黒の転生騎士

sierra

文字の大きさ
28 / 287
第三章

嵐の体術の部 前編   

しおりを挟む
「あら、フランチェスカ、どうしたの?今日も非番なの?」
「ビアンカ!そうなの、大会の間は休みが貰えたの。スティーブと一緒にカイトの応援をしようと 思って。」
「ふ~ん・・・実はスティーブとデートなんじゃない?」
「やめてよ!ただの幼馴染よ!」
「即答かよ!」

 フランチェスカがスティーブを顧みた。
「事実じゃない。昨日だってお・さ・な・な・じ・み・のカイトとあんたの試合の応援をしたんだから。」
「何も強調しなくても・・・」

 昨日スティーブは剣術の部で出場しており、五位の成績を収めた。新米騎士にしてはなかなかである。ちなみに騎馬隊長のアルフレッドが二位に入賞している。

「リーフシュタインの騎士のレベルって高いわよね。」
「俺も含めてな。」
スルーされたスティーブである。

「あ、でもアレクセイ様には驚いたわ。」
「ああ、剣術の部にエントリーしていて、しかも三位だったよな。騎士の俺なんかよりも上だぜ。」
「普段執務ばかりしてるイメージがあるから、もやし系のイメージがあったんだけど、そういえば 以外に身体つきもがっしりしてるし・・・」
「仕事の合間に団長や、副団長とよく手合わせしてるのを見るしな。今度はカイトに空手を習いたいって言ってた。」
「文武両道を目指しているのかしら?そういえば・・・剣術の勝利の女神は、ナルヴィクの王女の シンシア様よね?」

 武術大会で開催される競技は全部で四種目。リーフシュタインの王女達では勝利の女神が足りないので、友好国であり、招待客でもある隣国のナルヴィク国のシンシア王女にお願いしたのだ。

「そう!あの王女様、地味だな~って思ってたんだけど、近くで見たら肌は綺麗だし、正統派の美人って感じだったぜ。」
「そっか、表彰の時にスティーブは近場で見たんだっけ。ナルヴィクは歴史のある国だから、どうしても伝統のある地味な格好になったりするのよね。化粧とかも、ほとんどしてないんじゃいかしら?」

「フラン!カイトが出てきたわよ!」
 観客席からも黄色い声援が飛んでいる。
「いいなあ、あいつ`黒髪の美しい騎士‘って呼ばれてるんだろ?」
「だけどカイトは嫌がってたわよ、`男なのに美しいって嫌だ‘って。」
「畜生!なんて贅沢なやつだ!」
「ほら、二人共、カイトの試合が始まるわよ!」

 ビアンカに言われて競技場に視線を戻す。
「相変わらず強いわね・・・って、カイトの動きが早すぎて、どう倒したか分からないんだけど。」
「あしらってる感じだな。昨日は強いやつ相手に、色々試したい技があるって言ってた・・・。
試合をやってるように見えないってか、冷めてる・・・?冷静だよな。」

「きゃー!勝ったわ!凄い!!何で二人共そんなに静かなの!?幼馴染でしょう!?冷たいじゃない!」
 アビゲイルも横で興奮して跳ねている。
 
 騎士団の声援は凄いし、競技場の人々も初めて見る空手の技に魅せられて熱狂している。相手の身体より明らかに細くて小さいカイトが敵を倒すのが信じられないらしい。

 幼馴染二人からすると、勝ちが決まっている試合を見るような気分である。
二人共、カイトの強さを知り尽くしているし、微妙な表情の違いからもカイトの感情を読み取れる。

「もう、今日は決まったかしら。」
「待て、この次の準決勝で確か凄いやつが出てくるぞ。」
 スティーブが身を乗り出した。
「うわぁ、本当だ。筋肉の塊ね。」

 `熊殺しのヴァレット‘という異名を持つ人物である。子供が見たら泣き出しそうな面構えに、ムキムキの筋肉、身長も見た感じ3m近くあるように見える。
 見た瞬間に`今日の優勝はこの男!!‘と思わせるような人物だ。

 今度ばかりは黒髪の騎士も駄目かもしれない。観客席も騎士席もただ二人を除いてそう思った。


しおりを挟む
感想 479

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...