異世界転生したので念願の魔法使いになるぞ! けれど現実は……甘くなかった。いや、こうじゃないだろう……

踊りまんぼう

文字の大きさ
7 / 11

第七話:魔法適性と教官の指導法

しおりを挟む
第七話:魔法適性と教官の指導法


「ふむ、やはり、光と闇は発動せずか……このあたりは適性が特に問題になるからな」

 教官は、手にした記録用紙に視線を落としながら、淡々とそう告げてきた。

 最初に魔力測定をした時に見るのは、いわゆる魔法使いとしての適性だそうで、講座を受けられるかどうかだけを簡単に見ているらしい。
 で、そんな魔力量だけの簡易検査では判明しない、得意属性について検査しているのだが、どうやら四属性魔法は平均的な適性らしい。

 なお私の魔力量は平均的で、特に突出した適性属性もないとのこと。
 残念ながら、転生特典でチート! 魔力無限、とかではないようである。

「でもライトボールは使えるんですけどね」

 思わず、疑問が口からこぼれた。
 ダンジョンとかでの明かりとして便利な魔法、これって光に属さないんだろうか。
 暗闇でポンと小さな光の玉を出すだけの魔法だが、これが意外と重宝する。

 私の問いかけに、教官は少々考え込むような仕草を見せた。

「そうだな、一応光にあたるといえばあたるみたいだが、基礎の魔法はそういう分類には入っていないみたいだな。あれはむしろ『生活魔法』に分類されることが多い。いわば『簡易照明』で、高度な『光魔法』とは一線を画す、ということだ」

「はぁ……そういうものですか」

 教科書を読み込んでみたが、まだ試行錯誤を繰り返している感があって、分類も結構あやふやだった。
 何というか、過渡期の混乱を感じさせる分類だ。

 ただ、前世から考えると実際に使ってみて思ったのは、やはりイメージが重要だということだった。
 なので、他の人の魔法行使を見てイメージ力を高めれば、もっと可能性は広がる……と思いたい。
 それに前世の記憶が、この世界にない便利なものを閃くきっかけになるかもしれない。
 有利なのはその辺りだけだろうけど、それでもないよりはあるほうがいいに決まっている。

 なんていうか、せっかくの魔法が存在する世界に生まれ変わったのだから、こう、光の槍とか格好良く出したいし、千本剣とか数の暴力みたいなパワー系魔法も使ってみたい。

「免許を取ったら、まずはカッコいいスポーツカーだぜ!」と意気込む若者と同じ心境である。そうは思うものの、まずは免許取得からしないといけない。
 魔法世界だけれど、その辺りは何というか妙に現実的だ。

 ……ちなみに、一部魔法は特殊免許が要るらしく、大規模範囲魔法を筆頭にさらに注意事項や罰則が増えるようで、何だかロマンと掛け離れていてさらにうんざりする。
「対物無制限」「対人無制限」の保険に加入しないと使えないとか、「使用前申請」「使用後報告」が義務付けられているとか、そういう類の話なのだろう。

「まあ、それでも、特性として四属性はなかなか居ないから誇っていいぞ」

 教官がそういって褒めてくれる。
 彼女はいつもの厳しい顔つきを少しだけ緩め、わずかに口角を上げた。

 その一言だけで、ちょっと誇らしげかつ得意げになって浮ついてしまう自分が居る。
 何というか、普段滅多に褒められることがないから、こんな簡単なことでコロッと舞い上がってしまう。
 ああ、そういえな自動車運転免許センターでも、教習所の先生に「なかなか筋がいいですね」なんて言われて舞い上がっていたっけ。

「あ、ありがとうございます」

 礼を口にして照れる私。
 その瞬間、教官のわずかに緩んでいた表情が、すっと元の厳しいものへと戻る。

「だが、褒められた程度で集中は乱さないほうがいい。油断一瞬怪我一生だ。それだけ、繊細で危険なものを扱っていることを忘れるな。集中を乱せば、どんなベテランだろうと暴発事故を起こす可能性はある。ましてやお前はまだヒヨッコだ。調子に乗るな」

 厳しい言葉を浴びせてくる教官。
 どうやらこうやっておだてて精神を揺さぶってくるのも授業の一環ぽいみたいだ。
 なんというドSっぷり。
 それに対して、すぐに乗せられ舞い上がるお調子者かつチョロイン(だが男だ)な自分が悔しい。
 教官の手の平の上でいいように転がされてしまった。

 でもこんな風に褒められて、おだてられるのも久しぶりだからいいじゃないかと、心の中で誰にともなく言い訳した。


 ああ、思い出したくもない社畜の日々。
 上司に怒鳴られ、頑張った企画も、目の前で何も言われずゴミ箱に捨てられた時は殺意が湧いたなぁ。
 けれど、そんな私も、後輩を迎えるようになってまだ良くも悪くも目をかけられていたのかもしれない。
 あの頃は、褒められることなんて皆無で、社内での「承認欲求」は常に飢餓状態だった。

 転生直前の前世では……新入社員の問題が上がっていた。「最近の若いもんは、すぐ褒めないと動かない」「打たれ弱い」「ロマンがない」などと、居酒屋で愚痴をこぼしていた上司たちの顔が浮かぶ。
  まあ『最近の若い者は……』は、年代問わない愚痴の筆頭らしいから、まあそういうものなのかもしれないが、確かにと私も思うところがあった。


 けれど今は私は魔法が使える世界に居るのだ。
 そんな前世のことは今はいい。目の前の教官は、厳しいながらもちゃんと私を見て、指導してくれている。
 それは、前世で上司から得られなかった、ある種の「まともな評価」だった。

「はいっ」

 はきはきと返事をして私は魔力の練りこみ、そして発動に集中した。
 今度は、ライトボールがもう少しだけ大きく、そして少しだけ長く、私の手のひらで輝いた。
 いつか、教官を「ほう」と唸らせるような、派手な魔法をぶっ放してやる、しかも「ノールック魔法」でだっ。 
 そんな、ささやかな野望を胸に、私は今日も魔法の訓練に励むのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

処理中です...