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第八章
カイトの休日 5 禁断の恋
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次の日、まずアレクセイから`禁断の恋 ‘ の出版に関して一任させてもらう許可をもらい、次にイフリートにソフィアの城内の見学許可をもらい、その後にじいやの所に行って、ソフィアの母親を診てもらうよう頼んだ。更にその後、町で情報収集をする。それが全部終わってから、リリアーナの部屋に向かったら、午後の三時を過ぎていた。
そして約束の日、朝早くスティーブに付き合ってもらい、ウェーバー出版までソフィアとソフィアの母親を迎えに行った。
「サー・カイト!」
ソフィアが嬉しそうに走り出て来る。一回挨拶をした後にすぐ家の中へ戻り、母親の手を引いて、ゆっくりとした足取りでこちらに向かって歩いてきた。年の頃は40才位だろうか? まだそんな年でもないのに妙に疲れた顔をしているし、手足が不自由そうに見える。カイトが自分の馬の前にその母親を乗せるとソフィアが少し残念そうな顔をした。
「僕じゃ不服かい?」
スティーブに優しく聞かれて、ソフィアは慌てて否定する。
「あ、ごめんなさい! そんな事は無いの。ただ、サー・カイトにずっと憧れていたから・・・」
「ずっと・・・?」
「ええ、ずっと・・・サー・カイトがまだ有名ではなかった頃から、素敵な騎士見習いの人がいるなあって、いつも見ていたの。商店に盗賊が入った時に空手で一網打尽にして、その功績を讃えられて騎士に昇格したのよね。お城では皆に空手も教えているし・・・」
「ふ~ん、色々とよく知っているんだね」
「ええ、そう。サー・カイトの事なら何でも知っているわ―― 。私のほうがずっと昔からカイトの事を想っていたし、深く理解しているのに」
「誰と比較しているの?」
ソフィアが一瞬 顔色を変えた。
「ごめんなさい・・・分かってはいるんだけど、大ファンだったから・・・リリアーナ様との婚約はショックだったの。でもそんな人、私以外にもたくさんいるわ。サー・カイトは銅版画の売り上げもNO1だったけど、これで順位も落ちてしまうんじゃないかしら」
ソフィアを自分の前に乗せて、スティーブが馬を歩かせ始めた。城までの道すがら、たわいも無い話を交わす。城に着いてソフィアを馬から下ろすと、すぐに母親の元に走り寄っていった。
(さっきの話、一応カイトの耳に入れたほうがいいな)
今はソフィアが傍にいるので後で話そうと、取り敢えずその場を去る。
「始めに医務室に案内しよう」
カイトが母親の手を取ろうとすると、ソフィアが「ありがとうございます。でも私のほうが母も慣れていますから」と、自分で母親の手を引いた。甲斐甲斐しく世話をする様子は大変微笑ましく目に映る。
医務室に入ると、じいやが待っていた。ソフィアは健康だが、折角来たのだからと問診を受ける。その後にソフィアの母親はじいやに任せ、城内の見学をする事になった。小説に書かれても問題が無いところを中心に回る。
「サー・カイトがリリアーナ様をお救いして、ご褒美に作ってもらった男子寮の井戸を見てみたいです」
「よく知っているね」
カイトが驚いた顔をした。
「ファンですから」
ソフィアは嬉しそうだ。姫君達が草むしりをしている前庭に出た。見るとリリアーナが草むしりをしている。
「今日はサファイア様の筈なのに・・・」
カイトが呟いた傍で、リリアーナを見つけたソフィアが脱兎の如く駆け出した。いきなりの事でカイトの反応が一瞬遅れる。
「待て!」
カイトがソフィアを捕まえるのと同時にリリアーナが気が付いた。
「カイト、どうしたの? その女性が一昨日言っていた、お城を案内する約束をしていた方?」
リリアーナが不思議そうな顔をしている。
「そうです。作業中に大変失礼致しました」
カイトがソフィアの手を引っ張って無理に連れて行こうとすると、ソフィアが慌てて口を開いた。
「初めましてリリアーナ王女殿下。私はソフィア・ウェーバーと申します。今、お二人のロマンス本を出していて、二巻を出すためにぜひインタビューをさせて頂きたいんです!」
「ロマンス本・・・?」
「はい! `禁断の恋 ‘ というのですが」
「それなら、侍女達が話しているのを聞いた事があるわ」
リリアーナが興味を示した。カイトが間に割って入る。
「リリアーナ様、後でご希望でしたらその本をお届け致します。わざわざ王女殿下がインタビューをお受けになる程の内容ではございません。」
「サー・カイト、酷いわ! 一流ではないかもしれないけれど、一生懸命書いたのよ」
リリアーナはカイトのその言葉を聞いて、意外に思った。カイトは普段、人を貶 (おとし) めるような言い方をしない。これは考えがあっての発言なのだろう。安易にインタビューを受けないほうがいいかもしれない。断りの返事をしようとした所で、観光客がわらわらと集まってきた。
リリアーナの傍にフィアンセのカイトがいるので、いつも以上の人だかりだ。押し寄せる男性客に怯えたリリアーナを背中に庇い、カイトが下がるようにと警告する。警護についていた女性騎士と、配置されていた騎士達もすぐに駆けつけ結果、安全な距離が保たれ事無きを得る。
「リリアーナ様、大丈夫ですか?」
カイトが心配そうに頬に手を添え、顔を覗き込む。リリアーナは青い顔をして少しカイトにもたれ掛かっていたが、暫くすると落ち着きを取り戻した。添えられたカイトの右手に頬を押し当てると、微笑んだ。
「ありがとう。大丈夫よ」
目の前の麗しい光景に観光客からは溜息が洩れ、賛美の視線が注がれている。ふとソフィアの事を思い出し、リリアーナが向き直った。ソフィアは俯いて両手を握り締めている。
「ごめんなさい。草むしりの後も用事があって・・・インタビューは無理なのだけど、本はちゃんと読ませて頂くわね」
「この泥棒猫―― 」
その言葉に驚いてリリアーナが視線を合わせると、ソフィアが目をぎらつかせていた。
そして約束の日、朝早くスティーブに付き合ってもらい、ウェーバー出版までソフィアとソフィアの母親を迎えに行った。
「サー・カイト!」
ソフィアが嬉しそうに走り出て来る。一回挨拶をした後にすぐ家の中へ戻り、母親の手を引いて、ゆっくりとした足取りでこちらに向かって歩いてきた。年の頃は40才位だろうか? まだそんな年でもないのに妙に疲れた顔をしているし、手足が不自由そうに見える。カイトが自分の馬の前にその母親を乗せるとソフィアが少し残念そうな顔をした。
「僕じゃ不服かい?」
スティーブに優しく聞かれて、ソフィアは慌てて否定する。
「あ、ごめんなさい! そんな事は無いの。ただ、サー・カイトにずっと憧れていたから・・・」
「ずっと・・・?」
「ええ、ずっと・・・サー・カイトがまだ有名ではなかった頃から、素敵な騎士見習いの人がいるなあって、いつも見ていたの。商店に盗賊が入った時に空手で一網打尽にして、その功績を讃えられて騎士に昇格したのよね。お城では皆に空手も教えているし・・・」
「ふ~ん、色々とよく知っているんだね」
「ええ、そう。サー・カイトの事なら何でも知っているわ―― 。私のほうがずっと昔からカイトの事を想っていたし、深く理解しているのに」
「誰と比較しているの?」
ソフィアが一瞬 顔色を変えた。
「ごめんなさい・・・分かってはいるんだけど、大ファンだったから・・・リリアーナ様との婚約はショックだったの。でもそんな人、私以外にもたくさんいるわ。サー・カイトは銅版画の売り上げもNO1だったけど、これで順位も落ちてしまうんじゃないかしら」
ソフィアを自分の前に乗せて、スティーブが馬を歩かせ始めた。城までの道すがら、たわいも無い話を交わす。城に着いてソフィアを馬から下ろすと、すぐに母親の元に走り寄っていった。
(さっきの話、一応カイトの耳に入れたほうがいいな)
今はソフィアが傍にいるので後で話そうと、取り敢えずその場を去る。
「始めに医務室に案内しよう」
カイトが母親の手を取ろうとすると、ソフィアが「ありがとうございます。でも私のほうが母も慣れていますから」と、自分で母親の手を引いた。甲斐甲斐しく世話をする様子は大変微笑ましく目に映る。
医務室に入ると、じいやが待っていた。ソフィアは健康だが、折角来たのだからと問診を受ける。その後にソフィアの母親はじいやに任せ、城内の見学をする事になった。小説に書かれても問題が無いところを中心に回る。
「サー・カイトがリリアーナ様をお救いして、ご褒美に作ってもらった男子寮の井戸を見てみたいです」
「よく知っているね」
カイトが驚いた顔をした。
「ファンですから」
ソフィアは嬉しそうだ。姫君達が草むしりをしている前庭に出た。見るとリリアーナが草むしりをしている。
「今日はサファイア様の筈なのに・・・」
カイトが呟いた傍で、リリアーナを見つけたソフィアが脱兎の如く駆け出した。いきなりの事でカイトの反応が一瞬遅れる。
「待て!」
カイトがソフィアを捕まえるのと同時にリリアーナが気が付いた。
「カイト、どうしたの? その女性が一昨日言っていた、お城を案内する約束をしていた方?」
リリアーナが不思議そうな顔をしている。
「そうです。作業中に大変失礼致しました」
カイトがソフィアの手を引っ張って無理に連れて行こうとすると、ソフィアが慌てて口を開いた。
「初めましてリリアーナ王女殿下。私はソフィア・ウェーバーと申します。今、お二人のロマンス本を出していて、二巻を出すためにぜひインタビューをさせて頂きたいんです!」
「ロマンス本・・・?」
「はい! `禁断の恋 ‘ というのですが」
「それなら、侍女達が話しているのを聞いた事があるわ」
リリアーナが興味を示した。カイトが間に割って入る。
「リリアーナ様、後でご希望でしたらその本をお届け致します。わざわざ王女殿下がインタビューをお受けになる程の内容ではございません。」
「サー・カイト、酷いわ! 一流ではないかもしれないけれど、一生懸命書いたのよ」
リリアーナはカイトのその言葉を聞いて、意外に思った。カイトは普段、人を貶 (おとし) めるような言い方をしない。これは考えがあっての発言なのだろう。安易にインタビューを受けないほうがいいかもしれない。断りの返事をしようとした所で、観光客がわらわらと集まってきた。
リリアーナの傍にフィアンセのカイトがいるので、いつも以上の人だかりだ。押し寄せる男性客に怯えたリリアーナを背中に庇い、カイトが下がるようにと警告する。警護についていた女性騎士と、配置されていた騎士達もすぐに駆けつけ結果、安全な距離が保たれ事無きを得る。
「リリアーナ様、大丈夫ですか?」
カイトが心配そうに頬に手を添え、顔を覗き込む。リリアーナは青い顔をして少しカイトにもたれ掛かっていたが、暫くすると落ち着きを取り戻した。添えられたカイトの右手に頬を押し当てると、微笑んだ。
「ありがとう。大丈夫よ」
目の前の麗しい光景に観光客からは溜息が洩れ、賛美の視線が注がれている。ふとソフィアの事を思い出し、リリアーナが向き直った。ソフィアは俯いて両手を握り締めている。
「ごめんなさい。草むしりの後も用事があって・・・インタビューは無理なのだけど、本はちゃんと読ませて頂くわね」
「この泥棒猫―― 」
その言葉に驚いてリリアーナが視線を合わせると、ソフィアが目をぎらつかせていた。
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