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第二章 人気者の裏の顔

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「いっ……」

「え、そっち ?」

ズキズキとした痛みと、一点に集中する熱によって自分が今、叩かれた事を理解した。
脳の処理が追いつかず、右のほっぺを抑えながら目の前の女の人を見る。

(なんで私、叩かれてるの ?)

ひとつの疑問が湧き、私の頭の中を埋めつくした。
憎いやら最低やら達也くんに対していっていたのに、離れようとしなかった私への罰だろうか。
罰を下した張本人は、小さくあっ、とつぶやく。
表情から焦っているのが伝わってきた。

(あぁそっか……そのくらい達也くんが好きなんだ)

感情が高ぶってる状態でも、達也くんに手を出す事はしなかった。そのせいで私が被害を受けたわけだけれど。
私を叩こうとして叩いたわけではなくて、カッとなった感情がこちらにきたのだ。

目の前にいる女の人は逡巡した後、小走りで公園から出て行ってしまった。
残った私と達也くんの間に気まずい沈黙が流れる。
水滴が伝う感覚があり、頬を拭った。

「なんで、私泣いて……」

自分が涙を流している理由が分からず、困惑しながら目元をこする。しばらく私がそうしてつっ立っていると、後ろからジャリっと小石の音がした。
少し時間を置いた後に、ゆっくり後ろを振り向く。
達也くんはどこかへ向かって歩きだそうとしていた。

私の事をめんどくさく思って帰ろうとしているのか、達也くんは泣く女の人が嫌いそうだもんな、そう思ったら鼻の奥がツンとして、視界がぼやけ始めた。
下を向き、グッと耐える。
数分経った後、私の頭に影がかぶさり、頬がヒヤリとした。

「わっ、え ?」
「これやる」

びっくりして顔をあげると、息を切らした達也くんがいて、手にはスポーツドリンクがあった。
ぐいぐいと押し付けられ、両手で受け取る。

「な、なんで ?」
「別になんでもいいだろ、ほっぺ冷やしたら」

首をかきながらそっぽを向く達也くんは、バツが悪そうな顔をしていた。

「あ、うん。ありがとう」
「ん。……そのさ……えっと」

ぽつりぽつりと何かを告げようとした達也くんの事をじっと見つめていると、私と目線を合わせた後、口をぎゅっと結び、なんでもない、と小さな声で答えた。

首を傾げながら私も、そっか、と言葉を返す。

「昼は」
「え、昼? 」
「もう食った ?」
「まだ食べてないけど」
「ふーん」

達也くんにいきなり腕を掴まれた私は、慌ててどこへ行くのかと質問した。

「どこって、飯食いに行くんだよ、まだなんだろ?」
「そうだけど、私、あんまりお金無いから高いとこは……」
「俺が払うから」
「え、悪いから大丈夫だよ、自分で払う」
「いいから」

ピシャリと強い口調で言われ、私は何も返せなかった。



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