花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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龍神のうろこ<1>

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小さなみずきさんは話を続けた。

「この祠が壊されてから、お主が来るまであの猫又はここで雨風を凌いでいたのだが、いよいよ生命の火が消えようとしていたのでな、わたしが念を送った」

「それじゃあ…」

「そう、たまたま念を受けたのがお主というわけだ、まぁどこかで猫又の思念が作用したのかもしれんがな…」

そう言ってみずきさんは腕組みをした。

「でもなぜみずきさ…あなたはここに残ったんですか?その気になればにあと一緒に脱出できたはずでは?」

「……まぁ言うなればあの子の思いだな、お主のことを待ち焦がれていたからな」

「そんなことが…」

「それに村人が参ってくれているうちは祭神がここを離れるわけにはいかんだろ」

そう言われておばあさんの顔が僕の頭に浮かんだ。

こうしてみずきさんの分身と出会った僕ははからずも祠の再建に関わることになった。

しばらくして芝右衛門社長から連絡があり、例の発電所の建設に関わった関係者が検挙されて捜査が終了した事、
そして村人たちからの正式な依頼で祠の再建工事に取り掛かることになった事を知らされた。

僕は地鎮祭の祭祀を取り仕切ることなった。

…というのも僕が神職の勉強中だということを芝右衛門社長から聞いた村の人達がぜひ僕にということで依頼があったのだ、
まだ勉強中の身だということもあって最初は断ったのだけど、
芝右衛門社長からも頼み込まれて断れなくなってしまったのだ。

一応おじいちゃんにもお伺いを立てたのだけど、
「いい機会だから受ければいい」
とあっさり言われて神職としての初仕事という事になってしまった。

そして権利関係が不明だった祠は正式にうちの神社の分社という形で引き受ける事になった。

その辺りも芝右衛門社長の手腕という事を聞いてあらためて驚かされた。

そして地鎮祭の前の日、僕はひとりで祠の前に立った。

「みずきさん…この祠の建て直しが始まるよ」

「そうか、ではしばらくここから離れる事になるのか」

「そうだね、御神体はいったんうちの神社で預かる事になったよ」

「…いまさらだがわたしの本体と再会する事になるとはな」

「再会したらどうなるの?」

「それはわたしにもわからん…」

「そうなんだ…」

そして翌日、地鎮祭を迎え、僕はおじいちゃんに教わった通りの祭事を無事に執り行った。

終わった後、緊張の糸が切れて椅子に座り込んだ僕に手伝いに来てくれていたちぐささんが声をかけてくれた。

「たけるくん、おつかれさま」

「無事に終わってよかった…」

「立派にお務めできてたわよ」

「そうかな…」

こうしてあの祠を建て直す工事が始まり
、御神体はうちの神社で預かる事になり、みずきさんの分身は便宜上「うろこちゃん」と呼ばれる事になった。






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