黒の転生騎士

sierra

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第二章

大きな爆弾     

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 城に帰り着く前にイフリートと話したかったのだが、二人きりになるチャンスは訪れなかった。
宿屋の自分の部屋に呼び出したのだが、彼は朝まで訪れなかった。やはり故意に二人きりになるのを避けている。
 私を無視してうやむやにしようとしているのだろうか?責任を問われるのが嫌なのだろうか?そんな人ではない筈なのだが。

 リーフシュタイン帰国後も、私のプリンセスモードは続く。公務の予定を目一杯入れる。仮面を被って忙しくしていると、イフリートの事を忘れられるのだ。

 でも妹達は見抜いていた。私がイフリートの事で悩んでいるのを、そして痩せてしまったのも。

「クリスティアナ姉様!」
サファイアが乗り込んできた。

「何!?この姉様の予定表!365日公務じゃない!おまけに6月のヴァルカウスの`ジューンブライドフェスタ‘の招待を受けたんですって!?何であんな酷い目に遭った国に行くの!?」

 `ジューンブライドフェスタ‘とは、レースが特産品のヴァルカウスで6月にある祭りである。
フェスタを利用して、売り上げを伸ばすのだそうだ。
 ルドルフからの招待状には、私にヴァルカウスのレースでできたドレスを着て、6月に結婚する花嫁たちの頭にティアラをのせてほしいのだそうだ。

 私の恋の手助けをしてくれた彼にはちゃんとお返しをしたい。これ位お安い御用だ。
招待状の最後に`僕の事を考えてくれる?‘と書いてあった。今すぐには考えられないけれど、この胸の傷が癒えた時には彼との事も考えられるかもしれない。

「もう私、黙っていられない!大体の察しはついているのよ!ラザファムを連れてきたわ!」
「話しが見えないんだけど・・・」
 ラザファムとはサファイア付きの騎士である。彼にどんな関わりがあるのだろう?

「ラザファム!あの話をしてやって!」
「あ、はい!イフリート団長の女性関係ですよね?」

 私の妹は、彼に一体何を話させようとしてるのだ!?

「イフリート団長は国の英雄で背が高く、顔も良く、筋骨隆々で、正に美丈夫であり、非常に女性にもてます。なので彼女は取っ替え引っ替えで・・・」

「――うっ」涙が出てきた。

「ラザファム!姉様を泣かしてどうするの!?」

「す、すいません!しかし長く持たないのです!いつも一ヶ月、長くて三ヶ月、その長い三ヶ月でも仕事を優先させるので、殆ど会っていないと思われます。女性のタイプは私が就任してから知っているだけになりますが、最初が銀髪で緑の目、すらっとした長身のジュアン。」

「名前はいいから。」
 サファイアにギロリと睨まれた。

「分かりました。二人目は銀髪で緑の目、すらっとした長身で、次も銀髪で緑の目、すらっとした・・・」

――あらっ?何だか私に・・・

「一回、黒髪で黒い瞳の女性がいましたが、その後はまた銀髪の、先ほどと同じ条件の女性が続きます。」

「姉様!聞いた!?イフリートも姉様が好きなのよ!でなきゃこんなに姉様のそっくりさんと付き合う訳ないわ!」
「きっと、銀髪に緑の目の長身が好きなのよ・・・」

「キー!!何!?そのネガティブな思考!ラザファム!!ちょっと外で立ち番してて!それからこれまでの事は他言無用だからね!」
「かしこまりました。」

 他言無用、それは厳しい掟。王族付きの騎士がそれを破ると縛り首だ。 

 もうここでお分かりだと思うが、サファイアは気が強い。青い目でふわふわした金髪、一見おっとりとして優しそうに見えるが、毒舌で弁が立つ。頭も良く根本の性格がアレクセイとよく似ている。

 ノックの音がして、リリアーナが顔を出した。
「サファイアお姉さま、カイトを連れて来たわ。」

「なぜカイトまで?」
 今度はカイトに何を言わせようとしているのだろう?

「失礼いたします。」
 リリアーナが最初に入り、騎士の礼をしたカイトが続いた。

「カイト、貴方に質問があるの。時々休日にイフリートと出かけてるわね?一体どこに行っているの?」
「イフリート団長のプライベートに関わりますから、お答えできません。」

「――っ!」
私とリリアーナは息を呑んだ。サファイアに逆らうとは、何て命知らずな・・・

「カイト・・・質問に答えない気?私が優しくしている内に素直に答えるのが貴方の身のためよ。」
 
 もはやサファイアが暴○団の組長にしか見えない。対するカイトは普段通りだ。

「答えなければいけないのならば、その理由をお聞きしたいのですが。」

サファイアは少しムッとしたようだが、カイトの言う事も理にかなっているので、答えることにしたようだ。

「イフリートのクリスティアナ姉様への気持ちが知りたいの。」

カイトは今度、私に視線を転じた。

「クリスティアナ様はイフリート団長に好意を持っていると考えてよろしいですね?」

 一瞬躊躇したが、小さく頷いた。

「分かりました。お答えいたします。」

カイトは最初に質問したサファイアに向き直った。

「イフリート団長は、クリスティアナ様を好きで・・・いえ、愛していらっしゃいます。」

――カイトが大きな爆弾を落とした。


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