黒の転生騎士

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第七章

じーちゃんとドラゴンと 9  誤解を招く

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「ルドルフと結婚の誓約書を交わしていたらどうするつもりだ?」 

「その前に、婚約を破棄しなければならない。相手である俺がいないし、まずそこで時間が掛かると思います。それにルドルフがそう簡単に結婚を承諾するとは思えない。ヴァルカウスのニコライ国王陛下に相当絞られたみたいだし、またそこで時間が掛かる。もし万が一誓約書を交わしてしまったら、婚姻の無効宣告という手もあります」

「ふ・・・ん・・・よく考えたな。冷静だし」
「いや、全然冷静じゃないです。帰ったら、馬を飛ばして早く帰りたい」
「よし。それではすぐに戻そう」
 カエレスがカイトの額に爪の先で触れると、意識が遠くなった。次に目覚めた時には、七色の水が湧き出ている泉の側のベッドに寝かされていた。

「カイト、おはよ~!」
「おはよう。ここは・・・?」
「僕達の家だよ」
「そういえば、君の名前は?こちらでも翔?」
「こっちでは、フェダーだよ」
「フェダー、おはよう。お父さんは? ゆっくりしていられないんだ。すぐに出ないと」

 その当のお父さんのドラゴンがやって来た。
「おお、カイト、目覚めたか・・・気分はどうだ」
「気分は・・・焦っているからいいとは言えませんが、すぐに発ちたいんです」
 カイトはベッドから立ち上がった。

「落ち着け。大体ここに来た目的があったろう?」
「それについてはまた来ます。今は早く帰りたいんです。婚姻の無効宣告は最終手段だと思っているし、まずは婚約破棄しないようにさせたい」

「大丈夫だ。あの娘さんには一日ずらして伝えてあるからお前が帰ってくるのは明日だと思っている。それにわしが送ってやれば、一時間で済む」
「一時間・・・?」
「そう一時間。わしの背に乗っていけばいい」
 カイトはほっとした顔をした。
「それは、とても助かります」

「お前があちらの世界に戻っている間に、マティアスと会ってきた。お前の馬や荷物をここに持ってきておこうと思ってな。ついでに話も聞いてきたぞ。わし達の鱗で鎖帷子を作りたいそうだな」
「はい、そうです」
「鱗と言わずに、全部持ってけ」
「へ・・・?」

案内された部屋には、ドラゴンの抜け殻が大量に置いてあった。
「わしらは何年かに一度、脱皮するんだ。脱皮した抜け殻は人間が入ってこれないような森の奥に放置して、自然に返すのだがこれが何百年と掛かってな。お前さんが使ってくれるなら、丁度いいわ。集めておいたからいくらでも持っていってくれ」

「助かります・・・これだけあれば、鎖帷子とは言わず、鎧・・・いや、SWATみたいな特殊部隊の防弾チョッキのような形にするのもいいかも・・・」
「色々考えておるの」
「こんなに手に入るとは思わなかったので・・・ドラゴンは、神様一家以外にもいらっしゃるのですか?」
「ああ、ここらへんはドラゴンの集落だ。わしが、神として頂点にいて、まあ、町長みたいなもんだ」
「神が町長・・・」
 確かに、親しみやすい神様である。

「そういえば、マティアスが『絶対にリリアーナ姫と別れさせないでくれ』と言っておったぞ」
「じーちゃん、リリアーナ様ファンだから・・・」
「じゃあ、持つ物を持って、リーフシュタインに向かうか」
 カエレスは透明の大きい珠をいくつか作り、抜け殻や、カイトの乗ってきた馬や荷物などを入れると、カイトとフェダーを背中に乗せた。


リーフシュタイン。こちらは貴賓客を迎える為の客室。

「リリアーナ様、僕は父上に言われてカイトに謝罪に来たんだよ。それなのに、何で君と結婚するの? 君達の熱々ぶりはヴァルカウスにも伝わってきてるんだよ」

「だから、今説明した通り・・・」

「カイトが異世界からの転生人(びと) って事? にわかには信じ難いけど・・・じゃあ、君の言っている事が本当だとしよう。わざわざ僕達が結婚しなくても、帰って来ないんだったら彼には確かめようがないじゃないか? 放っておけばいいんじゃないの? もし帰ってきたとしたら、それはそれでカイトの意志だから、君と結婚して、ハッピーエンドじゃないか」

「駄目! カイトが絶対に帰らないように婚姻の誓約書を交わして、その情報をカエレス様に送ってもらうの。カイトは明日が7日目だから、今日その情報を送ってしまえば、きっと明日は帰って来ない筈」

「カエレス様に『結婚しました』って嘘をつけばいいじゃないか」

「相手は神様よ。すぐにそんな嘘分かってしまうわ」

「でもその前に婚約解消が先だろう? もう済んでるの?」

「まだ・・・。お父様達が、カイトの転生の話を信じてくれなくて、私がまた馬鹿な事をやっていると思っているみたい」

「じゃあ、やっぱり無理じゃないか」

「大丈夫! 司祭様には話をつけたし、取り敢えず婚姻の誓約書を交わして、カイトが帰って来なければお父様達も納得するわ」

「君の幸せはどうなるの・・・?」

「・・・それは・・・ルドルフ様が言った通り、友達同士のような夫婦に・・・」

「そりゃあ、友達同士のような間柄だけど、僕は皇太子だよ? 世継ぎを儲けなければいけないんだ。君は僕とそういう仲になれるの?」

 リリアーナの顔が青ざめた。
「何年かしたら・・・」

「何年かしたらじゃ駄目なんだ。僕はもう22歳だし、できれば側妃は置きたくないし、君が本気ならこの話を受けてもいいけど。結婚したら、すぐにそういう事になるよ」

「考えてなかったけど・・・努力する」

「努力だけじゃ駄目なんだよ。じゃあ、僕が今から君にキスをするから、それを受け入れられたらサインしよう」

「それでいいの!?」

「恋人同士のキスだよ? 意味は分かるだろう?」

 リリアーナが緊張した顔になった。ルドルフがリリアーナの両肩に手を置くと、リリアーナはぎゅっと目を瞑った。顎を持ち、顔を傾けてキスしようとすると僅かに震えているのが分かる。ルドルフの表情が少し切なくなった。

「口を開けて」
 僅かに唇は開いたが、さらに震えも大きくなった。
リリアーナの口元でルドルフが言う。

「ほら、やっぱり無理だろう?」

 その時、凄まじい音と共に、ドアが吹っ飛んだ。
「うん・・・?」

 ルドルフが振り返ると、ちょうどカイトと目が合った。ルドルフの脳裏に、不安がよぎる。
(この体制は誤解を招く・・・)
 
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