黒の転生騎士

sierra

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第十一章

我儘姫と舞踏会 18

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 そういえば前にも約束に遅れてきた事がある――

 幼い頃の思い出が一気に蘇ってきた。
 
 確かあれは8才の頃・・・

 お転婆のフランチェスカは毎日カイトやスティーブと一緒に遊んでいた。女の子と遊ぶより、男の子と遊ぶほうが断然面白い。
 おまけに二人は運動神経も頭も良く、共に居るととても楽しいのだ。そして何より女の子のフランチェスカを同等に扱ってくれる。

 周りの女の子からのやっかみは凄かった。何せ好きな男の子ランキングで一、二位を争う二人。嫌がらせやいやみ、仲間外れは日常茶飯事。しかし子供の頃から負けん気の強い彼女はやられたらやり返してはいた。

 そんなフランチェスカもやはり女の子、実はお花が大好きだったりする。特にお気に入りはアイリスで、一度部屋にたくさん飾りたいな、とは思っていた。

 しかし花は、特に花屋で買う花は高いのである。8才の女の子が簡単に買える代物ではなかった。
 お誕生日に何が欲しいかを両親に聞かれ、アイリスの花束が欲しくて口に出しかけたが、二つ年上の兄が吹き出した。

「フランがアイリス? 似合わね~~~!!」
「べ、別に、他に思いつかなかっただけだもん!」

 兄は両親に手酷く怒られ、両親からはアイリスにしようと言われたが、確かに普段の自分から考えると、似合わないし滑稽に見えるかもしれない。フランチェスカはアイリスを諦めた。もう少し大きく、レディになってから望む事にしよう・・・とても心残りではあるが・・・

 どこから聞きつけてきたのか、スティーブが次の日に声を掛けてきた。

「フラン、アイリスの花がほしいのか?」

 スティーブとカイトには何でも隠さずに話している。二人共信頼しているから――

「うん。でもアホ兄さんに笑われたからやめにした」
「おれが、あしたの誕生日にもっていってやる」
「え、もうお母さんがプレゼントをよういしたって言ってたじゃない」
「だいじょうぶだ。まかせろ」

 次の日の誕生日パーティーで、スティーブがなかなか来ない。フランはアイリスよりも、スティーブが来ないことのほうが気になった。
 
「だいじょうぶ、スティーブはきっとくる」 

 そういえば、あの時もそうカイトに慰められたんだっけ。クスリと笑いながら遠い昔に思いを戻す。誕生日会が終わる寸前で、スティーブはやってきた。

 着ていた上等の衣服はボロボロで、あの時スティーブは9才だったから、まだあどけなさが残る王子様みたいな可愛い顔をしていたのに、顔から手足まで傷だらけ。
 うちの両親は大騒ぎで手当てをしようとしたけれど、スティーブがそれを押しとどめて、私の前にアイリスを差し出したのだ。

 身体中の傷に対してそのアイリスは殆ど無傷で、身体を張って守ってくれたのがよく分かった。たった三本ほどだったけど、嬉しくて涙を流しながら受け取った。

 嬉しくて、嬉しくて、ずっとわんわん泣いていた。スティーブはなぜフランが泣いているのか分からなくて、おろおろと困っていたのを思い出す。
 後で分かった事ではあるが、その花はアイリスに似た高山植物の一種であった。でも、その事実は本人に言わないでいる。

 ずっと部屋に飾り最後はドライフラワーにして、今でも大事に持っている。
 思い出に浸っている間に噴水まで来てしまった。この時間、噴水は止まっていて、綺麗な三日月が水面に映っている。もうラストの曲も終盤を迎えた。

「何で来てくれないの・・・?」

 まなじりから涙が滲み出てくる。

「楽しみにしていたのに・・・ドレスだって・・・髪型だって・・・申し込まれた時からどんなのにしようかって、ずっと――」

 手の甲で涙を拭うが、次から次へと溢れ出てきた。ハンカチを探したが見つからない。もう、ドレスで拭いてしまおうと思った時に、後ろから、すっとハンカチを差し出される。

 信じられない思いで暫くはそのハンカチに見入っていた。ゆっくりと、そこから辿るように顔を上げると、カイト同じ、騎士団の黒の正装を着たスティーブが、息を切らしてフランチェスカを見下ろしていた。

「スティーブ・・・?」
「ああ」
「もう、遅い――っ!?」

 言った途端にフランはいきなり抱きしめられて、目を丸くする。それもギュウギュウに抱き締められて、顔も胸に押し付けられ、段々息苦しくなってきた。
 騎士だけあって力も並みじゃない。フランは窒息しそうな上に、いきなりの展開に出ていた涙も止まってしまった。

「スティ・・・ブ、くる・・・し・・・」
「ごめん!! 訳は後で話すから、まずは踊ろう!!」

 なぜか恋人っぽくない雰囲気である。

 スティーブは身を離してフランの右手首を掴むと、噴水の横の広くなっているスペースへと移動をする。

「え!? 待って。もう、曲は終わってしまうわ」
「大丈夫。イフリート団長が頼み込んで、最後の曲は二回演奏されるから」
「何でそんな事を知っているの? 会ってきたの?」
「おばちゃん達から聞いた」
「おばちゃん・・・?」

 スティーブがフランチェスカと向かい合うと両手を取った。

「ここで踊るの?」
「中に戻るか?」
「ううん、ここがいい――」

 好奇の視線に晒されるより、ここで二人きりで踊っていたい。
 二回目の演奏が始まった。二人の息はぴったりで、流れるようにスーッと動く。月明かりの下、流れてくる演奏以外は静かな夜気に包まれて、踊る二人は見ていて大変美しい。

「良かった・・・フラン・・・」
「リリアーナ、ハンカチ」
「うん・・・カイト・・・ありがとう」
 二人は庭園へと続く一階のテラスにいる。テラスは高くなっていてほぼ庭園を見渡せるので、木々に少し隠れはするが噴水で踊っている二人の姿も捉えることができた。リリアーナは感極まって、涙が溢れ出てきたところだ。  

「さあ、中に入ろう」
「そうね、二人きりにしてあげないと・・・あら、でもあれは何?」
「え・・・?」
「ほら、あそこの茂み、なんか動いてる」
「あ・・・まさか・・・」

 カイトが思わずこぶしを口に当てた。
「仕方がない、放っておこう。二人の為に散らしてやりたいけど、声をかけたら却ってダンスの邪魔になる」
「え、ええ――」

 リリアーナもカイトの言葉で何となく察しはついたが、確かに彼の言う通りなので、エスコートされるままにその場を後にした。


 すいません(>_<) 急遽朝に上げさせて頂きます!!!
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