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第二章 人気者の裏の顔

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「雪ー」

お母さんに名前を呼ばれ我に返る。
寝っ転がったベッドから、起き上がるのもめんどくさくて「はーい」と少し大きめの声で返事をした。

「朝ごはん用の食パン、無くなっちゃったから買ってきてー」

要件を聞いて私は思わず顔をしかめた。今日は家にいたいのに。
返答せずに黙っていると、「買ってこないと朝食何も無いからね」と、続けてお母さんが補足した。
パンを食べなきゃ一日が始まらない、という謎のプライドを持つ私は、しぶしぶ体を起き上がらせ、重たい足取りで階段を降りる。

「はいこれお金、あと袋」

「うん、行ってきまーす」

お母さんから必要なものを貰い、靴を履いてドアノブに手をかけた時、あ、と今の自分の格好に気がつく。
ダボッとしたパーカーに緩めの半ズボン。
一回部屋に戻って外行き用の服に着替えるか迷ったが、買い物をすると言っても、すぐ近くだしまぁいっかと、結局そのまま家を出た。

外は清々しい晴天だった。
慣れた道を小石を蹴りながら進む。

「月曜日の学校行きたく無いなぁ……」
正確に言えば、特定の人物に会いたくないだけなんだけど。まだ土曜なのに、夏休みの最終日みたいな憂鬱とした気分だった。

そのまま歩き続けているとコンビニが見えてきた。家からの距離も近いので、ここのコンビニには頻繁に買い物へ来る。

店の中へ入り、食パンを手に取った私は、そのままレジのある方へと向かった。
途中、スイーツコーナーが目に入り、進めてた足を思わず止める。

「甘いもの……食べたいな。買える分のお金はあるし、後でお母さんに返せばいっか」

欲に負け、モンブランへ手を伸ばした時、後ろから肩を叩かれた。
叫びそうになり口を手で覆う。
「ゆきちゃん」
聞きなれた声とよく知る姿、そこには蒼太くんが居た。

「え、蒼太くん ?」

ぽかんと驚いてる私とは反対に蒼太くんは機嫌が良さそうにはにかんでいる。

「まさか土曜日にゆきちゃんに会えると思わなかった」
「あ……うん。私も会うとは思ってなかったからびっくりした」
 
蒼太くんの顔が見られない。
昨日より更に膨らんだ罪悪感が胸をキリキリと締め付ける。
ついたばかりだが、もう家へ帰りたい。というかやっぱり服、着替えればよかった。

「ゆきちゃんは何買いに来たの ?」
「え、あ、朝ごはん用のパンを……」
「そうなんだ !僕も明日からパンにしようかな」

パン美味しいからいいと思うよ……と適当に返事をし、愛想笑いをする。
早くこの場から去りたかったが、なんだか言い出しづらくて、「蒼太くんは何買いに来たの ?」と質問した。

「僕は、ちょっと早いけど昼ごはんを買いにきたんだ」

蒼太くんが持っているかごの中を見ると、確かに食べ物がたくさん入っていた。けれどほとんどがカップラーメンだし、一人用にしては多すぎる。

家に溜めとくのかな?お母さんとかには作ってもらわないのかな?そんな疑問が浮かんだが、聞いてはいけない気がしてそのまま飲み込んだ。

「ゆきちゃんこの後そのまま家に戻るの ?」
「うん」
「家まで送るから一緒に帰らない?」
「えっと……いいよ」

蒼太くんからの提案に了承してしまい、二人で帰る羽目になってしまった。
断ればいいと思うかもしれないが、そんなに簡単ではないのだ。人から嫌われるのは嫌だし……
相変わらず蒼太くんは話上手で、話題に困る事は無かった。

「あ、着いたね、じゃあまた月曜日」
「またね」

私の家の前に着くと、蒼太くんは踵を返して歩き出した。
私も玄関のドアを開ける。その時、ポケットの中に入れていたスマホが振動した。
取り出し画面を確認する。

――明日暇 ?

そんなメッセージが達也くんから届いていた。



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