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青井(父親?)1
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慣れている、と、夕佳は自分に言い聞かせた。
慣れている。ママがやたらめったら色んなものを拾ってくることには、とうにすっかり慣れている。
石ころや花の種にはじまって、小鳥や子猫、最近では人間の赤ん坊まで、酒を飲むと小夜はやたらめったら目についたものを拾っては持ち帰って来る。
だから慣れている。それは確かだけれど、まさか成人男性まで拾ってくるとは思わなかった。
「夕佳のパパよ。」
その上小夜はそう言って、拾ってきた成人男性を夕佳に見せびらかした。
「ああ、そう。」
とだけ夕佳は応えた。それ以外の反応を思いつかなかった。
成人男性の後始末はどうしたらいいのだろう。子猫や子犬は飼い主をさがすポスターを作って貼ったし、赤ちゃんの時は警察に連絡した。しかしそれが成人男性となると、いったいどうしたらいいのだろうか。
小夜が拾ってくるものの始末をするのは夕佳ともう決まっているようなものだったから、彼女はそんな風に頭を悩ませながら、目の前に立つ男を眺めた。
背の高い男だった。仕立てのよさそうなネイビーのジャケットを着て、長い髪を一つにくくっている。顔立ちは端正で、道端で女に拾われるほど人生の道を踏み誤ることなどなさそうな面構えに見えた。
人は見た目に寄らない。
斉藤夕佳、13歳にしての教訓だった。
「ねえ、嬉しくないの?」
小夜は満面の笑みで、拾ってきた男の襟首をつかむようにして、ずいと夕佳の方に差し出す。
玄関のたたきに立って二人を出迎えていた夕佳は、曖昧に首を振って、とにかく後ずさるようにして部屋へあがった。
嬉しいもなにも、父親なんて顔も見たことはない。それで13歳にもなっていきなり、初対面の男を父親だと連れてこられて喜べる人間がどこにいるのか。
「青井慎一です。よろしく。」
男は襟首をつかまれたまま、小夜と同じく満面の笑みを浮かべていた。
サイアクの酔っ払い。
一組の男女から漂う濃厚な酒の匂いに眉を寄せ、夕佳は自室に引きこもろうと母に背を向けた。
すると母が夕佳の腕を掴んで言った。
「ねえ、嬉しくない?」
嬉しいわけないじゃん、と、そう言うつもりだった。言葉はもう唇のすぐ内側まで来ていた。それなのに夕佳が言葉を飲み込んだのは、母の声が本気の響きをしたからだ。母は、明らかに本気で夕佳を喜ばせようとしていた。まさか、この男が本当に夕佳の父親でもあるまいに。
慣れてる。
自分に言い聞かせる。
母がサイアクの酔っ払いなことにも、色んなものを拾ってくることにも、本気で夕佳を喜ばせようとすることにも、慣れている。
それなのになぜだか瞼の裏側までじわりと涙の気配が滲んで、夕佳は慌てて目を瞬いた。
慣れている。ママがやたらめったら色んなものを拾ってくることには、とうにすっかり慣れている。
石ころや花の種にはじまって、小鳥や子猫、最近では人間の赤ん坊まで、酒を飲むと小夜はやたらめったら目についたものを拾っては持ち帰って来る。
だから慣れている。それは確かだけれど、まさか成人男性まで拾ってくるとは思わなかった。
「夕佳のパパよ。」
その上小夜はそう言って、拾ってきた成人男性を夕佳に見せびらかした。
「ああ、そう。」
とだけ夕佳は応えた。それ以外の反応を思いつかなかった。
成人男性の後始末はどうしたらいいのだろう。子猫や子犬は飼い主をさがすポスターを作って貼ったし、赤ちゃんの時は警察に連絡した。しかしそれが成人男性となると、いったいどうしたらいいのだろうか。
小夜が拾ってくるものの始末をするのは夕佳ともう決まっているようなものだったから、彼女はそんな風に頭を悩ませながら、目の前に立つ男を眺めた。
背の高い男だった。仕立てのよさそうなネイビーのジャケットを着て、長い髪を一つにくくっている。顔立ちは端正で、道端で女に拾われるほど人生の道を踏み誤ることなどなさそうな面構えに見えた。
人は見た目に寄らない。
斉藤夕佳、13歳にしての教訓だった。
「ねえ、嬉しくないの?」
小夜は満面の笑みで、拾ってきた男の襟首をつかむようにして、ずいと夕佳の方に差し出す。
玄関のたたきに立って二人を出迎えていた夕佳は、曖昧に首を振って、とにかく後ずさるようにして部屋へあがった。
嬉しいもなにも、父親なんて顔も見たことはない。それで13歳にもなっていきなり、初対面の男を父親だと連れてこられて喜べる人間がどこにいるのか。
「青井慎一です。よろしく。」
男は襟首をつかまれたまま、小夜と同じく満面の笑みを浮かべていた。
サイアクの酔っ払い。
一組の男女から漂う濃厚な酒の匂いに眉を寄せ、夕佳は自室に引きこもろうと母に背を向けた。
すると母が夕佳の腕を掴んで言った。
「ねえ、嬉しくない?」
嬉しいわけないじゃん、と、そう言うつもりだった。言葉はもう唇のすぐ内側まで来ていた。それなのに夕佳が言葉を飲み込んだのは、母の声が本気の響きをしたからだ。母は、明らかに本気で夕佳を喜ばせようとしていた。まさか、この男が本当に夕佳の父親でもあるまいに。
慣れてる。
自分に言い聞かせる。
母がサイアクの酔っ払いなことにも、色んなものを拾ってくることにも、本気で夕佳を喜ばせようとすることにも、慣れている。
それなのになぜだか瞼の裏側までじわりと涙の気配が滲んで、夕佳は慌てて目を瞬いた。
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