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第三章
嵐の体術の部 前編
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「あら、フランチェスカ、どうしたの?今日も非番なの?」
「ビアンカ!そうなの、大会の間は休みが貰えたの。スティーブと一緒にカイトの応援をしようと 思って。」
「ふ~ん・・・実はスティーブとデートなんじゃない?」
「やめてよ!ただの幼馴染よ!」
「即答かよ!」
フランチェスカがスティーブを顧みた。
「事実じゃない。昨日だってお・さ・な・な・じ・み・のカイトとあんたの試合の応援をしたんだから。」
「何も強調しなくても・・・」
昨日スティーブは剣術の部で出場しており、五位の成績を収めた。新米騎士にしてはなかなかである。ちなみに騎馬隊長のアルフレッドが二位に入賞している。
「リーフシュタインの騎士のレベルって高いわよね。」
「俺も含めてな。」
スルーされたスティーブである。
「あ、でもアレクセイ様には驚いたわ。」
「ああ、剣術の部にエントリーしていて、しかも三位だったよな。騎士の俺なんかよりも上だぜ。」
「普段執務ばかりしてるイメージがあるから、もやし系のイメージがあったんだけど、そういえば 以外に身体つきもがっしりしてるし・・・」
「仕事の合間に団長や、副団長とよく手合わせしてるのを見るしな。今度はカイトに空手を習いたいって言ってた。」
「文武両道を目指しているのかしら?そういえば・・・剣術の勝利の女神は、ナルヴィクの王女の シンシア様よね?」
武術大会で開催される競技は全部で四種目。リーフシュタインの王女達では勝利の女神が足りないので、友好国であり、招待客でもある隣国のナルヴィク国のシンシア王女にお願いしたのだ。
「そう!あの王女様、地味だな~って思ってたんだけど、近くで見たら肌は綺麗だし、正統派の美人って感じだったぜ。」
「そっか、表彰の時にスティーブは近場で見たんだっけ。ナルヴィクは歴史のある国だから、どうしても伝統のある地味な格好になったりするのよね。化粧とかも、ほとんどしてないんじゃいかしら?」
「フラン!カイトが出てきたわよ!」
観客席からも黄色い声援が飛んでいる。
「いいなあ、あいつ`黒髪の美しい騎士‘って呼ばれてるんだろ?」
「だけどカイトは嫌がってたわよ、`男なのに美しいって嫌だ‘って。」
「畜生!なんて贅沢なやつだ!」
「ほら、二人共、カイトの試合が始まるわよ!」
ビアンカに言われて競技場に視線を戻す。
「相変わらず強いわね・・・って、カイトの動きが早すぎて、どう倒したか分からないんだけど。」
「あしらってる感じだな。昨日は強いやつ相手に、色々試したい技があるって言ってた・・・。
試合をやってるように見えないってか、冷めてる・・・?冷静だよな。」
「きゃー!勝ったわ!凄い!!何で二人共そんなに静かなの!?幼馴染でしょう!?冷たいじゃない!」
アビゲイルも横で興奮して跳ねている。
騎士団の声援は凄いし、競技場の人々も初めて見る空手の技に魅せられて熱狂している。相手の身体より明らかに細くて小さいカイトが敵を倒すのが信じられないらしい。
幼馴染二人からすると、勝ちが決まっている試合を見るような気分である。
二人共、カイトの強さを知り尽くしているし、微妙な表情の違いからもカイトの感情を読み取れる。
「もう、今日は決まったかしら。」
「待て、この次の準決勝で確か凄いやつが出てくるぞ。」
スティーブが身を乗り出した。
「うわぁ、本当だ。筋肉の塊ね。」
`熊殺しのヴァレット‘という異名を持つ人物である。子供が見たら泣き出しそうな面構えに、ムキムキの筋肉、身長も見た感じ3m近くあるように見える。
見た瞬間に`今日の優勝はこの男!!‘と思わせるような人物だ。
今度ばかりは黒髪の騎士も駄目かもしれない。観客席も騎士席もただ二人を除いてそう思った。
「ビアンカ!そうなの、大会の間は休みが貰えたの。スティーブと一緒にカイトの応援をしようと 思って。」
「ふ~ん・・・実はスティーブとデートなんじゃない?」
「やめてよ!ただの幼馴染よ!」
「即答かよ!」
フランチェスカがスティーブを顧みた。
「事実じゃない。昨日だってお・さ・な・な・じ・み・のカイトとあんたの試合の応援をしたんだから。」
「何も強調しなくても・・・」
昨日スティーブは剣術の部で出場しており、五位の成績を収めた。新米騎士にしてはなかなかである。ちなみに騎馬隊長のアルフレッドが二位に入賞している。
「リーフシュタインの騎士のレベルって高いわよね。」
「俺も含めてな。」
スルーされたスティーブである。
「あ、でもアレクセイ様には驚いたわ。」
「ああ、剣術の部にエントリーしていて、しかも三位だったよな。騎士の俺なんかよりも上だぜ。」
「普段執務ばかりしてるイメージがあるから、もやし系のイメージがあったんだけど、そういえば 以外に身体つきもがっしりしてるし・・・」
「仕事の合間に団長や、副団長とよく手合わせしてるのを見るしな。今度はカイトに空手を習いたいって言ってた。」
「文武両道を目指しているのかしら?そういえば・・・剣術の勝利の女神は、ナルヴィクの王女の シンシア様よね?」
武術大会で開催される競技は全部で四種目。リーフシュタインの王女達では勝利の女神が足りないので、友好国であり、招待客でもある隣国のナルヴィク国のシンシア王女にお願いしたのだ。
「そう!あの王女様、地味だな~って思ってたんだけど、近くで見たら肌は綺麗だし、正統派の美人って感じだったぜ。」
「そっか、表彰の時にスティーブは近場で見たんだっけ。ナルヴィクは歴史のある国だから、どうしても伝統のある地味な格好になったりするのよね。化粧とかも、ほとんどしてないんじゃいかしら?」
「フラン!カイトが出てきたわよ!」
観客席からも黄色い声援が飛んでいる。
「いいなあ、あいつ`黒髪の美しい騎士‘って呼ばれてるんだろ?」
「だけどカイトは嫌がってたわよ、`男なのに美しいって嫌だ‘って。」
「畜生!なんて贅沢なやつだ!」
「ほら、二人共、カイトの試合が始まるわよ!」
ビアンカに言われて競技場に視線を戻す。
「相変わらず強いわね・・・って、カイトの動きが早すぎて、どう倒したか分からないんだけど。」
「あしらってる感じだな。昨日は強いやつ相手に、色々試したい技があるって言ってた・・・。
試合をやってるように見えないってか、冷めてる・・・?冷静だよな。」
「きゃー!勝ったわ!凄い!!何で二人共そんなに静かなの!?幼馴染でしょう!?冷たいじゃない!」
アビゲイルも横で興奮して跳ねている。
騎士団の声援は凄いし、競技場の人々も初めて見る空手の技に魅せられて熱狂している。相手の身体より明らかに細くて小さいカイトが敵を倒すのが信じられないらしい。
幼馴染二人からすると、勝ちが決まっている試合を見るような気分である。
二人共、カイトの強さを知り尽くしているし、微妙な表情の違いからもカイトの感情を読み取れる。
「もう、今日は決まったかしら。」
「待て、この次の準決勝で確か凄いやつが出てくるぞ。」
スティーブが身を乗り出した。
「うわぁ、本当だ。筋肉の塊ね。」
`熊殺しのヴァレット‘という異名を持つ人物である。子供が見たら泣き出しそうな面構えに、ムキムキの筋肉、身長も見た感じ3m近くあるように見える。
見た瞬間に`今日の優勝はこの男!!‘と思わせるような人物だ。
今度ばかりは黒髪の騎士も駄目かもしれない。観客席も騎士席もただ二人を除いてそう思った。
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