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72 ダニエルがエリカの顎を掴み、優しく上向かせた
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エリカを抱いたまま、足早に進むダニエルの横にヨハンがつく。
「侍医を待機させています」
「必要ない」
ダニエルは顎を少し上げて、ヨハンに頬の傷を見せた。
「これくらいの傷、自分で手当てできる」
「そう仰ると思いました。控室に薬篭が用意してあります。モーガンはどういたしましょう?」
「牢に放り込んでおけ。追って沙汰する」
「かしこまりました。決勝戦は続行しますか? それとも後日に…」
「続行だ。観客とオズワルドが待っている。開始時間だけ遅らせてくれ……声を掛けるまで、誰も部屋に入れないように」
「承知いたしました」
オズワルドは時期騎士団長だけあって、決勝戦まで勝ち進んでいた。
歩く間も、廊下に立つ人々から二人に拍手がおくられる。
控室の前にいる従者が、扉を開けて待っていた。
バタン――
ダニエルが入るとともに、後ろで扉が閉められる。
ソファまで歩みを進め、エリカをそうっと中央に下ろした。
自身は前に跪き、エリカの身体を調べ始める。
散々泣いたエリカはボーっとダニエルのすがままになっていた。
「…何をしているの……?」
「傷や、挫いている箇所がないかを確認している。……ん、大丈夫だ」
ハッと我に返ったエリカが、彼の顔を両手で挟んだ。
「頬の傷は!?」
「平気だ。大したことはない」
「よく見せて! ああ、ほんとね。良かった……でも髪の毛が……」
「丁度いい。鬱陶しかったんだ」
「無理しないで。髪を切られて悲しいって言っていいのよ……あっ、」
ダニエルは片手をエリカの腰に回し、抱き寄せる。
「二度と、もう二度とあんな真似はしないでくれ……! 君に何かあったら俺はっ、」
「ダニエル……」
ダニエルの身体はその時を思い出したのか、震えていた。
おずおずと……エリカもダニエルの背中に腕を回し、跪いたダニエルの腕の中にすっぽりとおさまる。
「ごめんなさい……」
もし自分がダニエルだったら、生きた心地がしなかっただろう。
婚約者が現役の騎士(しかも手練れ)に飛び掛かっていった上に、”自分を刺せ”と挑発したのだ。
(……………私だったら、こんな婚約者は嫌だなぁ……あ、でも婚約は解消するのだし、これはこれでいいのかもしれない)
エリカの身体に回された彼の腕に力がこもった。
(できれば抱き締めたりしないでほしいな。解消される覚悟はできているし、百合ルートも進めてはいけないと分かっているけど……好きだから、切なくなっちゃう)
その気持ちが伝わったのか、腕を緩めたダニエルにエリカはほっとする。
ダニエルがエリカの顎を掴み、優しく上向かせた。
「愛している――」
「侍医を待機させています」
「必要ない」
ダニエルは顎を少し上げて、ヨハンに頬の傷を見せた。
「これくらいの傷、自分で手当てできる」
「そう仰ると思いました。控室に薬篭が用意してあります。モーガンはどういたしましょう?」
「牢に放り込んでおけ。追って沙汰する」
「かしこまりました。決勝戦は続行しますか? それとも後日に…」
「続行だ。観客とオズワルドが待っている。開始時間だけ遅らせてくれ……声を掛けるまで、誰も部屋に入れないように」
「承知いたしました」
オズワルドは時期騎士団長だけあって、決勝戦まで勝ち進んでいた。
歩く間も、廊下に立つ人々から二人に拍手がおくられる。
控室の前にいる従者が、扉を開けて待っていた。
バタン――
ダニエルが入るとともに、後ろで扉が閉められる。
ソファまで歩みを進め、エリカをそうっと中央に下ろした。
自身は前に跪き、エリカの身体を調べ始める。
散々泣いたエリカはボーっとダニエルのすがままになっていた。
「…何をしているの……?」
「傷や、挫いている箇所がないかを確認している。……ん、大丈夫だ」
ハッと我に返ったエリカが、彼の顔を両手で挟んだ。
「頬の傷は!?」
「平気だ。大したことはない」
「よく見せて! ああ、ほんとね。良かった……でも髪の毛が……」
「丁度いい。鬱陶しかったんだ」
「無理しないで。髪を切られて悲しいって言っていいのよ……あっ、」
ダニエルは片手をエリカの腰に回し、抱き寄せる。
「二度と、もう二度とあんな真似はしないでくれ……! 君に何かあったら俺はっ、」
「ダニエル……」
ダニエルの身体はその時を思い出したのか、震えていた。
おずおずと……エリカもダニエルの背中に腕を回し、跪いたダニエルの腕の中にすっぽりとおさまる。
「ごめんなさい……」
もし自分がダニエルだったら、生きた心地がしなかっただろう。
婚約者が現役の騎士(しかも手練れ)に飛び掛かっていった上に、”自分を刺せ”と挑発したのだ。
(……………私だったら、こんな婚約者は嫌だなぁ……あ、でも婚約は解消するのだし、これはこれでいいのかもしれない)
エリカの身体に回された彼の腕に力がこもった。
(できれば抱き締めたりしないでほしいな。解消される覚悟はできているし、百合ルートも進めてはいけないと分かっているけど……好きだから、切なくなっちゃう)
その気持ちが伝わったのか、腕を緩めたダニエルにエリカはほっとする。
ダニエルがエリカの顎を掴み、優しく上向かせた。
「愛している――」
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