花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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古いお屋敷の市松人形<2>

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「たま」と名乗る市松人形の付喪神は話を続けた。

「わらわの本体は納屋の中にあるのだが、その納屋の建物自体がたおれかかっていて扉が開かぬのじゃ」

「じゃあそこから本体を取り出せば…」

「そう簡単にはいかんのだよ、先の大雨で裏山の崖が崩れてな、大岩が建物に寄りかかっておる、それをどかさぬことにはいずれ押し潰されるだろうな…」

「どうすればいいんだ…」

 とりあえずかずま叔父さんと相談して何か方法を探すしかないだろう。



「…そうか、わかった」

 僕の話を聞いたかずま叔父さんは息子さんに向かって言った。

「少し時間をください、土木作業のプロを呼ぶ必要がある」

 叔父さんは携帯電話でどこかへ電話をかけ始めた。

「…そうです、よろしくお願いします」

 そう言って電話を切った叔父さんは「すぐに現場を見にきてくれるらしい」
 と言った。

 しばらくして一台の車がお屋敷の前に止まり、日に焼けた体格のいい男性が降りてきた。

「先生、お待たせしました」

「すみません社長、こっちです」

 かずま叔父さんとその男性は現場を見ながら話をしていた。

なんでも遺跡調査などを専門にしている土建会社らしく、その関係で叔父さんがお祓いなどを手掛けているそうだ。

「なんとかなりそうですね」

「ほかならぬ先生の頼みだ、断るわけにはいきませんよ」

 男性は笑いながらそう言って帰っていった。

「重機と作業員の手配が出来次第取り掛かってくれるそうです」

 数日後、大岩の撤去の準備ができて僕たちは再びお屋敷へ向かった。

 建物が倒れないように細心の注意を払いながらの作業だった。

 やがて大岩が除けられて作業員のおじさんが納屋の扉を開けてくれた。

「たける、頼むぞ」

 そう言われて僕は納屋の中へ入り、しばらく探して目的のものを見つけた。

「あった!」

 桐の箱に入った市松人形だった。

「それだよ…外に出しておくれ」

 たまの声が頭に響いた気がした。

 そして僕はその人形をおばあさんに渡すと、人形を愛おしそうに撫でながら
「たま…今までありがとう」
 そう呟いて涙を流した。

 結局息子さんの意向で人形は僕たちが引き取って供養することになったのだけど、思うところがあって僕の家に引き取ることにした。

 もちろん母さんにも相談して許可は取った。

 こうして市松人形の付喪神「たま」は僕の家にやってきた。

 今日も学校から帰るとたまが出迎えてくれた。

「たける兄さま~おかえりなさーい!」

 そう言って玄関先で僕に抱きついてくる。

「こらーっ!たま、ずるい!」

 にあが後からやってきて不満げな顔をしている。

「わらわの方が先じゃ!にあ姉さまは後でなっ!」

「もうっ!」

「にあ…」

「んっ…♡」

 僕は膨れっ面のにあに目くばせしてたまの頭越しにキスをした。

 また一人仲間が増え、僕の家は賑やかになっていった。
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