ふたなりのままでいようと思ったら、知略の王子と不敵なる王から、狙われてしまった私

sierra

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第二章

デイヴィッド(改)

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 グリフィスはヘルマプロディトスの国王と、デイヴィッドに書状をしたためた。アーネストは`自分の書状だけで充分だ ‘ と言ってくれはしたが、やはり自分の後任をデイヴィッドにお願いしたいと打診するのだから、自らもお願いするのが筋だろう。
 ビジネスの世界に身を置いていると、こういった行為が後々の人間関係を円滑にしてくれることを、しみじみと感じることが多いからだ。

 あっという間に返ってきた返事は、国王も、デイヴィッドも快諾との内容であった。
そして驚くべきは、来週にはもうデイヴィッド本人がやってくるということである。

「デイヴィッド・・・来るのが早過ぎない? ヘルマプロディトスからアクエリオス到着までの日数と照らし合わせたんだけど、書状を受け取ってから一週間であちらを出た計算になるわ」
「新しい姿絵が効いたようですな」
「・・・プリシラの?」
「お気づきになりましたか」

 アーネストがクリスに笑顔を向ける。

「デイヴィッドへの書状にプリシラの姿絵を無理に入れて、ぱんぱんになっているんですもの。いやでも気が付くわ」
「まあ、それがなくてもこの話はデイヴィッド様にとって魅力的だと思いますよ」
「それは、分かるんだけど・・・プリシラって可愛くてとてもいい子だから、無理に迫ったりしないか心配なの」
「デイヴィッド様はそういう方ではない事をご存知でしょう?」
「そうなんだけど・・・グリフィスと似ているところがあるから、ちょっと心配で」
「お二方とも自信に満ち溢れていますな。そして少々強引なところがある」

「そう、そこが心配なの」
「大丈夫ですよ。プリシラ様は芯がお強い方です。いやな時はちゃんとノーと言えると思いますよ?」
「そうね・・・そんなに心配することはないかもしれないわね」

 デイヴィッド到着日、グリフィスとクリスにプリシラは、出迎えの為に港まで出向いていた。

「あ、あの船だわ!」
 
 クリスが嬉しそうに手を振る。甲板からデイヴィッドと思われる人物が大きく手を振り替えしてきた。船を降りて、真っ直ぐにクリス達に向かってくる。

「デイヴィッド!」
「クリス!」 

 クリスは久しぶりに会う従兄の胸に飛び込んだ。デイヴィッドは180cmはあるクリスをくるくると回す。驚いたクリスがしがみつくと、笑って抱きしめられ、ハグされた。

「久しぶりだなクリス! 何か華奢になったんじゃないか?」

 デイヴィッドはグリフィスと同じで2m近くあり、普段から鍛えていて引き締まった身体つきをしている。

「いつまで抱きしめている?」

 クリスはグリフィスによってべりっと引き剥がされた。

「グリフィス! お前の前だからわざとに決まっているじゃないか!」
「ご挨拶だな・・・」

 そう言いつつ、グリフィスも笑って手を差し出した。固い握手を交わしている途中で、デイヴィッドがきょろきょろと辺りを見回す。

「それで、プリシラ王女はどちらに?」

 プリシラは自分の名前が出て、グリフィスの背後から恥ずかしそうに出てきた。膝を軽く折った後に、右手を可憐な仕草で差し出す。

「はじめまして、デイヴィッド様。どうぞプリシラとお呼びください」

 デイヴィッドは屈んでその手の甲にくちづけた。

「では私の事もデイヴィッドと」

 プリシラが恥じらいながら頷くのを、会えた喜びも露わに彼は見惚れている。

(そういえば、デイヴィッドって昔から考えている事が顔に出るんだった・・・これでグリフィスの後任が務まるのかしら・・・?)

「大丈夫だ。肝心な時にはポーカーフェイスになれる奴だから。顔に出ると思わせといて相手を霍乱する事もできる」
「そうなの――って、私の考えを読み取らないで!」
「声に出して言っているのと同じくらい読めるぞ・・・いいじゃないか。そこが君のいいところなんだから」

 膨らましているクリスの頬にくちづける。

「あれが・・・グリフィス・・・?」
「はい、特に兄がクリスにぞっこんなんです」
「さっきべりっと剥がされた時の行動といい、信じられないな。かつてのグリフィスは自分の彼女が他の男と引っ付いていても、全然興味を示さなかった。それがあんな独占欲も露に・・・」

「これからもっと驚きますよ。私も女性に対してあんなに甘い兄は初めてです」
「サルマキス在学時からの想い人だからか・・・」
「どういうことです?」
「知らない?」
「はい」 
「それでは私でよろしければ、一から教えて差し上げます」
 
人懐っこい笑顔に、プリシラは瞬きをする。
(この人・・・話しやすい・・・それにクリスに雰囲気が似ているせいか、安心する)

「その話は禁止だ――」
「グリフィス、聞いてたのか? いいじゃないか、きっとクリスも聞きたがるぞ」

 クリスがこくこくと頷いている。

「いや、御免こうむる」

 デイヴィッドが二人に向かって小声で話す。

「グリフィスのいないところで――」
「そこ! 聞こえてるぞ!」 

 グリフィスに急き立てられて、三人は馬車に乗り込んだ。
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