不死者となった少年傭兵~僕は殺されても死にません。あ、お前らはちゃんと死ぬけど~

カイガ

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51「vsミラ・リリベル」②

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 ヤバいなあ………想像以上の強さだ。
 剣の技量も魔力の強さも、素手での戦いすらも彼女の方がずっと上だ。
 そのうえ相手の行動を読むことが出来るのと、剣やら銃やらの武器に長けているという二つのパッシブスキル持ち………あまりにもぶっ壊れている。
 
 これが、ミラ・リリベル……一等騎士の王国最強級の騎士か。
 ぶっちゃけ、このままでは絶対に勝てない。彼女を超えるにはあと何回殺されれば良いのだろうか。
 ただ殺されれば良いってものじゃない。こちらの手の内不死のスキルがバレてしまっては、彼女はすぐさま対処しにくるだろう。
 意識を奪われようなら、そこで詰みだ。無力化されれば反撃のしようがない。
 今回の相手はマストールの時のようにはいかない。二度三度殺された程度じゃ越えられないレベルの強さだ。
 
 僕を殺して隙を見せたとしても、僕レベルの不意討ちしても返り討ちされるのがオチだろう。
 あらゆる最悪を想定しながら慎重に、確実な一手を打たないと……負ける。

 そう考えつつリリベルさんに軽口を投じながら、「身体修復」でこのボロボロで死にかけの身体の傷をとりあえず全快させた。
 すると彼女から初めて戸惑いの表情が見られた。

 「ここまでかなりの攻撃をくらったきみの身体は、ボロボロだったはず。なのに今のきみの体には傷が全く見られない。一体どういうこと?」

 リリベルさんの疑問はもっともだろう。短時間でどんな傷も塞ぎ全快させるなんてアクティブスキル、初見ならまず見抜けない。

 「さあ?一体どういうことなんでしょうね―――!」

 全力を込めて双剣をその場で振り抜き、魔力の斬撃を飛ばす。「報復精神」により威力は倍、いくら一等騎士でもこれを真っ向から受けられるか!?

 「ズルい。私はきみの疑問に色々答えてあげたのに」

 人間離れした跳躍で正面からの斬撃を回避したリリベルさんは、空中でそんな不満をこぼす。

 「申し訳ないです。でも、そんな余裕見せて良いんですか?」

 すぐさま二撃目を放ち、空中の彼女を狙い撃ちにした。しかし彼女は空中でさらに跳躍してみせ、これも避けたのだった。
 空中でさらに跳躍って……あれはそういうアクティブスキルなのか。何て器用な。

 「きみは本当にいったい、何者?」

 リリベルさんはさらにもう一度……いや二度虚空を蹴って、空中移動してみせて僕に迫ってきた。僕は双剣を一旦納めて、手から魔力をレーザー状で撃って、彼女を撃ち落としにかかる。彼女はこちらへの接近を諦め、急降下してレーザーを回避した。
 彼女の目は変わらず、僕が何者なのかと訴えている。彼女にとって僕はこれまでとは違う相手のようで、慎重な立ち回りをするようになっている。

 ここは揺さぶるついで、さっき聞きそびれたことを尋ねてみようかな。僕をこの場所まで誘導させ、見事としか言えない采配をやってみせた優秀な指揮官は、一体誰なのかを……。
 そう質問しながら僕は魔力を様々な形状で撃ち、遠距離攻撃を仕掛ける。

 「ん、今回の任務、全部隊を指揮しているのは、騎士団団長。階級は“特等”で、騎士団で一番強い人」
 
 魔力攻撃を対処しつつリリベルさんはこれにも律儀に答えてくれた。この人、実は結構良い人なのでは?
 それにしても全体を指揮しているのが騎士団の団長《トップ》で、「騎士団で一番強い人」ときましたか。彼女がそう言うってことは、その人は彼女以上の化け物ってことになる。
 というか特等騎士って実在してたんだ……噂じゃあ一人で一国の軍隊を壊滅させられるくらいの強さとか。頭脳明晰で武力も騎士団ナンバー1……まさに「最強」って奴だね。

 その団長さんが僕の対処としてリリベルさんを一人ここに配置させた。彼女本人も僕の相手は自分一人が妥当である的なことを言っていた。それがどういう意味を示してるのか。
 さっきの対話で彼女は自分一人で戦う方がやりやすいと言っていた。それは一人でいるのが好きとかいう意味ではない。一人だけで戦うことが、騎士団にとってもっとも最適で被害を抑えられるから。
 部下たちを巻き込みたくない、そもそも足を引っ張る要因にしかならないから、被害が及ばないところで待機させ、指示を出せばすぐに駆けつけられるようにしている……そんなところだろうか。

 とにかく、僕の対処にはミラ・リリベルといった一等騎士、もしくは特等騎士の団長の一人さえいれば、それで事足りるということなのだろう。実際、僕は一等騎士の彼女に打ちのめされているしね。
 僕を舐めてるってわけじゃない。それが最適解なだけ。指揮官もリリベルさんの判断も、何も間違っちゃいない。

 そんなこんなで僕は今ピンチ…大ピンチに陥っている。しかし、これを覆せればチャンスに転じられるだろう。
 僕の行く道を塞いでいるのはミラ・リリベルただ一人。彼女を倒しさえすれば、後はちゃちゃっと港町に潜入し、出航する船に潜伏するだけ。

 「………勝つとか負けるとか、もうそんなのどうでもいいや。僕がやることはただ一つ、あなたを倒すことだ!」

 完全な上位互換だろうが知ったことか。遂行出来なければ終わる。なら、もうやるしかないんだ!

 「すーーーっ」

 一呼吸の後、

 ドウッ これまでで一番強力な魔力の塊を撃ち出した。リリベルさん……いや、リリベルはこれも剣で斬りにかかる。が、魔力の塊は斬られることなく、彼女をぎりぎりと押しとどめる。

 「………っ」

 好機とばかりに僕は全速力で駆け出して、抜剣と同時に鋭い三日月状の斬閃を放つ。

 「………! 『空塊の壁エア・ブロック』」

 リリベルは魔力の塊を剣で防ぎつつそう詠唱し、前方に見えない何かを発生させて、斬撃を防いだ。空気の壁?風の魔術を防御に応用させたのか。

 「……きみの魔力の質が急激に上がった。まともにくらえば無事に済まないレベルの魔力の塊」

 そう呟くとリリベルはもう片方の手で短い剣を引き抜くと、僕がさっき放ったのと同じ飛ぶ斬撃を放ち、魔力の塊をぶった切ってみせた!斬撃はまだ残ってる、こっちに飛んでくる…!
 横に跳んで斬撃を躱し、さっきと同じ威力を誇る魔力の砲撃を、今度は双剣を介して撃ってやった。

 「……!武器を介して、魔力を放ってきた?」

 リリベルから驚きの声が漏れる。砲撃は彼女のもとへ正確に誘導され、穿ちにかかる。

 『雷球《サンダーボール》』

 リリベルの掌から球体状の電撃が放たれる。人間サイズはある球体の電撃は僕が放った魔力砲撃と激突し、空中でせめぎ合う。
 光を電撃に変えるだけでもかなりの技量だというのに、ここまでの高威力のを出せるなんて、この人は魔術も超一流だなっ!

 だけど、こっちも彼女に負けなくらいの器用さを発揮させている。これだけの高密度で高威力の魔力を放ってるのに、攻撃の媒体となっている双剣は壊れてない。
 これまでの戦いを経て、僕は繊細で緻密な魔力の操作と調節が出来るようになっている。こんな風に、武器を媒介にした魔力の砲撃だって放てるようになった。

 さらに、こんな芸当だって出来るよ―――!

 「分散!!」

 意識を集中させ、魔力の流れを思い通りに操作―――すると一直線状に放たれている魔力が幾条もの線となって分散され、さらには電撃の球体を避けて、リリベルに向かって一斉に飛来していった!
 
 「……!?」

 これには彼女も目を驚きに見開き、次の魔術を放つ間はおろか剣を振るう間もなく、複数の魔力の光線をその身に受けたのだった。
 同時に、こちらも彼女が放った電撃の球体をその身に受けてしまう。

 「ぐ、、、うぁあああああああああああああっ」

 電撃の激痛で意識が飛びそうになる。いや……激痛のあまり逆に意識が保っていられてる。今の魔術で全身は再びボロボロになってしまった。
 しかしどれだけ身体を損傷しようが、僕には「身体修復」がある!電撃によって傷と火傷だらけとなった身体がたちまち元通りに回復していき、やがて全快した!

 「はあ、はあ………傷を治すのにも体力を使うから、あまり多用は出来ないな」

 魔力での攻撃の分も考えて、使えるのはあと3回、いや2回か?それ以上使うと意識が飛んで、詰みだ。
 
 リリベルがいたところは魔力の爆発による煙でよく見えない。彼女は今ので倒れてくれただろうか。意識を失うところまでいってたらパーフェクトなのだが……

 『風太刀《エアスラッシュ》』

 突如として煙が霧散し、一陣の風が吹きつけてきたと同時に、身体のあちこちに裂傷が走った。魔力を鎧のように身体に纏わせて、何とか被ダメージを抑えてみせる。 
 風が止んだことでようやく前を見ると、ミラ・リリベルの姿が見られた。やっぱりね、まだまだ元気そう。
 ただ…さすがの彼女も、さっきの攻撃で傷を負っているようだ。露出している肌には焦げ痕がいくつか見られる。
 ここまでやってようやく彼女にダメージらしいダメージを負わせることに成功。戦いはこれから………と思ったその時、


 「今ので分かった………きみを拘束し無力化させるのは無理そう」

 リリベルの呟きを聞いた途端、背筋にぞわっと寒気が走り、嫌な予感がよぎった。

 「よって、標的を非殺傷攻撃のみでの制圧を断念。これより、標的への殺傷攻撃を解禁。標的の討伐にかかるとする―――」

 そう宣言するとリリベルから恐ろしい殺気《プレッシャー》が放たれた…!
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