ルルちゃん

美里

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 ヨーヨー釣りの後は、ひとごみにまぎれて盆踊りを少し見学していたのだが、要領を掴んだらしきルルちゃんが、いきなり私の手を引っ張って踊りの輪の中に突入していった。全然要領を掴んでいない、というか、自分が踊るつもりはなかったので、そんなに真面目に振付を見ていなかった私は大層慌てたのだけれど、ルルちゃんは平気でさらさら盆踊りを踊った。私は一瞬逃げ出そうかとも思ったけれど、夏祭りの夜だ、そのまま見よう見まねで踊りだした。ミシマもおいでよ、と人ごみの中でもひときわ背が高いミシマの方を見ると、ミシマは水色の水風船をぶら下げたまま、じっとルルちゃんを見つめていた。ルルちゃんの長いオレンジ色の髪が弾んで光る、その一本一本さえ見逃さないように、じっと。
 「楽しいですね、つきこさん。」
 ミシマに見られていることには気が付いてすらいないのだろう、満面の笑みのルルちゃんが、くるりと回ってから私の顔を覗き込んだ。サマードレスの裾が、夏の夜風をはらんでふわふわと翻る。
 多分ルルちゃんは、ずっとミシマと一緒にいて、ずっとその真剣な眼差しの中にいて、感覚が麻痺してしまっているのだろう。そうじゃなければ、あんなにひたむきな眼差しを向けられて、無関心ではいられない。
 「つきこさん?」
 不思議そうに、ルルちゃんが私を呼ぶ。私は、曖昧に手を振り上げたり、半端に回ったりしながら、じっとうつむいてルルちゃんの視線を避けていた。ルルちゃんを嫌いには、なりたくなかった。
 そんな私をしばらく見ていたルルちゃんが、不意に踊りの輪から駆け出して行った。闇にさらわれるみたいに、いきなり。
 「ルルちゃん!?」
 「ルル!?」
 びっくりした私は、その場に立ち止まって、ルルちゃんの背中が暗い境内の奥の方へ駆けて行くのを目で追った。背中に、後ろで踊っていたひとがぶつかって、はっと我に返る。その、私が我に返る前に、ミシマはルルちゃんを追って駆け出していた。それは、確かな歩調で。踊りの輪から外れた私も、ルルちゃんとミシマを追って走った。走りながらも、自分が誰を追っているのか分からなかった。ルルちゃんなのか、ミシマなのか。熱帯夜は、私の輪郭まであいまいにしていくみたいだった。
 
 
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