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出会い
閑話1 風の精霊王シリルside
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僕は風の精霊王である。古の時代から僕ら精霊は人や仲間を見守りながら共に暮らしてきた。
しかし僕は長い間眠っていた。疲れたのだ。
昔は皆精霊と暮らし、平和だった。
しかし、いつの時代からか人間は皆欲望に満ち溢れるようになり、精霊たちは姿をあまり見せなくなった。僕はそれから幾度か起きて人々の生活をのぞいてみたが、それは酷いものだった。
ある国の王は、僕の仲間を召喚し契約を破れないことを良い事に、精霊の力を悪用した。そしてとても人の心があるとは思えないほど残虐の限りを尽くし、人を自然を破壊していった。
また、ある国であまり欲に汚されていない心があるからとそばで守っていたら、自分は精霊に守られているんだと言い、聖女とやらにまでなり、瞬く間に悪に染まっていった。
そんな時、我らが神が精霊王達へ「愛し子だ。大切にせよ。」とシヅルを僕らのもとに送ってきた。シヅルは元居た世界からさらってきた子供のようで何やらつらい状態にあったらしい。
風魔法に特化した身体を神がお創りになったようだったから僕が一旦面倒を見ることになった。今回もきっと邪の心に飲み込まれるんだろう、そう思い観察していたがシヅルは違った。
彼はそもそも争いごとに興味がなく、むしろ自分が人に好かれることなんてないと思い込んでいる。しかし、意外と悲観さは見られず、自分にできることをやるということに専念している。そして、自分の見た目がもとの世界にいた時のせいかコンプレックスになっていて顔を厳重に隠している。そんなことないのに。ふわふわとした触り心地のよさそうな髪の毛や猫のような目もすべて僕にとってかわいい。要は、彼はただ自己評価が低いだけでなく、その奥に隠れた純粋な温かみや情深さがあるそんな子だ。
毎日本を読みあまりものを食べなく、寝ないシヅルが心配になったが、本で一喜一憂したり楽しんでいる様子をみて嬉しかった。また、料理や掃除がうまくいかないと自分を卑下しているシヅルに胸が痛んだ。だけど、いつまでも人と関わらずに生きていくのは難しい。中にはきっと心優しい人間もきっといるはずだ。
だから、あのエディアスとかいう奴と関わるのを止めなかった。
森への襲撃だ。ここ最近人間からの襲撃が起きることなんてなかった。ましてや今回は人間だ。僕が広範囲の結界を張って守ろうかと思っていたら、心優しいシヅルはあの野郎を逃がすためにおとりになることにしたのだ。
人間に捕まった時もあの野郎を逃がすことばかり考えていて、まるで自分の身について考えていなかった。僕のシヅルなのに自分で自分の身体を大事にしないところが、愛おしくもあり、腹立たしさもあった。
大勢に向かって剣を抜かずに立ち向かうところがシヅルらしい。だけど危険だと思い、僕がシヅルのところへ行くとすでに精霊たちがシヅルを助けていた。
精霊は自分たちの領域に血が流れることを嫌うものが多い。そもそも僕らが森に侵入されて怒らないわけがないからね。それに、シヅルは精霊たちの中で人気者だからな。
そして、せっかく逃げられるというのにあの野郎が捕まっていると勘違いしたシヅルはゆっくりと剣を置き、手を挙げた。こんな状態でもまだ逃がす方法を考えている。
『大丈夫だよ。ソイツに対する悪意はそんなに感じられない。どちらかというと、シヅルに対する警戒の方が大きい。』
『ってことは、エディの敵ではないってこと…?』
『そんなもんわかんないけど……。』
正直言って僕としては僕のシヅルをこんな風に睨んでくる奴らを殺してやりたいんだよね。っとこんな風に言うとシヅルがびっくりしてしまうだろう。言動に気をつけなきゃ。
そう思っていたら、シヅルはいきなり現れた男に助けられていた。なんだこいつは?やけにシヅルを気にかけている。
今回の騒動はあのエディアスとかいう奴が裏切られたのが原因だったらしいが、味方までも敵だと思い込んでいたため事態が大きくなったのだった。何となく理解できてたシヅルがすごい。
そうこうしているうちにシヅルは変な誤解をされたまま騎士団へ入団することになった。変な誤解といってもシヅルがこれまで精神的につらい状態に置かれていたことは間違いない。今の時代の国の国王がどんな感じなのかは分からないがもしもシヅルに害を与えるやつならさらってでもシヅルを引き離そう。僕は人型にはなれるが完全な人にはなれない。だからシヅルにはいろんな人と関わって、今までシヅルが関わってきた人間ではなくシヅルに優しい人もいるのだと知ってほしい。
しばらく観察していると、あのシヅルを助けた男は人間なのに竜人の血が混ざっているようだ。あのエディアスという奴よりと比にならないくらい濃く受け継いでいる。だからか、一瞬でシヅルを運命だと感じたのだろう。全く、これは少々面白いことになりそうだ。我らが神はどうしてここにシヅルを送ったんだ?相変わらず考えていることが分からない。竜人は番主義だから傷つけるなんてまねはしないはずだけど、シヅルは鈍感だしこいつは不器用そうだなぁ。しかし、顔がいかついのと不器用すぎてシヅルには嫌われていると誤解されっぱなしだ。一方のシヅルはなんらかの影響をうけたのかやけにその男に対する反応が良い。ちょっと苛立つがこの分じゃ当分の間は気持ちが伝わることがないだろう。
さて、こいつは僕のシヅルを手に入れられるかな?
しかし僕は長い間眠っていた。疲れたのだ。
昔は皆精霊と暮らし、平和だった。
しかし、いつの時代からか人間は皆欲望に満ち溢れるようになり、精霊たちは姿をあまり見せなくなった。僕はそれから幾度か起きて人々の生活をのぞいてみたが、それは酷いものだった。
ある国の王は、僕の仲間を召喚し契約を破れないことを良い事に、精霊の力を悪用した。そしてとても人の心があるとは思えないほど残虐の限りを尽くし、人を自然を破壊していった。
また、ある国であまり欲に汚されていない心があるからとそばで守っていたら、自分は精霊に守られているんだと言い、聖女とやらにまでなり、瞬く間に悪に染まっていった。
そんな時、我らが神が精霊王達へ「愛し子だ。大切にせよ。」とシヅルを僕らのもとに送ってきた。シヅルは元居た世界からさらってきた子供のようで何やらつらい状態にあったらしい。
風魔法に特化した身体を神がお創りになったようだったから僕が一旦面倒を見ることになった。今回もきっと邪の心に飲み込まれるんだろう、そう思い観察していたがシヅルは違った。
彼はそもそも争いごとに興味がなく、むしろ自分が人に好かれることなんてないと思い込んでいる。しかし、意外と悲観さは見られず、自分にできることをやるということに専念している。そして、自分の見た目がもとの世界にいた時のせいかコンプレックスになっていて顔を厳重に隠している。そんなことないのに。ふわふわとした触り心地のよさそうな髪の毛や猫のような目もすべて僕にとってかわいい。要は、彼はただ自己評価が低いだけでなく、その奥に隠れた純粋な温かみや情深さがあるそんな子だ。
毎日本を読みあまりものを食べなく、寝ないシヅルが心配になったが、本で一喜一憂したり楽しんでいる様子をみて嬉しかった。また、料理や掃除がうまくいかないと自分を卑下しているシヅルに胸が痛んだ。だけど、いつまでも人と関わらずに生きていくのは難しい。中にはきっと心優しい人間もきっといるはずだ。
だから、あのエディアスとかいう奴と関わるのを止めなかった。
森への襲撃だ。ここ最近人間からの襲撃が起きることなんてなかった。ましてや今回は人間だ。僕が広範囲の結界を張って守ろうかと思っていたら、心優しいシヅルはあの野郎を逃がすためにおとりになることにしたのだ。
人間に捕まった時もあの野郎を逃がすことばかり考えていて、まるで自分の身について考えていなかった。僕のシヅルなのに自分で自分の身体を大事にしないところが、愛おしくもあり、腹立たしさもあった。
大勢に向かって剣を抜かずに立ち向かうところがシヅルらしい。だけど危険だと思い、僕がシヅルのところへ行くとすでに精霊たちがシヅルを助けていた。
精霊は自分たちの領域に血が流れることを嫌うものが多い。そもそも僕らが森に侵入されて怒らないわけがないからね。それに、シヅルは精霊たちの中で人気者だからな。
そして、せっかく逃げられるというのにあの野郎が捕まっていると勘違いしたシヅルはゆっくりと剣を置き、手を挙げた。こんな状態でもまだ逃がす方法を考えている。
『大丈夫だよ。ソイツに対する悪意はそんなに感じられない。どちらかというと、シヅルに対する警戒の方が大きい。』
『ってことは、エディの敵ではないってこと…?』
『そんなもんわかんないけど……。』
正直言って僕としては僕のシヅルをこんな風に睨んでくる奴らを殺してやりたいんだよね。っとこんな風に言うとシヅルがびっくりしてしまうだろう。言動に気をつけなきゃ。
そう思っていたら、シヅルはいきなり現れた男に助けられていた。なんだこいつは?やけにシヅルを気にかけている。
今回の騒動はあのエディアスとかいう奴が裏切られたのが原因だったらしいが、味方までも敵だと思い込んでいたため事態が大きくなったのだった。何となく理解できてたシヅルがすごい。
そうこうしているうちにシヅルは変な誤解をされたまま騎士団へ入団することになった。変な誤解といってもシヅルがこれまで精神的につらい状態に置かれていたことは間違いない。今の時代の国の国王がどんな感じなのかは分からないがもしもシヅルに害を与えるやつならさらってでもシヅルを引き離そう。僕は人型にはなれるが完全な人にはなれない。だからシヅルにはいろんな人と関わって、今までシヅルが関わってきた人間ではなくシヅルに優しい人もいるのだと知ってほしい。
しばらく観察していると、あのシヅルを助けた男は人間なのに竜人の血が混ざっているようだ。あのエディアスという奴よりと比にならないくらい濃く受け継いでいる。だからか、一瞬でシヅルを運命だと感じたのだろう。全く、これは少々面白いことになりそうだ。我らが神はどうしてここにシヅルを送ったんだ?相変わらず考えていることが分からない。竜人は番主義だから傷つけるなんてまねはしないはずだけど、シヅルは鈍感だしこいつは不器用そうだなぁ。しかし、顔がいかついのと不器用すぎてシヅルには嫌われていると誤解されっぱなしだ。一方のシヅルはなんらかの影響をうけたのかやけにその男に対する反応が良い。ちょっと苛立つがこの分じゃ当分の間は気持ちが伝わることがないだろう。
さて、こいつは僕のシヅルを手に入れられるかな?
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