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第十二章
腕(かいな)の中のリリアーナ 17 「婚約者だからチュッてして」
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アレクセイは頷いてから、最後にカイトと視線を合わせた。
「カイト。起きている間中リリアーナに貼り付け! 婚約解消は延期だ。ルイスに狙われているからにはお前が婚約者であるという事実、奴に対しての盾が必要だ!」
「かしこまりました」
カイトがアレクセイに向かって神妙な面持ちで頷いた。
「いっそのこと寝起きを共にすればいいのでは? それが一番安心よ」
周りがシーンと水を打ったように静まる中、アレクセイが発言の主に呆れ顔を向ける。
「サファイア、お前は口を慎め――」
「だって、本当のことじゃない。ルイス王子って随分と悪知恵が働くんでしょう? いつ何が起こるか分からないのよ? 余計な心配をしなくてもリリアーナは今子供なんだし、カイトが寝食を共にして張り付いているのが一番安全だと思うけど」
「言い分は最もだがお前の言っている事は…」
「私は`お前 ‘ じゃなくて、サファイアという名前があるの」
「……サファイアの言っている事は…!」
「アレクセイ様」
「何だカイト?」
「私からサファイア様に意見を申し上げる許可を頂けますでしょうか」
アレクセイが安堵の溜息を吐く。
「お前に任せる。どうも、身内が相手だとヒートアップをしてしまって……」
カイトはリリアーナ付きの騎士なので、中央の席についている。彼は身体をサファイアに向けた。
「サファイア様、恐れながら申し上げます。ルイス王子は性格的に褒められた人物ではありません。リリアーナ様を手に入れられなかった際は、腹いせによからぬ噂も平気で流すでしょう。例えば `婚約者を気取る男が、まだ5歳の姫君の寝室に現を抜かして入り浸っていた ‘ などと」
周りが息を呑み、サファイアが音高く席から立ち上がった。
「そんな下衆な話! ルイス王子の言うことなんて、誰も信じないわ! それにリリアーナはまだ5歳なのよ。 あなたの性格を皆も知っているし、リリアーナに不埒な真似を働くなんて誰も考えないわ!」
「はい――大半の人間はそう思うでしょう。しかし、話を伝え聞いた何人かは必ず疑いを持ちます。そして私が寝起きを共にしてしまえば、その話は真実味を帯びてしまうのです」
サファイアがぐっと言葉を呑みこんだ
「この件をやりおおせた暁には、私は婚約を解消する所存でおります。リリアーナ様の将来の為にも、醜聞に繋がるような火種が欠片もあってはならないのです」
「分かったわよ――!」
腰を下ろすサファイアにクリスティアナが宥めるように話し掛けた。
「サファイア、カイトは…」
「姉様、大丈夫。カイトがリリアーナのためを想って進言しているのは、私も分かっているから」
その後もリリアーナ警護の細部までを出席者で話し合う。
「ルイス王子は三日後にリーフシュタイン城に到着をする。下手に機嫌を損ねて契約書の件を出されると厄介だ。表向きは親しみを持って、友好的な態度で接するように。あとは全員気を引き締めて、リリアーナをルイスから守ってくれ」
アレクセイの言葉で会議は終了をした。会議室を出ると、乳母のエマに抱っこをされたリリアーナと、護衛に付いている女性騎士がこちらに向かって歩いてくるところだった。
リリアーナがカイトが出てくるのを見つけて、乳母に下ろすよう命じた。
「カイトー!」
ててて、と走ってくるリリアーナに向かってカイトもすぐに駆け寄り跪く。
「リリアーナ様。どうなさったのですか?」
「カイトがずっと来てくれないから来たの」
リリアーナが両手を伸ばしてきたので、抱き上げながら立ち上がる。エマも駆け寄ってきた。
「待てども待てどもカイトが来ないから、痺れをお切らしになって」
ルイス到着まで日にちが迫っていたので、一度の会議で全てを話し合っておかねばならず長時間を要したのである。アレクセイが会議室から出てきて笑顔で近付いてきた。
「リリアーナ喜べ。婚約解消は延期だ」
「ほんとうに!?」
アレクセイの言葉にリリアーナは大喜びをし、カイトの腕から身を乗り出して頬に感謝のキスをした。
「え……?」
「実はリリアーナから頼まれていたんだ。カイトと結婚をしたいから婚約解消の手続きを遅らせてくれって」
カイトは驚きの表情で腕の中のリリアーナを見やる。
「リリアーナ様。この間お話をして、納得して頂けましたよね?」
リリアーナが首を振る。
「ちがう。カイトが勝手にしゃべっただけ。リリィはいいって言ってない」
「リリアーナ様――」
カイトが何とも言えない困り顔になり、続々と会議室から出てくる者達は二人を見て興味津々の表情になる。
「婚約者だからチュッてして」
「え……!?」
リリアーナが目を瞑り、可愛らしいさくらんぼのような唇を突き出した。珍しくカイトの精悍な顔が赤みを帯び、周りの人間の足取りが極端に遅くなった。
「カイト。起きている間中リリアーナに貼り付け! 婚約解消は延期だ。ルイスに狙われているからにはお前が婚約者であるという事実、奴に対しての盾が必要だ!」
「かしこまりました」
カイトがアレクセイに向かって神妙な面持ちで頷いた。
「いっそのこと寝起きを共にすればいいのでは? それが一番安心よ」
周りがシーンと水を打ったように静まる中、アレクセイが発言の主に呆れ顔を向ける。
「サファイア、お前は口を慎め――」
「だって、本当のことじゃない。ルイス王子って随分と悪知恵が働くんでしょう? いつ何が起こるか分からないのよ? 余計な心配をしなくてもリリアーナは今子供なんだし、カイトが寝食を共にして張り付いているのが一番安全だと思うけど」
「言い分は最もだがお前の言っている事は…」
「私は`お前 ‘ じゃなくて、サファイアという名前があるの」
「……サファイアの言っている事は…!」
「アレクセイ様」
「何だカイト?」
「私からサファイア様に意見を申し上げる許可を頂けますでしょうか」
アレクセイが安堵の溜息を吐く。
「お前に任せる。どうも、身内が相手だとヒートアップをしてしまって……」
カイトはリリアーナ付きの騎士なので、中央の席についている。彼は身体をサファイアに向けた。
「サファイア様、恐れながら申し上げます。ルイス王子は性格的に褒められた人物ではありません。リリアーナ様を手に入れられなかった際は、腹いせによからぬ噂も平気で流すでしょう。例えば `婚約者を気取る男が、まだ5歳の姫君の寝室に現を抜かして入り浸っていた ‘ などと」
周りが息を呑み、サファイアが音高く席から立ち上がった。
「そんな下衆な話! ルイス王子の言うことなんて、誰も信じないわ! それにリリアーナはまだ5歳なのよ。 あなたの性格を皆も知っているし、リリアーナに不埒な真似を働くなんて誰も考えないわ!」
「はい――大半の人間はそう思うでしょう。しかし、話を伝え聞いた何人かは必ず疑いを持ちます。そして私が寝起きを共にしてしまえば、その話は真実味を帯びてしまうのです」
サファイアがぐっと言葉を呑みこんだ
「この件をやりおおせた暁には、私は婚約を解消する所存でおります。リリアーナ様の将来の為にも、醜聞に繋がるような火種が欠片もあってはならないのです」
「分かったわよ――!」
腰を下ろすサファイアにクリスティアナが宥めるように話し掛けた。
「サファイア、カイトは…」
「姉様、大丈夫。カイトがリリアーナのためを想って進言しているのは、私も分かっているから」
その後もリリアーナ警護の細部までを出席者で話し合う。
「ルイス王子は三日後にリーフシュタイン城に到着をする。下手に機嫌を損ねて契約書の件を出されると厄介だ。表向きは親しみを持って、友好的な態度で接するように。あとは全員気を引き締めて、リリアーナをルイスから守ってくれ」
アレクセイの言葉で会議は終了をした。会議室を出ると、乳母のエマに抱っこをされたリリアーナと、護衛に付いている女性騎士がこちらに向かって歩いてくるところだった。
リリアーナがカイトが出てくるのを見つけて、乳母に下ろすよう命じた。
「カイトー!」
ててて、と走ってくるリリアーナに向かってカイトもすぐに駆け寄り跪く。
「リリアーナ様。どうなさったのですか?」
「カイトがずっと来てくれないから来たの」
リリアーナが両手を伸ばしてきたので、抱き上げながら立ち上がる。エマも駆け寄ってきた。
「待てども待てどもカイトが来ないから、痺れをお切らしになって」
ルイス到着まで日にちが迫っていたので、一度の会議で全てを話し合っておかねばならず長時間を要したのである。アレクセイが会議室から出てきて笑顔で近付いてきた。
「リリアーナ喜べ。婚約解消は延期だ」
「ほんとうに!?」
アレクセイの言葉にリリアーナは大喜びをし、カイトの腕から身を乗り出して頬に感謝のキスをした。
「え……?」
「実はリリアーナから頼まれていたんだ。カイトと結婚をしたいから婚約解消の手続きを遅らせてくれって」
カイトは驚きの表情で腕の中のリリアーナを見やる。
「リリアーナ様。この間お話をして、納得して頂けましたよね?」
リリアーナが首を振る。
「ちがう。カイトが勝手にしゃべっただけ。リリィはいいって言ってない」
「リリアーナ様――」
カイトが何とも言えない困り顔になり、続々と会議室から出てくる者達は二人を見て興味津々の表情になる。
「婚約者だからチュッてして」
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