが好きだ、と思った。
「駅?」
ルルちゃんに見送られて部屋を出、アパートの前の道に降りると、ミシマがそう端的に首を傾げた。
「うん。」
頷いた私の前に立って、ミシマが歩き出す。送ってくれるらしい。
「酒、強いのな。」
ぼそりとミシマが言った。
「そうかな?」
「強い。結構。」
バーテンのミシマが言うんだから、そうなんだろう、私はなんとなく誇らしい気分になって、まあね、と返した。ミシマは肩越しに振りかえって、微かに苦笑した。
「あんた、変わってる。」
「どこが?」
「なんとなく、全体。子供みたいなのに、酒強いし、ルルのことも全然平気だし。」
「平気って、なにが?」
「レズ。大抵は、だめだぞ。」
「だめって?」
「気味悪がって、逃げる。」
「……そんなこと、」
「あるよ。」
ずっとルルちゃんを見て来たミシマが言うんだから、そうなのかもしれない。私は、曖昧に頷いた。
「こども、だからかな。」
「ん?」
「私、こどもだからかも。ひとを好きになったこととか全然なくて、気味悪がるとか、そういうのもよく分かんないのかも。」
ミシマを見ていると思う。私は本当は、ひとを好きになったことなんか全然なくて、この前の失恋だって、大した痛手ではなくて、ミシマが傷ついたり苦しんだりした分の、傷も苦しみも知らない私は、全くのこどもなのではないかと。
ミシマの大きな手が、不意に私の頭の上に乗っかり、くしゃりと髪を撫でた。それは、本物のこどもにするみたいな仕草だった。でも、私がちっと嫌な気分にならなかったのは、それが親しみの表れみたいな感じがしたからかもしれない。
「いいことだよ。ずっと、子供でいろよ。」
見上げたきれいな横顔は、静かに微笑んでいた。
私とミシマの間には、やっぱり目に見えないルルちゃんがいて、その分だけ会話が円滑みたいだった。
ルルちゃんの部屋から駅までは、5分くらいしかかからない。ミシマは駅までつくと、じゃあ、と、軽く片手を上げた。そして、そのまま帰ってしまうのかと思っていると、律儀に私が改札をくぐり、見えなくなるまで見送ってくれた。私は時々振り返って手を振った。ミシマも振り返してくれた。私は、やっぱりこのひとのことが好きだ、と思った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる