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どう行動していいのかが分からずに、リビングでしばらくじっとしていたソラが、おずおずと寝室に入っていくと、ユウはとうにソラの寝床を整え終わって、自分のベッドに腰掛けて文庫本を開いていた。その文庫本を閉じて膝先に置くと、ソラの目を見て微かに微笑む。
「そこで寝て。ちょっと下、硬いかもしれないけど。」
示されたのは、ベッドのすぐ隣。厚い布団が床に敷かれ、その上に大判のバスタオルが布団代わりに用意されていた。
今日は、泊めてくれるということだろうか。
ソラは、リビングと寝室を隔てるドアのところに突っ立って、即席の寝床とユウとを見比べていた。これまでの人生で、ひとに親切にされたことがなかったので、どんな反応をしていいのかも、どこまで甘えればいいのかも、全然分からなかった。そんなソラを見て、ユウはわずかに眉を寄せた。それはなにかを悼むみたいに。
「床が硬かったら、明日、マットレスを買えばいい。」
明日。その単語にアクセントを置いて、ユウははっきりとそう言った。
明日?
ソラは、唖然としてその言葉を繰り返した。
そう、明日、と、ユウが平気な顔をして頷く。
「行くとこ、ないんでしょ?」
「……はい。」
「なら。」
なら、なんなのか。ユウはそれ以上なにも言わずに、するりとベッドに潜り込んだ。
「電気、消すよ。」
「……はい。」
ソラも、ぎこちない動作を自覚しながら寝床につく。
暗くなった部屋の天井を見上げながら、もしかしたら、ユウは12歳くらいのこどもに性的な欲求を覚えるタイプの人間なのかもしれない、そう思い到って、しばらく身を固くしていると、ベッドから安らかな寝息が聞こえてきた。なんて無防備な人だろう、と、ソラは驚く。ソラがユウに危害を加え、金目のものを盗っていく可能性だってあるのに。
なんだか心配だ、このひと。
ソラは、そんなふうに思った。おそらくそれは、生まれてはじめて覚えた、庇護欲にも似た感情だった。男娼みたいだけど、客を振り払えずに家の近くまで来てしまっていたし、簡単に浮浪児でしかないソラを家に入れてしまうし、このひとは、なんだかとても、心配だ。
心配心配、と、しばらく心の中で呟いていたけれど、やがて疲れ切っていたソラもすとんと眠りに落ちた。まともな寝床で寝るのは、ずいぶん久しぶりだったのだ。
「そこで寝て。ちょっと下、硬いかもしれないけど。」
示されたのは、ベッドのすぐ隣。厚い布団が床に敷かれ、その上に大判のバスタオルが布団代わりに用意されていた。
今日は、泊めてくれるということだろうか。
ソラは、リビングと寝室を隔てるドアのところに突っ立って、即席の寝床とユウとを見比べていた。これまでの人生で、ひとに親切にされたことがなかったので、どんな反応をしていいのかも、どこまで甘えればいいのかも、全然分からなかった。そんなソラを見て、ユウはわずかに眉を寄せた。それはなにかを悼むみたいに。
「床が硬かったら、明日、マットレスを買えばいい。」
明日。その単語にアクセントを置いて、ユウははっきりとそう言った。
明日?
ソラは、唖然としてその言葉を繰り返した。
そう、明日、と、ユウが平気な顔をして頷く。
「行くとこ、ないんでしょ?」
「……はい。」
「なら。」
なら、なんなのか。ユウはそれ以上なにも言わずに、するりとベッドに潜り込んだ。
「電気、消すよ。」
「……はい。」
ソラも、ぎこちない動作を自覚しながら寝床につく。
暗くなった部屋の天井を見上げながら、もしかしたら、ユウは12歳くらいのこどもに性的な欲求を覚えるタイプの人間なのかもしれない、そう思い到って、しばらく身を固くしていると、ベッドから安らかな寝息が聞こえてきた。なんて無防備な人だろう、と、ソラは驚く。ソラがユウに危害を加え、金目のものを盗っていく可能性だってあるのに。
なんだか心配だ、このひと。
ソラは、そんなふうに思った。おそらくそれは、生まれてはじめて覚えた、庇護欲にも似た感情だった。男娼みたいだけど、客を振り払えずに家の近くまで来てしまっていたし、簡単に浮浪児でしかないソラを家に入れてしまうし、このひとは、なんだかとても、心配だ。
心配心配、と、しばらく心の中で呟いていたけれど、やがて疲れ切っていたソラもすとんと眠りに落ちた。まともな寝床で寝るのは、ずいぶん久しぶりだったのだ。
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