43 / 67
42.ままならぬ心
しおりを挟む
「ミッシェル様、おはようございます」
「…おはよう、ノーラン」
変です。どうしてノーランを見ると胸がザワザワするのでしょうか。
「少し顔色が悪いですね」
「……昨日、あまり眠れなかったから」
「では、本日はコニー様と一緒にお昼寝なさったらいかがですか?」
「今日はダイアナ様とお話がしたいわ」
動揺しているのはどうやら私だけのようです。ノーランにとって私はただの主か妹ですのに何を考えているのか。最近の己の愚かさにため息が出てしまいます。
「……本当に大丈夫ですか?」
「あの、違うの。ただ、自分の至らなさが情けなくて、それでため息が出てしまっただけよ」
そんなに心配されると、困ってしまいます。
「まさか昨日の話ですか」
「……そのまさかです」
「まあ、そうですね。もっとご自分を大切にして下さいという私の意見が一番正しかったということでしたね」
くっ、優しさ……優しさは無いのですか。
「はい、もう認めました。あの時嫌だと言っていたら良かったのですよね?もう、本当に理解しました!」
「結果論ですけどね。貴方が拗ねていたからお嬢様も打ち解けられたとも言えますし」
……拗ねてましたか。貴方にとって私は本当にお子ちゃまだと言いたいのですね?
「悪かったですね、子供っぽくて」
「いえ。お二人と共にいる時の貴方が一番素敵ですよ。見ていると幸せな気持ちになれます」
「……何を言っているの」
「思ったことを素直に?正直者なんですよ」
勝てません。なぜかしら、絶対に勝てそうにない……こんな言葉との戦い方を知らないのですもの。
「……ダイアナ様と話がしたいわ」
「では、確認して来ます。待っていて下さい」
何あれ。今の会話は普通の主従の会話だった?おかしいと思うのは私だけ?
「う~~、誰かアドバイスを下さい……」
一つ年齢を重ねてもまだまだお子様な私には、腹黒執事の手綱を上手く捌く能力は備わっていないようです。
「で。貴方も行くのね?」
「貴方をお守りするためです」
私を一番混乱させているくせにぬけぬけと……
少し殺意すら湧いて来そうです。
「大人しくしていないと追い出すから」
「承知致しました、My Lady」
「……貴方ね」
「すみません、少しお巫山戯が過ぎました」
絶対に悪いと思っていませんよね。それくらいは分かるのですよ?
「彼女に隙を見せたくないから揶揄わないで」
「隙があった方が警戒が緩むかもしれませんよ?」
ああ、そういう考えもあるかしら。
「……でも、だめ」
「畏まりました。大人しくします」
私の心によくありません。甘目な囁きを禁止にしたいです。でも、何が、どれが甘く感じるのか聞かれたら恥ずかしくて死にそうだから無理なのですけど。
「ダイアナ様、お加減は如何ですか?」
「……大丈夫です。あの、ご迷惑をお掛けしてしまって本当に申し訳ございません……」
そんなにプルプルされると、私が悪者みたいです。ダイアナ様は何に対して怯えているのかしら。
「いえ。無理を言ってここまで連れて来たのは旦那様ですから」
無難な答えを伝えると、ダイアナ様は少しホッとされたようです。
こうして見ると、彼女は狡猾な悪女では無く、ただ迂闊な女性なだけなのかもしれません。
「ダイアナ様。貴方は今後は如何なさるおつもりなのでしょうか」
「どう……とは」
「このまま、駆け落ちが成立するとは思っていませんよね?」
「……え……」
えって。成立するおつもりでしたか。
「まさか、子供達を思って駆け落ちしたという言い訳が通用するとお思いだったのですか?それは、はっきり申し上げますが無理です」
「あ…、そんな…、何故?」
この方は本当に無知なのだわ。私と同じ子爵家に生まれておきながらなんて甘い……
「もしも旦那様が自殺をなさっても、コンラッド様が爵位を継げるまでの後継人は決まっております」
「!」
「もちろん管財人も別でおります。コンラッド様が成人なさるまで財産を管理しますし、間違っても後見人の好きなようにお金を運用するなんてことは出来ません」
「……そんな…では、私のしたことは……」
「残念ながら、あまり意味を成さない行為でした」
ダイアナ様が蒼白になり、無言で俯いてしまわれました。彼女は駆け落ちが本当に子供達の為だと思っていたのでしょう。
「駆け落ちを提案したのはブレイズですね?」
「…おはよう、ノーラン」
変です。どうしてノーランを見ると胸がザワザワするのでしょうか。
「少し顔色が悪いですね」
「……昨日、あまり眠れなかったから」
「では、本日はコニー様と一緒にお昼寝なさったらいかがですか?」
「今日はダイアナ様とお話がしたいわ」
動揺しているのはどうやら私だけのようです。ノーランにとって私はただの主か妹ですのに何を考えているのか。最近の己の愚かさにため息が出てしまいます。
「……本当に大丈夫ですか?」
「あの、違うの。ただ、自分の至らなさが情けなくて、それでため息が出てしまっただけよ」
そんなに心配されると、困ってしまいます。
「まさか昨日の話ですか」
「……そのまさかです」
「まあ、そうですね。もっとご自分を大切にして下さいという私の意見が一番正しかったということでしたね」
くっ、優しさ……優しさは無いのですか。
「はい、もう認めました。あの時嫌だと言っていたら良かったのですよね?もう、本当に理解しました!」
「結果論ですけどね。貴方が拗ねていたからお嬢様も打ち解けられたとも言えますし」
……拗ねてましたか。貴方にとって私は本当にお子ちゃまだと言いたいのですね?
「悪かったですね、子供っぽくて」
「いえ。お二人と共にいる時の貴方が一番素敵ですよ。見ていると幸せな気持ちになれます」
「……何を言っているの」
「思ったことを素直に?正直者なんですよ」
勝てません。なぜかしら、絶対に勝てそうにない……こんな言葉との戦い方を知らないのですもの。
「……ダイアナ様と話がしたいわ」
「では、確認して来ます。待っていて下さい」
何あれ。今の会話は普通の主従の会話だった?おかしいと思うのは私だけ?
「う~~、誰かアドバイスを下さい……」
一つ年齢を重ねてもまだまだお子様な私には、腹黒執事の手綱を上手く捌く能力は備わっていないようです。
「で。貴方も行くのね?」
「貴方をお守りするためです」
私を一番混乱させているくせにぬけぬけと……
少し殺意すら湧いて来そうです。
「大人しくしていないと追い出すから」
「承知致しました、My Lady」
「……貴方ね」
「すみません、少しお巫山戯が過ぎました」
絶対に悪いと思っていませんよね。それくらいは分かるのですよ?
「彼女に隙を見せたくないから揶揄わないで」
「隙があった方が警戒が緩むかもしれませんよ?」
ああ、そういう考えもあるかしら。
「……でも、だめ」
「畏まりました。大人しくします」
私の心によくありません。甘目な囁きを禁止にしたいです。でも、何が、どれが甘く感じるのか聞かれたら恥ずかしくて死にそうだから無理なのですけど。
「ダイアナ様、お加減は如何ですか?」
「……大丈夫です。あの、ご迷惑をお掛けしてしまって本当に申し訳ございません……」
そんなにプルプルされると、私が悪者みたいです。ダイアナ様は何に対して怯えているのかしら。
「いえ。無理を言ってここまで連れて来たのは旦那様ですから」
無難な答えを伝えると、ダイアナ様は少しホッとされたようです。
こうして見ると、彼女は狡猾な悪女では無く、ただ迂闊な女性なだけなのかもしれません。
「ダイアナ様。貴方は今後は如何なさるおつもりなのでしょうか」
「どう……とは」
「このまま、駆け落ちが成立するとは思っていませんよね?」
「……え……」
えって。成立するおつもりでしたか。
「まさか、子供達を思って駆け落ちしたという言い訳が通用するとお思いだったのですか?それは、はっきり申し上げますが無理です」
「あ…、そんな…、何故?」
この方は本当に無知なのだわ。私と同じ子爵家に生まれておきながらなんて甘い……
「もしも旦那様が自殺をなさっても、コンラッド様が爵位を継げるまでの後継人は決まっております」
「!」
「もちろん管財人も別でおります。コンラッド様が成人なさるまで財産を管理しますし、間違っても後見人の好きなようにお金を運用するなんてことは出来ません」
「……そんな…では、私のしたことは……」
「残念ながら、あまり意味を成さない行為でした」
ダイアナ様が蒼白になり、無言で俯いてしまわれました。彼女は駆け落ちが本当に子供達の為だと思っていたのでしょう。
「駆け落ちを提案したのはブレイズですね?」
3,353
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる