16 / 25
16
しおりを挟む
ルルちゃんが泣いたのは、夏祭りの夜だった。やっぱりうんざりするような熱帯夜だったけれど、私とルルちゃんはすっかりはしゃいだ、その後だった。
夏の真ん中の夜、ルルちゃんの部屋に一回集まって、その後、私とミシマとルルちゃんは、近所の神社でやっている夏祭りに出かけた。ルルちゃんは、浴衣をワンピースに仕立て直したみたいな、きれいな水色のサマードレスを見ていた。私はいつも通りのTシャツジーパンで、ミシマもいつもと変わらない黒っぽい格好をしていた。
「なに食べよっかなー。つきこさんは? なに食べたいですか?」
食べるの大好きなルルちゃんは、いつも食べ物の話ばかりする。幾度か重ねた三人の夜の中で、私はそのことにもすっかり慣れていて、いっつもルルちゃんは食べ物ばかりね、と、彼女をからかった。
「だって、たこやきとか、やきそばとか、チョコバナナとか、りんご飴とか……、」
数え上げていくルルちゃんを笑って見ながら、私は隣を歩くミシマを見上げた。ミシマは、暑いのも人ごみも嫌いだ。だからちょっと不機嫌で、その横顔はいつもよりいささか硬かった。
「ミシマは? ミシマはなに食べる?」
るんるんのルルちゃんが訊いても、ミシマは無視を決め込み、暑いな、と呟いて真っ黒いだけの夜空を見上げた。
神社のお祭りは、そこまで規模が大きい訳じゃないけれど、櫓が組まれて、周りには盆踊りの輪ができて、参道には出店が肩を並べていた。ぎゅうぎゅうの人ごみにミシマはもちろん眉を寄せたけれど、私とルルちゃんはかなりテンションが上がった。
手始めにヨーヨー釣りをして気分を高めようとしたものの、私もルルちゃんもひとつもヨーヨーを捕まえられなかった。それなのに、私たちに無理やりこよりを握らされて釣りに出されたミシマが、あっさり三つ、水風船を捕まえた。水色、白、ピンク。ルルちゃんはピンク、私は白、ミシマは水色の水風船をとり、私とルルちゃんは、じゃかじゃかと水風船をついて遊んだ。
「器用だね、ミシマは。」
私が尊敬の念を持っていうと、ミシマは首を傾げ、そうでもない、と答えた。私はいつものミシマの様子を思い浮かべた。いつの様子を思い浮かべてみても、ミシマはそこそこ器用だった。それなのになんとなく不器用みたいな気がするのは、肝心な、ルルちゃんへの態度がいつも不器用だからだろう。私は、笑いながら泣きたくなった。
夏の真ん中の夜、ルルちゃんの部屋に一回集まって、その後、私とミシマとルルちゃんは、近所の神社でやっている夏祭りに出かけた。ルルちゃんは、浴衣をワンピースに仕立て直したみたいな、きれいな水色のサマードレスを見ていた。私はいつも通りのTシャツジーパンで、ミシマもいつもと変わらない黒っぽい格好をしていた。
「なに食べよっかなー。つきこさんは? なに食べたいですか?」
食べるの大好きなルルちゃんは、いつも食べ物の話ばかりする。幾度か重ねた三人の夜の中で、私はそのことにもすっかり慣れていて、いっつもルルちゃんは食べ物ばかりね、と、彼女をからかった。
「だって、たこやきとか、やきそばとか、チョコバナナとか、りんご飴とか……、」
数え上げていくルルちゃんを笑って見ながら、私は隣を歩くミシマを見上げた。ミシマは、暑いのも人ごみも嫌いだ。だからちょっと不機嫌で、その横顔はいつもよりいささか硬かった。
「ミシマは? ミシマはなに食べる?」
るんるんのルルちゃんが訊いても、ミシマは無視を決め込み、暑いな、と呟いて真っ黒いだけの夜空を見上げた。
神社のお祭りは、そこまで規模が大きい訳じゃないけれど、櫓が組まれて、周りには盆踊りの輪ができて、参道には出店が肩を並べていた。ぎゅうぎゅうの人ごみにミシマはもちろん眉を寄せたけれど、私とルルちゃんはかなりテンションが上がった。
手始めにヨーヨー釣りをして気分を高めようとしたものの、私もルルちゃんもひとつもヨーヨーを捕まえられなかった。それなのに、私たちに無理やりこよりを握らされて釣りに出されたミシマが、あっさり三つ、水風船を捕まえた。水色、白、ピンク。ルルちゃんはピンク、私は白、ミシマは水色の水風船をとり、私とルルちゃんは、じゃかじゃかと水風船をついて遊んだ。
「器用だね、ミシマは。」
私が尊敬の念を持っていうと、ミシマは首を傾げ、そうでもない、と答えた。私はいつものミシマの様子を思い浮かべた。いつの様子を思い浮かべてみても、ミシマはそこそこ器用だった。それなのになんとなく不器用みたいな気がするのは、肝心な、ルルちゃんへの態度がいつも不器用だからだろう。私は、笑いながら泣きたくなった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる